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アルアインさんは、15馬力
しおりを挟む「歓迎致します。心行くまでご逗留下さいませ」
お屋敷では、執事長さんはそう言って迎えてくれた。皆湯に浸かり、遅い昼食を食べる。後はもう、夕飯の時間までゆっくりすべきだろう………。
「あ、薄皮。毛布も」
「オレ等タオルも買い直しだぜ?」
「ポーションは1つ、医療品も少し使いました」
思い出して出た言葉にエヴィナとジュンが続く。とは言え死体を包んだ毛布を洗って使えとは言えないし、金品所か暴行まで受けた女性に金品を集るのも良くない。泣き寝入りだな。それよりも、無い物は調達せねばならん。
「ならさ、2人でくっ付いて寝る?」
とか言う奴が出るからだ。
「夜警の時は使いまわせるけどね」
「ユカタのいけず~」
「けど薄皮は雨具でもあるし、医療品は買い足さないと困るね。明日はソレ等の買い物をして…乗り合いの予約もしなきゃ。当日でも大丈夫かなぁ」
「旦那様、よろしいでしょうか」
「旦那様?」
旦那様。どうやら僕の事らしい。メイドさんが言うに、エリザベス様の馬車が家紋を取られて残されているそうな。本来なら中古として売られたりするそうだが、なぜか残してあると言う。それならなぜ男爵様の馬車を使う事になったのか?聞いたが出しやすかったから、と返って来た。
「使わないのでしたら頂きましょう?旦那様っ」
「馬はどうすんのさ。高いよ?」
「私、曳く?」
そんな事をすれば人権団体が黙ってないぞ!?それにアルアインさんでも二頭引きは中々曳けまい。後1人は必要だ。
「アルアインさんは大事な人だ。馬じゃない。それに今8人でセーナが乗ったら9人だよ。あの馬車じゃ定員オーバーだよ」
「1人は馭者なので問題ありません」
「僕がやるのか…」
補助席を付ければ9席あって、1人は馭者で外にいるので問題無しだとメイドさん。馬車を扱えるのは僕だけだろうし、防寒防雨対策もしっかりしなきゃ…。
「私も馬は扱えるから、一緒にやりましょ?」
「アルアインさぁん」
「私も馬には乗れます。教えてくれるわよね?旦那様?」
「私だって乗れますわ。よろしいですわね?旦那様?」
「オレ戦車なら乗れっぜ?馬車と変わらんだろ。な?旦那ぁ」
戦車とは、1人か2人乗りの荷車を付けた馬車で、その名の通り戦争で使われていた兵器だ。これは学園の図書室で知った。
「で、馬は?」
ロシェルの言葉に皆固まる。馬は、高いのだ。
「馬なら御座いますよ」
言葉の先には執事長さん。そりゃああるでしょうよ、貴族家だもの。問題はお値段なのですよ。
「当家の馬車をご入用であれば、馬もどうぞ所望なさって下さいませ」
「下さいませって言われても。僕達飛竜便に乗って魔獣帯を越えようと思ってるんだ」
「ではどちらもお貸し致しましょう。王都の本家にお返し頂ければ問題御座いません」
「ありがとう爺や。是非そうして頂戴」「ははっ」
エリザベス様の一声で、馬車と馬を借りられる事になった。なってしまった、だな。更に夕飯の時間には僕達が欲しがっていた物が揃えられていた。薄皮に医療品にタオル。そして毛布。厚手のコートなんて2着もある。流石に頂けないので購入させてもらったよ。コート、高かった。
「ではな。旅の無事を」
「行ってらっしゃいませ」
「「「行ってらっしゃいませ」」」
お父様と執事長、それにメイドさん達に見送られて馬車を出す。僕自身の慣らしも必要なので朝食はお弁当にしてもらい、早朝の内にお屋敷を出た。
「ユカタも食べて。はい、あ~ん」
「あ~「イチャイチャすんな!」」
両手を手綱に取られて食べられないのだから仕方無いだろうが。馭者席の隣で味付け茹で肉挟み蒸しパンを持つアルアインさんは馬車の操作を習ってるハズなのだが、1つの蒸しパンを2人で食べてるので歯型が気になって仕方ない。僕の歯型を上書きしながら食べているのだが、獣人は皆そんな食べ方するのか?
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