【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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馬鹿な、大人

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 手を伸ばし、指を広げ、日が落ちる時間を予測する。だいぶ日も落ちたので野営する事にしたいのだが、辺りには石と土に、膝丈程の草が疎らに生えてるだけの荒野では、なかなか苦労しそうである。

「テントは無えって言ってたかんなぁ」

「とにかく地均して寝床の確保だよ」

 僕とエヴィナは地面を見渡し、小石を拾い、枯れ草を抜いて確保する。エリザベス様は草の抜けた野営地に風魔法を放ち、埃や虫を吹き飛ばしてくれた。

「ジュンのありがたみが分かりますね」

「アイツに生かされてたんだな」

 ナイフを使って細い穴を掘ると、背嚢から槍と薄皮、紐を取り出し槍を地面の穴に突き立てる。薄皮の端に小石を噛ませて紐で結び、柱となった槍の中程で繋ぐ。薄皮の端に小石と紐を結び、伸びた紐の先にも小石を結ぶ。薄皮を軽く張って、紐に括った小石が地面に着く位置に穴を掘り、小石を埋めて薄皮を固定すれば簡易テントの出来上がりだ。テントの下に、根を切った枯れ草を敷けば少しはまともな寝床になるだろう。残った根と草は燃料だ。

「もっと採って来ねーと足んねーな」

「エヴィナ頼める?僕トイレ掘るよ」

「開放的過ぎて不安になりますわね」

 テントから死角になる場所に、ナイフを使って穴を掘る。お尻を拭く草が細くて硬くて枯れている。取り敢えず揉んで見たけど、ダメだなこりゃ。

「お尻拭くのはタオルを切って使うしか無さそうだよ」

「タオルか…お、あった。先に古りぃヤツ使おうぜ」

 僕のタオルが刻まれる事になった。僕はさらに穴を掘る。今度はテント正面に、深い溝になるように掘る。その溝に草を入れ、揉んだ枯れ草に火打石で着火して、簡易かまどの完成だ。枯れ草なんてすぐに灰になっちゃうので料理に使えるかどうか不安しかない。火のある内に、日のある内に、料理と食事を済ませたい。

「旦那、鍋にスープ入ってるぜ」

「助かるね」

 温めるだけなのはありがたい。肉は干し肉だけどパンもある。ライラの気持ちが篭った食事をありがたく頂いた。

 最初の不寝番は4時間で、僕とエヴィナ。その後エヴィナとエリザベス様が交代し、そこから1時間毎に1人ずつ交代する事とした。エリザベス様には魔法を使わせたし、さらに夜が深まる程夜襲の可能性があるため、横になっても寝られなくなる。なので先にしっかり寝てもらう。

 星を見て時間を測っているので何時間経ったのかは曖昧だが、草を丸めて燃料にしたり、寝そうなエヴィナにキスしたりして時間を過ごす。

「ん……。街まで持つのか?」

「無防備晒せないからね」

「冒険譚の艶話でさ、こう言う時でもする話があんだけどよ…」

 眠気覚ましの意味が強いのかも、だって。そりゃあ寝てられないだろうけど、致してる時に夜襲があったらどうすんだ?

「フンマラで剣振り回したってよ。ヒヒッ」

 せめて靴は履いとけよ、と思った。

「回復出来ましたわ」

 少し時間が空いて、エリザベス様が起きて来た。星を見るが、多分まだ4時間経ってない。

「もう少し寝てて良いよ」

私もわたくしご寵愛を頂きとうございます」

 後でするからと再び寝かせた。冒険譚の艶話か…。子供の頃は馬鹿な大人の話だと思ってたけど、確かに、我慢出来るか分からんな。

 我慢して、朝。ガラガラと車輪を鳴らして馬車が行く。砦の補給に向かう馬車だろう。3台並んで喧しく、目を覚ますのには丁度いい。火を熾し、昨日の残りのスープを温め食事をし、支度を整え街へと向かう。

「敵が出なかったのは何よりだったね」

「出ねぇと分かってたらなー」

「ですわねぇ」

 冒険譚するつもりだったのか?僕はせめて体を洗いたいかな。川でもあればと淡い期待を込めていたが、砦を離れるに連れて夜襲も来て、それ所では無い5日間であった。

 街の到着が1日伸びて6日掛かったのは、スープやパンの作り置きをして時間を要したためだ。艶話になるような事はしていないぞ?





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