女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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「僕とサロン、どっちが大事なの!?」

客間の月一大掃除は方言であった。そして現在、サロンにて涙目のハーク坊っちゃまに詰め寄られ、若いメイド達にキャーキャー言われている俺である。部屋の隅から生暖かく見守る二人、助けてくれはしないのだろうな…。

「ハーク、自惚れるなよ?俺は仕事の話をしに来たのだ。お前の泣き顔を見に来た訳じゃ無い」

胸の高さに抱き上げギュッとして、頭を撫で撫で公私を弁えさせてやる。カケル様の矛盾デレ?何を言っているのか解らない。ご機嫌を取り戻す迄椅子に座って膝に乗せてやった。完全に入ってる?何を言っているのか…?

「みっともない所を見せてごめんねカケル。もっとしっかりするから嫌いにならないでね?ね?」

「はなから嫌いになんてならんよ。「初めて会った時からこうしたかった」
偶に我儘言うくらいが丁度良い」「さあ、もっと腰を振ってごらん」

副音声の犯人はメイドである。尿意を催す《威圧》を掛けてやる。そこでモジモジしているが良い。

 気を取り直して、先ずは仕事の用件からだ。内容は、この家から城迄の護衛であるそうな。王都なのだから城と隣接してそうだが、この街は元の王都からダンジョン都市へ遷都した街だそうで、城は更に南東にあるのだと言う。四頭曳きのゾーイ車で三日程の距離だが、モンスターや野獣が出る事も珍しくは無いそうだ。

「偶には父上や母上に顔見せしないとね」

「アルアは帰らないのか?」

「多分、もう出発してると思うよ?城に着くのは大分遅れるとは思うけど」

「ルングネンハルトからだと、お城まで十日は掛かるわね。商隊の護衛で行った事あるわ。四頭曳きでも宿営地次第だし、余り変わらないかな?」

「流石先輩」

「止めてよもう」

「アルア様の方も護衛依頼を出しておりますので問題はございますまい」

ブルランさん、それはフラグと言う奴では?《感知》でアルアを探すと、森の中、多分街道を移動してる。前後にゾーイ車を挟んだ三台に単品のゾーイが四頭。近くにはケブが数匹居る程度なので暫くは問題無いだろう。

「カケル、《感知》か何か使ったの?」

上目遣いのハークきゅん可愛い。

「問題は無さそうだったよ」

「僕は魔法以外はさっぱりだから羨ましいな」

「かくれんぼしたらスキル発現するかもな。訓練で剣技とか覚えるって聞いた事あるし」

出発は明日、集合はギルド前朝一と言う事で、今夜は解散だ。夕飯に誘われたけどしっかり休むのも仕事の内だと諭してハーク邸を後にした。

「ご飯食べたかったなー」

「明日の支度もまだしてないじゃない。カケルさんの行動が正解よ」

「そう言う事だ。食器は作れるけど食料は作れないからな。特に調味料」

今の手持ちは塩しか無いから買い足しておきたい。後野菜と穀類と肉。雑貨屋と食料品店で色々買って《収納》しておいた。肉の臭み消しになる木の皮とか煮物に入れる乾燥香草、パパイヤ程の大きさで黄色い干し柿みたいな甘味料、甘干しは初めて見たので多目に買っとく。

「それ、甘いけどそのまま食べると体が冷えるから注意ね」

「オレ食った事無え」

「俺もー」

「宿に着いたら食べて見ましょ?」

宿に戻り、夕飯を食べて、部屋でお茶を淹れながら食ってみた。野生の果物よりは大分甘味を凝縮しているな。歯応えはサクサクしてて何か奈良漬けみたい。

「これ、瓜なのか?」

「そうよ。ヒナタオオウリって言うの。甘干しは商品名ね」

「甘~い」

「夜中にトイレに行って凍死したって話、よくあるから注意してね?」

心做し体が冷えてる気がする。トイレは早目に済ませて暖かくして寝よう。
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