色欲の陰陽師

兎屋亀吉

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6.マインド系とか完全に敵キャラ

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 というわけで初対面の女の子に看病されるという夢のような時間を過ごした僕だったけれど、現実はそんなに甘くは無いわけで。
 大学で会えたらいいね、なんて言って笑いかけてくれていた神崎さんとはお近づきになれそうもない。
 というのも、美人で明るい彼女が大学でどんな人間の集団に属すのかというところに答えはあった。
 当然のごとく大学でもトップレベルのリア充集団だった。
 それもそんじょそこらのうぇーいな集団とは訳が違う。
 どことなく気品が漂う知性を備えた集団に神崎さんは所属している。
 僕のようなゴミ蟲のごとき人間にも分け隔てなく優しくしてくれるような集団だからこそ、ゴミ蟲のほうからは話しかけにくい。
 嫉妬に駆られた同じゴミ蟲から陰湿な嫌がらせを受ける可能性もある。
 結局、僕のような人間はどんな環境にいてもぼっちなんだ。
 サークル勧誘で騒がしい構内を僕はトボトボと家に帰った。
 忙しなく勧誘が行われる構内で、僕は誰にも勧誘されることはなかった。








 初講義も終わり、暇なので結局本を読むくらいしかやることはない。
 一応店も開けているのだけれど、客なんてひとりも来ない。
 家賃が要らないとはいえ、生活費もそこそこかかる。
 もってあと3ヶ月といったところだ。
 どうやったら本って売れるんだろう。
 僕はとりあえずできるだけ面白そうに本を読んでみることにした。
 読むのは当然陰陽師になろうだ。

 
”さあ、霊感に目覚めた皆さんはすでに陰陽師の卵です。これより先は霊力を高め、様々な術を試してみる段階に入ります。しかし霊力の大小には個人差があり、術にも適性というものがあります。もし皆さんの霊力が全然強くならなかったり、どの術にもまるで適性がなかったりしても私を恨まないでくださいね(笑)”


 相変わらずこの作者の文章は人を少しだけ苛立たせる。
 しかしやっと術を教えてくれるのか。
 ワクワクするな。
 霊感が目覚めてからというもの、僕は自分の中にある霊力というものの存在を朧気ではあるけれど感じることができている。
 きっとこの力を使って色々な術を使って、あやかしと戦ったりするんだろうな。


”ああ、先に述べさせていただきますが現代において退魔、祓魔、降魔業への新規参入はほぼ不可能です。すでに供給過多ですのであしからず”


 世知辛い世の中だった。
 まあそもそも僕にそんな攻撃的な術の適性があるとは限らないし、もう少し黙って読むべきか。



”下記リストがわが一門に伝わる術のリストになります。順番に試してみましょう。また、先に晴明様式霊力強化トレーニングのやり方を知りたいという方は89Pへ”



 トレーニングはとりあえず今度でいいや。
 まずは術を試してみよう。
 色々な術があるな。
 術のリストには意外にもキッチリと使い方が簡潔に書かれていた。
 コピペかな。
 術のリストは、各系統別に分かれていて一番上の初歩の術が使えなければまず素養はないと思ったほうがいいようだ。
 上から順に試していく。
 まずは神道系から。
 初歩の術は印の結びも単純で覚えやすい。
 霊力の使い方に関しても詳しく書いてあって、括弧書きで【う〇こをひねり出すように】とか書かれているのでこの部分はおそらく土御門氏の加筆だろう。
 もうちょっと上品な表現があったと思うけど。
 だけど土御門氏の言ったとおりにしたら霊感が覚醒したことも事実。
 僕はもう一度だけ土御門氏を信じることにして、結んだ印と肛門に力を入れてみた。
 すると僕のお腹のあたりに留まっていた霊力が印に集まってきた。
 おお、なんか起こりそうな雰囲気だ。
 僕はさらに霊力を印に込めて気張る。

「ッッッ!!!」

 次の瞬間、まるで風船が割れるように霊力ははじけ飛んでしまった。
 これは素養がなかったということなんだろうか。
 何も起こった様子はないからそうだろうな。
 諦めて次に行く。
 僕はどんどんリストの術を試していった。




「これで最後か……」

 リストの最後の方におまけのように書かれていた術の系統で、土御門一門の術は最後のようだ。
 ここまで適性ゼロ。
 やっぱり僕には陰陽師になることはできないのだろうか。
 半分諦めながらも、最後の術を試す。
 最後は精神感応系の術。
 土御門氏の括弧書きにも【僕が嫌いな術】と書かれている。
 そんな個人的な好み書かなくてもいいのに。
 僕は今までよりも少しだけ複雑な印を結び、肛門に力を入れた。

「うぉっ!!」

 何も起きなかった。
 だけど、今までとは違う。
 霊力がはじけ飛ぶのとは違って、何かに働きかけていた感じがあった。
 だけど精神感応系の術だから対象がいなかったんだ。
 ということは発動自体はしたのかな。

「あはは、僕の適性はマインド系か……」

 ラノベとかで敵キャラが持っていそうな能力だ。
 なんとも素直に喜べない結果となった。

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