女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

文字の大きさ
453 / 1,519

明らかにそこにある殺意

しおりを挟む


 ネーヴェが落ち着いた所でドアをノックし来訪を告げると、間を置かずメイドが来て中に上げてくれた。

「本日は、よろしくお願いします。ラッテ様をどうかお救いください」

「神にでも祈っていてくれ」

客間に通されると、既に家主とその妻が待っていて、深く頭を垂れた。

「カケル殿…、本日はご足労頂きありがとうございます」

「表情が優れないな。…と言うより焦りと疑念が見えてるぞ?心変わりでもしたか?」

頷いたままの二人は顔を上げずピクリと肩を震わせた。

「旦那様!それではラッテ様が!」

「そんな事は分かってる!…カケル様はお見通し、なのですね」

「理由を聞いても良いよな?」

「夜分に文が届きまして、貴方様が視察を拒んだ場合、かの者は詐欺師である故、施術は断るようにと…」

「バルジャンに唆されたか。俺は詐欺師じゃなくて冒険者なんだがな」

「存じております。ジョン様とダンジョンに潜られたと聞いております」

「金も力もある俺が、お前等から何を詐欺するんだ?金はある。家も先日セカンドハウスを作った。女にも困ってないし貴族より良いモン食ってる。お前等から何を搾取したら良い?」

「仕事です…」

「断ればギルドが仕事を妨害するって訳か。ジョンはそんな事しないがな」

「ジョン様以外はするのです」

「ならば此方は家政婦組合を味方に付けるか」

「カケル様、それは難しいかと…」

「なぜ?」

「家政婦組合は、男性の言葉を意見の一つとしてしか聞きません。男女で争う事も違反となります」

「意見の一つとして聞いておくよ。今日は帰るので気が変わったら樵に来てくれ」

「カケル!」

「ネーヴェ、これが、正直者が馬鹿を見るって事だ。けど必ず助ける。先に馬鹿を懲らしめてからだ」

「……わがっだ」

脇腹に飛び込み悔しさを堪えるネーヴェを抱え、俺達は外に出た。立ちながら呻いてる馬鹿共は無視だ。

「ネーヴェ、ジョンに殺意を飛ばしてくれ。殺すなよ?」

「うん」

見る事は出来無いが、明らかにそこにある殺意がジョンの元へと凄い速さで伸びて行く。ギルドの壁にぶち当たった瞬間、ジョンはギルドを飛び出した。
追い掛けて、回り込み、道を塞いで此処まで来るのに三リット。

「かっ、カケル!今度は何だ!?」

「ネーヴェが激おこプンプン丸なんだ」

「な!?キルヒネーヴェ様!お怒りの理由をお答え下さい!必ずや取り払って見せます!」

ネーヴェの前に跪き理由を問うジョンに、先程の話を聞かせてやった。

「この馬鹿女!」

やはり独断か。呻いて返事も出来無いバルジャンにジョンの怒号が飛ぶ。

「ジョン、其奴がやった事を纏めて、関わった奴を洗い出してくれ」

「わかった!」

「ネーヴェ、森を消し飛ばしに行くぞ。関係無い人を殺しても意味が無いからな」

「うん」

「おまっ、そんな事したら狩りが出来なくなるだろ!?」

「開墾するなり街を広げるなりすれば良いさ。それとも街に向かってブレスを吐かせるか?」

言葉の出ないジョンを放置し、空に上がる。どんどん上がって街が豆粒程になった所で街の周囲五キロ程に生えてる木を全て《収納》した。

「ふぅ。ネーヴェ、やって良いぞ」

「グオラァァァ!」

怪獣映画に出て来る大怪獣が吐き出す放射熱線の如く、青白い光が森に飛ぶ。雪は一瞬で昇華し、木は炭となって燃え上がり、地面と一緒に飛び散った。ネーヴェのブレスが森をぐるりと一周すると、土煙と水煙が立ち昇り、火の粉が降り注ぐ深い窪地が出来上がった。

「うぐぅ…、カケル、カケルゥー」

抱き着いて顔を埋めるネーヴェを優しく抱き返し、宿に戻った。

「カケル様!ラッテは?ラッテは治ったの!?」

宿に着くとティータが駆け寄り施術の結果を聞いて来るが、大人の都合で今日は出来無かった事を告げると残念そうな顔をしながら少しほっとしていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...