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32.エリクサー

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 ダンジョン初日は鰹節や銃の他にも銀貨や銅貨、灯りを灯すマジックアイテムなどを手に入れることができた。
 1階層の入り口付近をうろうろしただけにしては大成果なのではないだろうか。
 銃や弾、弾倉は個別に容器に入れて毎日コピーしている。
 ついでに鰹節もね。
 銃のような複雑な物も組み上げた状態で一つのアイテムとしてスキルは認識してくれるようだ。
 コピーが終わって十分に数が揃ったら戦闘職の奴隷全員に銃を装備してもらおうと思っている。
 撃つ練習とかもしておかないといざという時使えないよね。
 ダンジョンの中のような跳弾する環境では少し狙いが逸れただけで自分に弾が当たりかねない。
 撃っていい状況と撃ってはダメな状況だけは身体で覚えておかないといけないだろう。

「さて、銃と金貨は今日はこのくらいにしておこう」

 銃関係のもので4回、金貨で4回、計8回のスキル使用回数を消費したあたりでコピーするのをやめる。
 残りの2回は少し実験に使おうと思っている。
 収納の魔道具をコピーする実験だ。
 具体的には収納の魔道具は中身ごとコピーすることができるのかという実験だ。
 中に様々な物を入れた状態でコピーすることができたら金貨とか銃とか鰹節とか全部まるっとコピーすることができて便利なのだけれどね。
 僕は招き猫型の収納魔道具を服の下から取り出し、中にコピーした金貨や銃などを全て入れる。
 スキルを使用してコピーしてみた。
 デフォルメされた少し可愛い招き猫が2つになった。
 新たに増えた方の招き猫から中身を取り出そうとしてみるが、何も出てくる気配はない。
 中身は空っぽのようだ。
 この現象は容器にアイテムを詰めてコピーしたときと同じだ。
 中に種類の異なるアイテムを入れた容器は容器だけしかコピーされない。
 どうやら収納魔道具は容器と同じ扱いのようだ。
 ということは中に同種のアイテムだけを入れれば中身ごとコピーすることができるということだ。
 僕はオリジナルの収納魔道具から同一のひな形からコピーした金貨だけを取り出し、空っぽの収納魔道具に入れた。
 金貨の枚数はすでに万を超えている。
 そんなに金貨が入った容器というのは重くて使い勝手が悪いので金貨はいまだに1000枚くらいずつ箱に入れてコピーしている。
 しかし金貨を入れても重さを感じない収納魔道具に入れてコピーすることができるのであれば、何枚ずつでもコピーすることが可能だろう。
 スキル使用回数の節約になる。
 僕はスキルを使用し、金貨が何万枚も入った収納魔道具をコピーした。
 思った通り、収納魔道具は中の金貨ごと2つになった。
 一気に放流したらインフレーションで国が滅びそうなほどの金貨を僕は手に入れたのだった。




「へぇ、エリクサーがね」

「ええ。今回のオークションは荒れますよ。どうしますか?今回も参加しませんか?」

「いや、今回は出るよ」

「珍しいですね。今まで色々と珍しいものが出品されても参加は辞退されていたのに」

「ちょっと興味があるものがあって」

 エリクサーだ。
 落ち着いて商業ギルド職員と話をしているように見せかけて、内心は阿波踊りを2倍速で踊っている。
 踊り狂っている。
 僕はこのために高いお金を払って商業ギルドからオークション情報を買っていたのだ。
 ついにフラグを回収するときが来た。
 金貨の貯蔵は十分だ。
 なんだったら小国の2、3個は買えるくらい今の僕はお金を持っている。
 エリクサーが国よりも高いというわけはないだろう。
 まあもし高くても買えるから問題はない。
 
「そうですか。では当日は格式のある恰好で来てください。場所はギルド会館です。あ、それと何か顔を隠せるものを持ってきてください」

「顔?」

「はい。仮面とか、被り物ですね。オークション中は誰が誰だかわからないようにしておかないと、世俗のしがらみでオークションの平等性が失われてしまいますから。それに恨みを買う可能性もありますし」

「なるほど」

 怖い人に競り勝っちゃったりしちゃうと後から闇討ちとかを受けるかもしれないってことだね。
 あとは競っている相手が貴族とか王族とかだったりすると、張り合って入札してもいいのかなって思って遠慮しちゃう人もいる。
 貴族の私に入札を被せてくるとはわかっているんだろうな?みたいな圧力もやりかねない。
 まあ顔を隠した程度ではそういうのは完全に無くなりはしないのだろうけど、一応商業ギルドはオークションの平等性について一定の努力をしていますと言うことができる。
 後は客のほうで気を付けろってことだね。
 僕も一応会場に着いてから着替えることにしよう。
 顔を隠しても首から下の恰好で誰かわかっちゃったら意味がないからね。

「では、これが今回の出品リストになります。直前になって追加されることもあるので資金は多めに用意しておくといいですよ」

「ありがとう。じゃあまた」

 ギルド職員が立ち上がり、メイドに案内されて去っていく。
 僕は出品リストを眺めながら少しにやけ顔で冷めた紅茶を啜った。
 このフラグを回収しないことには僕の異世界生活はまだ始まらないんだよ。
 ザックスはおっさんだから僕のハーレムに加えることはできないけれど、ハーレムアドバイザーとして頑張ってもらわなければならない。
 

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