【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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土木、作業

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 食料の買い出しはまだまだ止める事が出来ない。畑で育ててない野菜もそうだが、特にパンの材料になるマタル粉は村で粉に出来ないので買うしかないのだ。村で作ったマタル麦は、脱穀、製粉する手間の無い、エールと糖蜜作りに使われている。

「では、行って参ります」

「気を付けてね」

 買い付け係のライラとアルアインさんに護衛としてエヴィナと3人衆が同行する。ジュンはずっと働き詰めだったので休息も兼ねているが、移動は移動で疲れるよな。なのでオーイでは5日程羽を伸ばして来てもらう予定だ。

「領主様、ワシ等も行くぞ」

 オッサン兄の音頭で僕も村を出る。途中まで馬車に帯同し、良き所で降りて採掘場を作るためだ。街道を掘らないようにするためでもある。

「ユカタ君、お土産期待してねっ」

「元気に戻るだけで十分だよ」

 馬車を見送ってる合間にオッサン達は杭を打つ。杭を抜き、枝打ちで出た枝を棒にした物を刺す。これを街道の目印にするようだ。刺した棒の周りに細い杭を3本。それをロープで縛り付け、倒れにくい棒にした。

「野郎共、まずは魔獣帯側に掘るぞ」

「その後の向きはどうするんじゃ?」

「村に向けた方が帰りが楽じゃろ」

「じゃな。ワシに続けーい」

「「「おおーっ」」」

 横一列に並んでポーチに浅く広く土砂を詰める。オーイ側の一番端は呪物を背負ったオッサン兄が立ち、基準の溝を一気に掘った。

「草。砂。石…ほうほう、ちゃんと分けて出せるのう、便利便利」

「兄貴、ワシにもやらせてくれい」

「何じゃ、ガキじゃあるまいに…」

「兄貴は頭、体はワシじゃ!」

 オッサンになっても兄弟か。オッサン弟は兄から呪物を剥ぎ取ると、土砂を掘る僕達を退けさせた。

「そんな小物じゃ日が暮れちまうぞい」

「待て!先に基準を作らんかいっ!」

 再び剥ぎ取られる呪物。兄の強権である。それでも三方に基準の溝が掘られると、兄は弟に呪物を返した。全部やったら弟泣くからな。

「うぇへへ…、見とれよぉ…」

 気持ち悪い笑みを浮かべ、基準の溝から先の土が50m程一瞬で消えて、深さが3mはありそうな空堀が出来上がった。

「おおっ、重さも何も感じんぞ!」

「馬鹿め、降りられんではないか。それにがんの位置も探さねばならんのじゃぞ?お前はそのまま土砂を浚え。領主様は下に掘って粘土とがんの調査。後の野郎共は階段作りじゃ」

 オッサン兄は先に階段を作りたかったらしい。だから僕達に浅く掘らせてたのか。草刈りしてるのかと思ってたよ。徒弟達が村側の端に階段を掘って行く。オッサン兄程上手くはないが、いずれここも掘ってしまうので昇り降りさえ出来れば良いのだ。僕の背嚢を使えば時間も掛からないのだが、弟子にやらせないとって事もあるのだろうな。なので僕とオッサン兄は草刈り目的の土掘りと、新たな基準を掘るのに時間を使った。

「兄貴よ、残土は魔獣帯にでも投げちまうか」

 階段が出来て皆が降りたのを見てオッサン弟が走って帰って来た。だいぶ遠くまで掘ってたみたいだが魔獣帯まではまだまだ遠い。捨てに行くのは無駄足だろう。

「先に調査をしてからじゃな。領主様、調査は奴とするから代わりに残土を投げて来てくれんか」

 捨て場の選定は僕に一任された訳か。背嚢をオッサン達に貸し出して、呪物を背負って地上に上がる。下手に捨てると馬車が迷惑するだろうし、魔獣帯に捨てたいオッサン弟の言葉も確かになーって感じた。とは言え1人で行ける場所でなし、オーイ側の魔獣帯側に浅く広く捨てる事にした。

「せっかくだし、野草でも摘んでおくか」

 独り言を吐いて、捨て場予定地の土を浚う。野生のジャリソウや紙の原料になる雑草を潰したら勿体無いからな。一段凹んだ残土捨て場に土を撒くが、風に舞って飛んでってしまったので塊をイメージして置いて行く。ジュンの出す石板をイメージしたらキレイに捨て場を盛り上げられた。しかし量が多いな…。










 
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