5 / 30
5.父の話
しおりを挟む
「クラウスのユニークスキルは他2つの魔法スキルとは比べ物にならないほどに利用価値のあるものだわ。放って置いたら高位貴族や王家に後ろ暗い仕事をやらされる犬にされてしまうでしょうね」
「そんな……」
「どうにかできないの?母さん」
「対策としては、このスキルのことを秘密にすることね。神官様には金貨を払って秘密にしてもらったわ。昔から知っている人だから、たぶんあの人なら大丈夫ね。私は近いうちにクラウスを連れて領地に帰るわ。クラウスは領地で育てましょう。幼年学校にも貴族学校にも行かせないわ」
どうやら僕の学園編は無くなってしまったらしい。
まあしょうがないよね。
改めて考えて見たらこのスキルはやばすぎる。
なにせ性愛の神がベッドの上では最強だとお墨付きをくれたスキルだ。
このスキルに堕ちない女性はいないだろう。
母の言うことは全く大げさでもなんでもないのだ。
それこそエロゲのようなことが本当にできてしまう危険なスキルだ。
僕はNTRを量産する気はない。
大人しく領地に引きこもっていよう。
「ああ、その、ユリア。そのことなんだけどな、このあとの俺の話でな……」
「なに?クラウスにも関係のある話なの?」
「クラウスというか、クラウスの進路というか」
「はっきり言いなさいよ。うじうじ男らしくないわね!」
父の背中がびくりと震える。
母の一喝はやはり怖い。
父は最初談話室に入ってきたときのような顔色になり、ぽつりぽつりと語り始めた。
「実は俺、騎士団をクビになっちゃったんだよな……」
「はぁ!?なんでよ!!」
「いやちょっと、権力争いというか。俺って陛下にちょっと気に入られてるじゃん?」
「気に入られているというのは奢りすぎね。まあちょっと他の騎士よりも気にかけられている程度ね」
「まあそうなんだが、それが気に食わない奴も多くて。特にメイガス公爵の取り巻き連中がな」
「それであっさり罷免されてきたっていうの!?ちょっとは抵抗したんでしょうね!?」
母と父は先ほどの甘い雰囲気から一変して、口論になってしまった。
父が無職になってしまえば仕方がないか。
ということはもともと僕は学校には行けなかったということなのかな。
騎士の給料はそこそこだけど、子供3人を学校に行かせようと思えばギリギリだ。
貯蓄はそれほど無いだろう。
無職になってしまえば兄たちの卒業すらもできるかどうか怪しい。
モリス家には領地があるけれど、領民200人程度の村に家を維持していくだけの税収は期待できない。
今まで僕たちが王都で節約しながらもそれなりの生活ができていたのは、一重に父が現職の騎士だったからなのだ。
「一応退職金として金貨150枚と年金半年ごとに金貨3枚をもぎ取ってきたがな、明日から生活どうするか……」
「「「…………」」」
沈黙が痛い。
なんという空気にしてくれているんだこの父は。
退職金はそこそこ纏まった額だが、年金については全く自慢できる額ではない。
なんの働きもせずに貰える金としては破格だけれど、王都で生活している人の平均的な月収が金貨3枚くらいなのだ。
侍従や使用人を抱える貴族家が、半年に金貨3枚で生活を保てるわけがない。
使用人一人分の給料にもなりはしないじゃないか。
「とりあえず、ストッキング売る?」
僕はこの空気を打破するべく、そう提案してみた。
女性が生足を見せる文化のないこの国でストッキングは使いどころが微妙な気がするが、布地が良質なのは間違いないんだ。
最悪防寒具として安く売り出してもいい。
仕入れ値はタダなのだから、いくらで売っても利益は出る。
この国では基本的に女性は皆スカートだから冬の寒い時期などは下半身の冷えを感じているはずだ。
需要はあると思うんだけどね。
「正直俺はこのストッキングって履き物は売れると思う。だが、問題もある」
「ええ、クラウスしか生産することができないってことね」
「ああ。複製しようにも、薄くて丈夫な布を作るには上質な絹糸や魔物素材を使わざるを得ない。絶対に高額になる。それでは売れなかったときのリスクが高すぎる。だから売るとしてもクラウスが魔法で出した物を売るしかない。そうなると大量には売れないよな」
「そうね。将来的にクラウスの魔力値が上がって大量に生み出せるようになればわからないけれど、今のところはこれを日に10枚も生み出せればいい方だったわよね?」
ストッキング魔法はストッキングを1枚生み出すのに魔力を大体3くらい使う。
僕の魔力値は36だから、日産12枚だ。
だけどストッキング魔法だけで魔力を使い切ってしまってはローション魔法が使えず、育たない。
できればストッキングの生産は限界の半分の1日6枚くらいに抑えておきたいところだ。
「売るとしても貴族に高額で少数限定でって形だな。まあもともと衣服の意匠に凝れるのは貴族や大商人くらいだがな」
「すぐに破れてしまうから、金額は抑えて1枚金貨2枚ってとこね。日産5枚で計算しても月150枚は作れるわよね。売れれば大きい商売になりそうだけど」
「俺は売れると思うぜ。さっきユリアが履いてるのを見て思ったんだが、こいつは生足よりもエロい」
僕も同感だ。
脚全体が黒い薄布に包まれているところを見ると、なぜだか心が湧きたつのだ。
やはり今世の僕の黒ストッキング好きは父からの遺伝らしい。
「そんな……」
「どうにかできないの?母さん」
「対策としては、このスキルのことを秘密にすることね。神官様には金貨を払って秘密にしてもらったわ。昔から知っている人だから、たぶんあの人なら大丈夫ね。私は近いうちにクラウスを連れて領地に帰るわ。クラウスは領地で育てましょう。幼年学校にも貴族学校にも行かせないわ」
どうやら僕の学園編は無くなってしまったらしい。
まあしょうがないよね。
改めて考えて見たらこのスキルはやばすぎる。
なにせ性愛の神がベッドの上では最強だとお墨付きをくれたスキルだ。
このスキルに堕ちない女性はいないだろう。
母の言うことは全く大げさでもなんでもないのだ。
それこそエロゲのようなことが本当にできてしまう危険なスキルだ。
僕はNTRを量産する気はない。
大人しく領地に引きこもっていよう。
「ああ、その、ユリア。そのことなんだけどな、このあとの俺の話でな……」
「なに?クラウスにも関係のある話なの?」
「クラウスというか、クラウスの進路というか」
「はっきり言いなさいよ。うじうじ男らしくないわね!」
父の背中がびくりと震える。
母の一喝はやはり怖い。
父は最初談話室に入ってきたときのような顔色になり、ぽつりぽつりと語り始めた。
「実は俺、騎士団をクビになっちゃったんだよな……」
「はぁ!?なんでよ!!」
「いやちょっと、権力争いというか。俺って陛下にちょっと気に入られてるじゃん?」
「気に入られているというのは奢りすぎね。まあちょっと他の騎士よりも気にかけられている程度ね」
「まあそうなんだが、それが気に食わない奴も多くて。特にメイガス公爵の取り巻き連中がな」
「それであっさり罷免されてきたっていうの!?ちょっとは抵抗したんでしょうね!?」
母と父は先ほどの甘い雰囲気から一変して、口論になってしまった。
父が無職になってしまえば仕方がないか。
ということはもともと僕は学校には行けなかったということなのかな。
騎士の給料はそこそこだけど、子供3人を学校に行かせようと思えばギリギリだ。
貯蓄はそれほど無いだろう。
無職になってしまえば兄たちの卒業すらもできるかどうか怪しい。
モリス家には領地があるけれど、領民200人程度の村に家を維持していくだけの税収は期待できない。
今まで僕たちが王都で節約しながらもそれなりの生活ができていたのは、一重に父が現職の騎士だったからなのだ。
「一応退職金として金貨150枚と年金半年ごとに金貨3枚をもぎ取ってきたがな、明日から生活どうするか……」
「「「…………」」」
沈黙が痛い。
なんという空気にしてくれているんだこの父は。
退職金はそこそこ纏まった額だが、年金については全く自慢できる額ではない。
なんの働きもせずに貰える金としては破格だけれど、王都で生活している人の平均的な月収が金貨3枚くらいなのだ。
侍従や使用人を抱える貴族家が、半年に金貨3枚で生活を保てるわけがない。
使用人一人分の給料にもなりはしないじゃないか。
「とりあえず、ストッキング売る?」
僕はこの空気を打破するべく、そう提案してみた。
女性が生足を見せる文化のないこの国でストッキングは使いどころが微妙な気がするが、布地が良質なのは間違いないんだ。
最悪防寒具として安く売り出してもいい。
仕入れ値はタダなのだから、いくらで売っても利益は出る。
この国では基本的に女性は皆スカートだから冬の寒い時期などは下半身の冷えを感じているはずだ。
需要はあると思うんだけどね。
「正直俺はこのストッキングって履き物は売れると思う。だが、問題もある」
「ええ、クラウスしか生産することができないってことね」
「ああ。複製しようにも、薄くて丈夫な布を作るには上質な絹糸や魔物素材を使わざるを得ない。絶対に高額になる。それでは売れなかったときのリスクが高すぎる。だから売るとしてもクラウスが魔法で出した物を売るしかない。そうなると大量には売れないよな」
「そうね。将来的にクラウスの魔力値が上がって大量に生み出せるようになればわからないけれど、今のところはこれを日に10枚も生み出せればいい方だったわよね?」
ストッキング魔法はストッキングを1枚生み出すのに魔力を大体3くらい使う。
僕の魔力値は36だから、日産12枚だ。
だけどストッキング魔法だけで魔力を使い切ってしまってはローション魔法が使えず、育たない。
できればストッキングの生産は限界の半分の1日6枚くらいに抑えておきたいところだ。
「売るとしても貴族に高額で少数限定でって形だな。まあもともと衣服の意匠に凝れるのは貴族や大商人くらいだがな」
「すぐに破れてしまうから、金額は抑えて1枚金貨2枚ってとこね。日産5枚で計算しても月150枚は作れるわよね。売れれば大きい商売になりそうだけど」
「俺は売れると思うぜ。さっきユリアが履いてるのを見て思ったんだが、こいつは生足よりもエロい」
僕も同感だ。
脚全体が黒い薄布に包まれているところを見ると、なぜだか心が湧きたつのだ。
やはり今世の僕の黒ストッキング好きは父からの遺伝らしい。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
1,104
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる