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趣味が無い
しおりを挟む服を着替えて洗面し、皆と食事をして食休みのお茶を飲んだらトイレでタマゲル達に餌を与える。結構な人数から餌を貰っているし、餌の栄養も良いみたいでだいぶ数を増やしているようだな。
朝のお勤めも終わった所で、厨房からおやつを頂き出掛ける支度をしていると、物欲しそうな視線が刺さる。
「カケルゥ、カララはね、大好きなカケルと食べる甘いのが大好きなの」
「「カケルさまぁ」」「カケルしゃまぁ~」
俺のおやつは無くなった。が、天使達の笑顔が見れたので後悔は無い。ずっと見ていたいのを我慢して、ジョンの所に昨日査定した分の金をもらいに行って来る。
雪招きのドラゴンであるママ様が離れたクリューエルシュタルトはすっかり春の陽気だ。男も女も薄着になって陽の光を浴びてるが、浴び過ぎも良くないんだぞ?野球漬けで日焼けして、坊主だった頭の皮まで剥けてた俺が言えた事では無いのだが。
専用口からギルドに入るとジョンが肌を晒してた。
「うおっ!カケルかよ」
「着替えてたのか?」
「日に当たってたんだ。お前んトコではやんねーのか?」
「やらんなぁ。そもそもこの大陸以外で雪を見ないからな。日光浴所か水遊びすらしないぞ」
「成程なー」
取り敢えず仕事場ではやらん方が良いと思う。昨日の査定の結果を聞くと、ドアを開けてサブマスを呼び付ける。呼び付けられてやって来たサブマスの女は驚いて恥ずかしがって覗いてた。
「お楽しみの所悪いが、査定した金を振り込んでくれ。終わったらたんと凝視して良いから」
「はっ、はいっ!」
差し出すギルド証を奪い取り、素早く機械にかけて行く。
「流石に服着るぞ?」
「服があるならな」
脱ぎ散らしてあった服は既に《収納》した。
「カケル様、入金完了致しました」
ギルド証を返してくれるが、その目は俺を見ていない。ジョンのあられも無い姿を目に焼き付けているようだ。
「カケルよぅ…」
長居するのも良くないな。ジョンの服をサブマスに渡し、俺は窓から外に出た。特に予定も無いし、狩り…はママ様に一言お伺い…の前にリュネにお伺いを立てねばならんし、主婦達と…したいが家に帰ったらジト目を賜りそうだ。
俺、趣味が無いんだな…。
シルケ人に、趣味と言う概念は殆ど無い。貴族等、生活に困ってない者は嗜好品を集めたり、ギャンブルや狩りごっこ等で娯楽を楽しんでいるようだが、平民は仕事しないと生きていけないので遊んでるのは子供と冒険者くらいのモノだ。人間の屑みたいに昼間っから酒を煽るのも嫌だし、何か娯楽は無いものか。
「カケル様」「お暇なのですか?」
専用入口の下で立ち惚けて居ると、何処より声がする。あ、向かいの屋根の上に居た。お前と貴様だ。浮き上がって合流する。
「この世界には娯楽が無くてな。お前達こそ、こんな所で日向ぼっこか?」
「そうだったら良いのですが」「残念ながらお仕事の途中です」
領地での収集した情報をシューンシューンズデーゲンにて報告する途中なんだとさ。
「カケル様は何か情報ありませんか?」
「んー、特にはなぁ。昨日ジョンとダンジョンに潜ったのはもう知ってるだろう?」
俺の答えに二人は頷く。俺にはこのくらいしかネタが無いのだ。
「ですが、何処まで潜ったのか、詳しくは知りません」
「戦利品は?武具は沢山流れているようですが」
「その辺はその内物が出るから気にしなくて良いだろう。魔剣や魔装については秘密だ。お前等の親玉に知られたら困るしな」
「暗に出たと言ってますね」
「そりゃそうだ。なんせ俺とジョンにリュネまで居たんだからな。まあ、ジョンも俺も目を付けられてるだろうし、献上するような物は出てないって事にしといてくれ」
「「御意に」」
「所で、何か娯楽になるような物は無いか?」
「娯楽、ですか?」「打つ、買う、飲む、ですね」
やっぱりそれしか無いのか…。
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