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2.家族会議必須のユニークスキル

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 性愛の神エロース様にスキルガチャを3回回させてもらい、僕は異世界へと転生した。
 ガチャから出たスキルは【マジカルチ〇ポ】【ストッキング魔法】【ローション魔法】の3つ。
 【マジカルチ〇ポ】は他2つのスキルと違い、ユニークスキルというものに分類される超レアスキルらしい。
 ユニークスキルと普通のスキルの違いは、スキルに固有のレベルがあるかどうかだ。
 ユニークスキルには固有レベルが存在していない。
 最初から最強無敵、唯一無二というのがユニークスキルなのだ。
 まあ僕のはベッドの上のみの最強なのだけど。
 それに比べて普通のスキルには固有レベルというものがある。
 最初は全て1で、そこからスキルを習熟していくごとにレベルが上がっていく。
 レベルの上限はスキルによって違うらしい。
 神様の話を信じるならば、僕のもらったスキルである【ストッキング魔法】と【ローション魔法】はレベルを上げればそこそこ使えるスキルらしい。
 僕に残された道はどうやらレベルを上げて物理でヌルヌルしかなさそうだ。
 全世界をヌルヌルにしてやんよ。





 今世の僕が生まれた家はそこそこ大きな国であるクロム王国という国の貧乏貴族の家系だ。
 爵位は騎士爵。
 領民200人くらいの村1つを領地に持つ古くからの騎士の家系だ。
 家柄ガチャはレアってとこだろう。
 奴隷などの身分に生まれるよりはいいかもしれないけれど、場合によっては平民のほうがいい生活をしている可能性もある微妙なグレードの貴族だ。
 まあ聞くところによればうちはまだマシなほうらしいけどね。
 父親であるハウリオ・フォン・モリスは王国騎士団に務めており、職業もまた騎士だ。
 だから領地からの税収だけでなく、騎士としての給料もあるためまだマシな生活を送ることができているのだ。
 そんな父親をサポートするため、領地を代官に任せて僕たち家族も王都に暮らしている。
 転生した直後から今までなんやかんやと色々なことがあったが、僕がこの家に生まれて今年で7年だ。
 七つまでは神のうち、男女七歳にして席を同じゅうせず、七五三など、古来より七歳を区切りとする風習は多い。
 僕が転生したこの国にもそのような風習があり、今日はその当日である。
 行事の名を七つ参りと言い、七歳になった子供は皆教会に行ってこれからの健やかな成長を祈るのだ。
 その副産物というわけではないけれど、魔力値という魔力保有量の数値と生まれ持ったスキルを神官様に鑑定してもらうことができる。
 生まれてこのかた、ずっと隠してきた僕のスキルがついに家族にばれてしまう時が来てしまったのだ。
 他2つのスキルはまだいいけれど、【マジカルチ〇ポ】だけはちょっとな。
 おチ〇ポ様の名を冠したスキルを家族に見られるのはエロ本が見つかるよりも恥ずかしい。
 本来なら七歳になる子供がユニークスキルなんてものを持っていたら大層喜ばれるものなのだろうけど、僕のはきっと家族会議になるんだろうな。

「どうしたのクラウス、お腹でも痛いの?」

 クラウスは今世の僕の名前だ。
 優しい笑顔で僕にそう問いかけてくる女性は僕の母であるユリア。
 格上の男爵家から貧乏騎士爵家に嫁に来たというなかなかの度胸を持つ強い女性だ。
 ちなみに強いのは心だけでなく、父や家臣の武官を含めてうちで最強の女性である。
 男爵家を一時出奔して冒険者をやっていた時期があり、そのときの冒険者ランクは驚きのSだ。
 鬼ヶ島の大鬼が持っていそうな鉄塊のごとき金棒を片手で振り回し、王国に並ぶ者のない怪力無双と言われたほどの傑物である。
 怒らせると尻が腫れ上がるほど叩かれるので僕は母が苦手である。
 暴力反対。

「い、いや、なんでもないよ……」

「そう。体調悪かったらちゃんと言うのよ」

「わかった」

 母は普通にしていれば綺麗で優しくておしとやかな貴族の令嬢って感じなんだけどね。
 普段から理不尽なことで怒ったりもしないけど、曲がったことやズルいことをしたりすると烈火のように怒るのだ。
 こんな環境では前世から根性ひん曲がってる僕でも真っすぐ育ってしまうよ。
 
「次、クラウス・フォン・モリス君前へ」

「ほら、あなたの番よ。行ってらっしゃい」

「うん。行ってくる」

 神官様に呼ばれ、僕は母のもとを離れ祭壇の前へと向かう。
 事前に教わった通りの祈りを捧げ、神官様の祝詞を聞いて祭壇を離れる。
 その次はついにスキル鑑定だ。
 観覧席に座っていた母と一緒に別室へと移動し、一緒に鑑定結果を聞く。
 はぁ、憂鬱だ。

「ほう、魔力値は36ですな。7歳児にしては格段に高い。さすがは高名なモリス卿と奥様のご子息」

「あら、すごいじゃないクラウス。まだ魔物狩りにも連れて行ったこともないのに」

 魔力値を上げる方法は2種類存在している。
 一つは魔物を狩ること。
 魔物を狩るとなぜか人間はどんどん強くなっていく。
 魔物は神が人間に与えたもうた試練のための生き物だとか、魂の一部を吸収しているためだとか、色々な説がある。
 僕はレベルみたいなものだと思っている。
 経験値を貯めてレベルアップで強くなれたらいいのにと前世では何度も願ったけれど、この世界では魔物を倒せばリアルに経験値が手に入るのだ。
 そして魔力値を上げるもう一つの方法が、魔力を限界まで使うことだ。
 異世界転生ではもうお馴染みの方法だが、この世界にはイメージ力だけで使えるような魔法が存在していないから結構大変だった。
 僕に使えるのはストッキングを生み出す魔法とローションを生み出す魔法だけなのだ。
 ストッキングなんかたくさん生産していれば家族にばれるし、自ずとローション魔法一択となった。
 おかげで魔力値は結構成長したし、ローション魔法のレベルもかなり上がった。
 エロゲスキルだからなのか、僕のスキルはレベルがかなり上がりやすいようだ。
 ステータスのないこの世界では自分で確認することができないけれど、おそらく15くらいまで上がっているはずだ。
 ただ生み出すだけだったローションにも様々な副次効果を付与できるようになり、少しならローション自体を操れるようになってきている。
 でもレベルが上がっているということはスキルを使っていたということだから、この鑑定で隠していたことはバレてしまうだろうな。
 憂鬱だ。

「どれどれスキルは……こ、これは、ユニークスキル!?だが、こんな……」

「ユニークスキルですか!?神官様、どのようなものか教えてください!」

 母が興奮した様子で神官様に詰め寄る。
 ああ、そんな期待した目で見ないで欲しい。

「しょ、少々お待ちください奥様。我々もスキルについて全てを把握しているわけではないのです。それも、このような……」

「このようななんですか!?せめて名前だけでも教えてくれませんか?」

「奥様、落ち着いてお聞きください。ご子息の持つユニークスキルの名は【マジカルチ〇ポ】です」

「【マジカルチ〇ポ】……」

 綺麗な声でチ〇ポとか言わないで欲しい。
 母親とはいえ股間に来る。
 神官様も顔が真っ赤だ。
 美人の口からチ〇ポとか言われれば禁欲修業中の神官には辛かろう。
 
「ご、ご子息は他に2つの一般スキルも持っていらっしゃるみたいです。名前は【ストッキング魔法lv3】と【ローション魔法lv17】です。ただこの2つにつきましても聞いたことのないものでして、名前から魔法スキルであることは予想できるのですがね。どちらもレベルが上がってますのでご子息はどのようなスキルか知っているのではないですかな」

「まあっ、魔法スキルを2つも!それは素晴らしいわ。でも、マジカルチン……」

 母は自分が口にしようとしていた言葉の意味を思い出したように顔が真っ赤になった。
 さっき全部言ってしまったことも思い出したのだろう、茹でタコのようになってしまった。
 子供3人もいるのに意外と初心なんだよな。
 ちなみに兄弟構成は兄が2人で、僕は3男である。
 男ばっかで嫌になるよね。
 まあ兄2人は歳も離れていて面倒見がいいから結構好きだけど。

「く、クラウス、帰るわよ。これは家族会議だわ」

 だよね。

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