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視線の、先に
しおりを挟む僕の姿は、黄色い歓声を上げる女性達と似たような姿なのだろう。ロシェルが呆れて声にするが、僕の耳には入って来ない。銀の鎧に白マントだぞ?マントの内側にカイトシールドを背負ってるのが分かると、どうにかチラ見せしないものかと凝視してしまう。
「ハハッ、村男が町娘になってら」
何とでも言え。憧れの頂上がそこに居るんだぞ?ああ、生まれ変わったら銀装備になりたい。ダメならマント、マントの縫い糸でも…、なんなら蹄鉄の釘でも良い。
「「「キャーーッ」」」
悲鳴にも似た歓声が湧く。近衛騎士に見惚れてて気付かなかったがパレードの華が近くまで寄って来ていたようだ。王子様もさぞ素晴らしい鎧姿に違いない。僕は屋根のない馬車に目を向けた。
「あ、あれ?」
王子様は金の装飾を施した白い服であった。金髪を靡かせて下々を見遣る姿は爽やかな中に圧があり、列成す女性達の視線を釘付けにしている。そして女性達の視線はもう1人にも飛んでいた。
「レイさん?」
黄色い歓声が溢れ返る中、僕の声が聞こえるハズは無い。だが、目が合った。僕は咄嗟にハンドサインを送る。レイさんは手を振って…いや、アレもハンドサインだ。
「おめでとうございますっ!」
思わず声を上げた。王子様がこちらを見遣る。あ、エリザベス様が隣に来た。頭を下げてる。
「感謝するっ」「ありがとう」
そう言って、馬車は進んで行ってしまった。観客の歓声が止まらない。周りの女性が声を掛けて来る。王子様がお声掛け下さるなんてあンた何者!?だそうだ。もしかして僕、とても畏れ多い事しました?
「エリザベス様、僕処されるととろでした?」
「後でこっそりと」「お嬢様に感謝してくださいね」
滑舌悪くなった僕にメイドさん達が耳打ちする。迂闊に路地裏に入れなくなったな。
「ふふっ、私驚きましたわ。兄に自慢出来ます。それより、そろそろお暇しましょう。私も何か摘みたいですし」
お嬢様の一声で、僕達はその場を引き上げる。露店街で串焼き…とはならず、オープンテラスにパラソルの花が咲くオシャレなお店に連れて来られた。ガサツな2人と僕はこんな事がなければ一生入る事がない店だろう。
食事のメインは小さく切った挟みパンとお茶。焼き菓子なんかもあるようでメイドさん達が色々頼んでくれている。パラソルの下の席は4人掛けで、ガサツな2人と僕の3人、3人衆とエリザベス様の4人で2席を使う。メイドさん達は立ってるそうな。エリザベス様も座れと言ったが、ここが仕事の見せ場だそうで断ってた。
「ユカタ、貴方には本当に驚かされたわ」
料理が並び、絶対神に感謝を告げるとエリザベス様が食事も取らずに切り出した。
「そうですね。王子様が下々に返される等…、エリザベス様がおられたおかげでしょうか」
「いいえ。あの時かの方はユカタを見ておいででしてよ?まさかとは思うけど、面識おあり?」
マキにサーブしてもらってるレイナはエリザベス様が居たからと予想したが、エリザベス様は否定する。確かに王子様は僕を見てた。周りにいた女性達も僕と同じ事言ってたけど。
「まさか。けどお妃様とは、ね」
「ユカタ。人様のお嫁さんには手ぇ出しちゃダメだかんね?」
「相手が悪いぜ?」「首が飛びますよ?」
ロシェルの言葉にエヴィナとエリザベス様が乗って来る。王子様を人様と呼ぶのはだいぶ不敬だと思うが、貴族様方はそんな事より僕が新婚さんに色目使ってた方が気になる様子。色目は使ってないのでレイさんとの経緯を説明した。
「セーナ様と貴族の方って、レイチェル様の事だったのね」
3人衆とロシェルには名を明かさずに話をしていたので、そこにいた人物がレイさんだと知ってレイナは感心した。
「輿入れの旅に同行していたとは、貴重な体験をしたのね」
エリザベス様の関心はそこみたい。
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