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1.美人局でもかまわない
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「私神なんですけど、異世界に来ませんか?」
「はい?」
時刻は0時を回り、日付が変わる頃。
会社帰りにコンビニでビールと焼き鳥を買った後、店を出たあたりで俺は神を名乗る少女に話しかけられたのだった。
明日は35日ぶりの休みなこともあり、俺は話を聞いてみることにした。
会社に女の人が少ないこともあって、女性とじっくり話すのは大学以来な気がする。
神を名乗る女の子は制服こそ着ていないものの、まだJKでもおかしくない年齢に見える。
たとえこの後なんらかの形で訴えられたり金をだまし取られることになろうとも、今は可愛いJKと話をしたいような浮かれた気分だった。
「どこか、静かでゆっくり話ができる場所にいきましょう」
そう言って女の子は俺の手を引いて歩き出す。
久しぶりに振れた人肌の温もりに、荒んだ心が癒されていくのを感じた。
女の子が向かう先にはラブホしかないのでもう絶対美人局な気がしてきたけれど、なんだかどうでもよくなってきた。
財布の中身全部吐き出してボコボコにぶん殴られたとしても、俺はこの子に付いていくと決めた。
女の子は案の定ラブホテルに入っていき、部屋を選択していた。
慣れてなさそうな感じがして演技だとしたらすごいと思った。
女の子はハワイアンルームという謎の部屋を選び、俺は付いていった。
部屋に入ると女の子はまずベッドにダイブした。
「すっごいフカフカです。これ一回やってみたかったんですよ」
あざと可愛い。
あとパンツ見えてる。
もう男たちがぞろぞろ出てきても未練なく財布を差し出すことができそうだ。
「すみません、取り乱しました。ではお話をしましょう。こちらに座ってください」
そう言って女の子はベッドの隣をポンポンとする。
そこに座ってもいいのだろうか。
JKの座るベッドの隣などは、少女漫画の世界のイケメンしか腰かけてはいけない場所だと思っていた。
8頭身以上ないと立ち入り禁止ではないのだろうか。
6頭身の短足が踏み入ってもいい世界なのだろうか。
「どうしたんですか?早く座ってください」
「あ、はい」
俺は恐る恐る女の子の隣に座った。
女の子はスンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅いでいるようだ。
臭かっただろうか。
昨日はなんとか風呂に入る時間を捻出することのできた日だったけれど、すでに入浴から23時間以上が経過している。
今日は休みの前日ということもあっていつもより多く残業したために、会社での滞在時間は約14時間にも及ぶ。
様々な匂いが発生してしまうのは仕方のないことだ。
しかしそれをJKに嗅がれていると思うと急に羞恥心が湧いてきた。
俺は少しだけ尻をずらし、女の子から離れた。
女の子はそれを見て、なぜか自分も尻を動かして付いてきた。
なぜだ。
「あの、それ良い匂いですね」
「え?」
「その袋の中の串に刺さっているやつです」
女の子は俺が持っていたコンビニの袋の中の焼き鳥を指さす。
ああ、これの匂いを嗅いでいたのか。
確かに良い匂いがする。
自分の匂いを嗅がれていると思っていた俺は二重に恥をかいたわけだ。
JKを前にすれば誰だって自意識過剰になってしまうものなのだ。
こんな羞恥心を何度も覚えるくらいならば早く悪そうな男でも出てきてくれないだろうか。
そして俺を殴ってくれ。
財布も持っていけ。
無人になった部屋で俺は泣きながらビール飲むからさ。
そんで無銭宿泊で捕まってやるよ。
もはや俺の情緒は不安定を通り越していた。
これがJKの魔力である。
「あの、それ美味しそうですね」
「食べますか?」
「いいんですか?」
女の子はにっこりと微笑む。
どう考えても食わせろと言っていたようにしか聞こえなかったけれどな。
まあ一人で食べるよりも二人で食べた方が美味しいはずだ。
ましてや隣で食べてくれるのはJKといってもおかしくない年齢の女の子だ。
そんなサービスを受けようと思ったらいくらお金を払えばいいのか。
俺はコンビニの袋からモモタレを取り出し、女の子に渡す。
自分の分のトリ皮塩を取り出し、缶ビールを開けた。
女の子はそれを見て自分も缶ビールを開けた。
どう見ても成人しているようには見えないが、こんなことをするくらいだから不良なのだろう。
飲酒くらいは当たり前というわけだ。
学生時代野球部だった俺からしてみたらわからない話だ。
まあ真面目な一部の生徒が節制したところでうちの部は先輩の飲酒や喫煙が明らかになり公式戦への出場資格を停止されてしまったけれどな。
1回戦敗退の弱小校だったとはいえ、少し複雑な気持ちになったことを覚えている。
俺が高校時代を思い出して苦い気持ちになっているうちにも、女の子はごくごくと喉を乗らしてビールを流し込んでいく。
「ぷはっ、しゃばのお酒は美味しいですね」
どうやらこの子は筋金入りの不良らしい。
少年院などのなんらかの更生施設に長いこと入っていたのだろう。
可愛い顔して何をやったのだろうか。
「さて、そろそろ本当にお話をしましょう」
「あ、はい」
俺の覚悟は決まっている。
男たちよ、さあ来い。
「先ほども言いましたが、私は神です。あなたに私の世界に来て欲しいんです」
まだその設定続いてたんだ。
「はい?」
時刻は0時を回り、日付が変わる頃。
会社帰りにコンビニでビールと焼き鳥を買った後、店を出たあたりで俺は神を名乗る少女に話しかけられたのだった。
明日は35日ぶりの休みなこともあり、俺は話を聞いてみることにした。
会社に女の人が少ないこともあって、女性とじっくり話すのは大学以来な気がする。
神を名乗る女の子は制服こそ着ていないものの、まだJKでもおかしくない年齢に見える。
たとえこの後なんらかの形で訴えられたり金をだまし取られることになろうとも、今は可愛いJKと話をしたいような浮かれた気分だった。
「どこか、静かでゆっくり話ができる場所にいきましょう」
そう言って女の子は俺の手を引いて歩き出す。
久しぶりに振れた人肌の温もりに、荒んだ心が癒されていくのを感じた。
女の子が向かう先にはラブホしかないのでもう絶対美人局な気がしてきたけれど、なんだかどうでもよくなってきた。
財布の中身全部吐き出してボコボコにぶん殴られたとしても、俺はこの子に付いていくと決めた。
女の子は案の定ラブホテルに入っていき、部屋を選択していた。
慣れてなさそうな感じがして演技だとしたらすごいと思った。
女の子はハワイアンルームという謎の部屋を選び、俺は付いていった。
部屋に入ると女の子はまずベッドにダイブした。
「すっごいフカフカです。これ一回やってみたかったんですよ」
あざと可愛い。
あとパンツ見えてる。
もう男たちがぞろぞろ出てきても未練なく財布を差し出すことができそうだ。
「すみません、取り乱しました。ではお話をしましょう。こちらに座ってください」
そう言って女の子はベッドの隣をポンポンとする。
そこに座ってもいいのだろうか。
JKの座るベッドの隣などは、少女漫画の世界のイケメンしか腰かけてはいけない場所だと思っていた。
8頭身以上ないと立ち入り禁止ではないのだろうか。
6頭身の短足が踏み入ってもいい世界なのだろうか。
「どうしたんですか?早く座ってください」
「あ、はい」
俺は恐る恐る女の子の隣に座った。
女の子はスンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅いでいるようだ。
臭かっただろうか。
昨日はなんとか風呂に入る時間を捻出することのできた日だったけれど、すでに入浴から23時間以上が経過している。
今日は休みの前日ということもあっていつもより多く残業したために、会社での滞在時間は約14時間にも及ぶ。
様々な匂いが発生してしまうのは仕方のないことだ。
しかしそれをJKに嗅がれていると思うと急に羞恥心が湧いてきた。
俺は少しだけ尻をずらし、女の子から離れた。
女の子はそれを見て、なぜか自分も尻を動かして付いてきた。
なぜだ。
「あの、それ良い匂いですね」
「え?」
「その袋の中の串に刺さっているやつです」
女の子は俺が持っていたコンビニの袋の中の焼き鳥を指さす。
ああ、これの匂いを嗅いでいたのか。
確かに良い匂いがする。
自分の匂いを嗅がれていると思っていた俺は二重に恥をかいたわけだ。
JKを前にすれば誰だって自意識過剰になってしまうものなのだ。
こんな羞恥心を何度も覚えるくらいならば早く悪そうな男でも出てきてくれないだろうか。
そして俺を殴ってくれ。
財布も持っていけ。
無人になった部屋で俺は泣きながらビール飲むからさ。
そんで無銭宿泊で捕まってやるよ。
もはや俺の情緒は不安定を通り越していた。
これがJKの魔力である。
「あの、それ美味しそうですね」
「食べますか?」
「いいんですか?」
女の子はにっこりと微笑む。
どう考えても食わせろと言っていたようにしか聞こえなかったけれどな。
まあ一人で食べるよりも二人で食べた方が美味しいはずだ。
ましてや隣で食べてくれるのはJKといってもおかしくない年齢の女の子だ。
そんなサービスを受けようと思ったらいくらお金を払えばいいのか。
俺はコンビニの袋からモモタレを取り出し、女の子に渡す。
自分の分のトリ皮塩を取り出し、缶ビールを開けた。
女の子はそれを見て自分も缶ビールを開けた。
どう見ても成人しているようには見えないが、こんなことをするくらいだから不良なのだろう。
飲酒くらいは当たり前というわけだ。
学生時代野球部だった俺からしてみたらわからない話だ。
まあ真面目な一部の生徒が節制したところでうちの部は先輩の飲酒や喫煙が明らかになり公式戦への出場資格を停止されてしまったけれどな。
1回戦敗退の弱小校だったとはいえ、少し複雑な気持ちになったことを覚えている。
俺が高校時代を思い出して苦い気持ちになっているうちにも、女の子はごくごくと喉を乗らしてビールを流し込んでいく。
「ぷはっ、しゃばのお酒は美味しいですね」
どうやらこの子は筋金入りの不良らしい。
少年院などのなんらかの更生施設に長いこと入っていたのだろう。
可愛い顔して何をやったのだろうか。
「さて、そろそろ本当にお話をしましょう」
「あ、はい」
俺の覚悟は決まっている。
男たちよ、さあ来い。
「先ほども言いましたが、私は神です。あなたに私の世界に来て欲しいんです」
まだその設定続いてたんだ。
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