女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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定時には帰れない

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「カケルさん、今日は手ぶらですか?」

ギルドの中が混んでたので一直線に買取カウンターに向かったのだが、唯一暇を持て余してた鑑定カウンターの男に手招きされ、ホイホイと向かってしまった先でこの台詞である。

「すまんな、一杯あるんだ」

「今日はゴタゴタしてて暇なのは私と解体班くらいなんですよ。量があるなら奥に行きましょう」

一人だけ暇してるとサボってるみたいで気まずいよな、わかる。二人で解体部屋に逃げた。逃げた先に敵が居ないと言う道理は無い。扉を開けるとボインが突っ込んで来た。後ろには買い取りの男が居て避けられない。腰をやや落とし、両腕を広げて衝撃に備えた。

(《強化》!!《硬化》!!《耐性》!!)

ガキンッ!
間に合った…。今回は服に穴を開けずに済んだぞ。

「やっぱりカケルか。ママのおっぱいが恋しくなったのかい?」

「ママにナイフを突き立てられる子供の気持ちになってくれ」

「これも一つの愛情表現さ。それで何を持って来たんだい?」

「刃物を使うモンじゃ無くて済まないが…」

折角だから分類して出そう。《収納》に入ってる大量の羽根から大きい順に三分割して一塊ずつ出して行く。

「カケルさんは何時も面白い物を持ち込んでくれるので見てて飽きないですよ」

「確かにね。飛竜とタメを張るキングルークの羽根かい。しかもこれ、狩ったモンだね?」

「換羽にしたって量が多過ぎますもんね」

情報が多いな。飛竜と同じくらいの強さ?で、王なのか城なのかと突っ込まざるを得ない名前の鳥、らしい。

「今回は俺の連れが狩ったんで詳細は解らないんだ」

「羽根の毟り方がとても丁寧で最高級ですよ」

「羽毛にも血の匂いがしやがらない。一体どんな狩り方したんだか…」

「カケルさん、量が凄いので査定と振込は後日でお願い出来ますか?三日程下さい」

期日は気にしないので、よろしくどうぞで丸投げした。

「あ、カロさんに話があるんだけど、今忙しいかなー?」

「坊や、あたしじゃ不満かい?」

「ママにも関係ある話だからカロ邸で一気に話したいんだ」

「なら後で寝具店に向かうよう伝えとくよ。多分、定時には帰れないだろうからね。キングルークの焼肉、期待してるよ」

残ってれば良いけどな。タマリー達が仕事モードになったので、カロに優しく《威圧》を掛けて、俺もギルドを後にした。久しぶりの鳥肉美味しかった。腿肉一本で全員が満たされるくらいの量だったけど。


「会議中に変な声を出してしまったではありませんか!」

カロとタマリーが寝具店にやって来たのは夕方。夕飯を食べたらまた仕事に行くそうな。

「ごめんよカロ、顔が出せなそうだから。せめて来た事だけでも知らせとこうと思って」

「んもう…。それよりも、其方の女性は?」

「ミーネ様だ。カラクレナイの母、と言えば解るな?」

「え…。お初にお目に掛かります。私、メリクヒャー家次女にてカケル様の愛妾の末席を頂いておりますカロと申します。何卒宜しくお願い致します」

平伏し自己紹介するカロに首を傾げるタマリー。

「カロがそこまで謙るなんて相当なんだね」

「タマリーも頭を下げなさい!カララ様の御母上様ですよ!?」

「カケル、かららさま?ってのは誰なんだい?」

「彼処で肉を待つドラゴンだよ」

「ドラゴン…の、母…え?否まさかそんな…」

すっかり狼狽えてしまったな。レッサードラゴンは人化なんて出来ないし、そこまでの知能も無い。即ち、そゆこと。自問自答を繰り返すタマリーに念を押す。

「タマリーさんや、この子はカララサマ。良いね?」

「解った。ミーネ様、私は彼の妾が一人タマリーと申します。以後お見知り置きを」

「カロにミーネ、娘共々宜しくしてくれ。さすれば災厄に見舞われる事はあるまい」

マジで頼むぜ…?
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