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二度と作らない
しおりを挟む島に帰って調理の続き。ペーストにしたレッグルートを煮る作業はまだ終わっていないのだ。厨房では一番早く出来上がる濃いカリカリを作る女達に混ざって昼食の仕込みが始まっていた。邪魔になるから俺の鍋は食堂で世話するか…。
椅子とテーブルを元に戻し、鍋をセットし掻き混ぜる。此方はカブトムシの色はしていない。薄ら黄色い飴色だ。
お玉に着いた液体を指でなぞってペロる…。芋っぽい甘さで黒糖には及ばないが、お前の実力はまだまだこんなモンじゃ無い筈だ。だが元々の水分が多いので糖度を高めるのに時間が掛かるのだろう。黒糖や白糖を作る方がコストは低いだろうな。
昼飯を食べながら世話を続けた結果、カブトムシ色のネトネトになった。箸代わりの棒で練り練り、空気を含んで色が変わると茶色からピンクっぽく変わり、芋味の練り飴みたいな味になった。美味いんだけどコストがなぁ…。
「カケル~、あっちおわったの~」
もうそんな時間か。鍋の世話に時間を掛け過ぎた。
「お疲れ様。これ二度と作らないんだけど食べる?」
「食べるの~」
練れば練る程色が変わる不思議な練り飴はカラクレナイのお口に合ったようだ。二度と作らないけどな!
夕飯はレッグルートの揚げ物が出た。タレを掛けなきゃ食事としても行けるのでは?と考えたラビアンの手によって、芋モドキの素揚げが誕生した。焼くよりは手間だが、主食足り得る炭水化物だと思う。腹に溜まるしな。
「あの、カケル様。皮を剥いたレッグルートがまだ残っているのですが、冷蔵庫に仕舞うと甘くなってしまうのですよね?」
ラビアンの一人が声を掛けて来た。芋モドキの素揚げを開発した茶色兎のハシュットだ。
「甘いのはダメか?」
「いえ、主食として考えると甘過ぎるのは如何な物かと」
「成程。なら甘味に使わない分は干してみるか。まだまだ一杯あるし、試してみないとな」
「はいっ。干場に吊るしてみます」
水分を飛ばせば糖度は増すが、糖化する程は増えないだろう。カリカリに干して焼いたらまた何か新しい物になりそうだし、粉にしても良いだろう。良い野菜を手に入れたぜ。
「旦那様よ、入浴施設は何時でも開ける事が出来るぞ?」
芋モドキの未来にニヤニヤしていると、ミーネが施設の完成を告げた。
「急がせたつもりは無かったが、頑張ってくれたようで嬉しいよ。食堂での食事や飲み物を用意したら外からの客を入れようか」
「旦那さま、料金はどうしますか?食事を出すならお金を貰わないと、出て行かなくなっちゃいますよ?」
「だな。食っちゃ寝出来て若返るとなりゃあ、子供になる迄居そうだもんな。シャリーはどう値を付ける?」
「え?はあ。飲み物は安く、食事は程々に、それと入浴の料金は公共より高めが良いですね」
「それだとお客さん来なくなりませんか?」
「サミイ様、安いだけだと見くびられてしまいます」
「んん?」
「付加価値、だな?」
「はい。時間と若さ。相反する二つが得られるのは大きいですよ」
浴室の時間を遅くして、浴室に居た時間を戻す。これはカケラントのヤリ部屋と同じ仕様だ。そして施設には洗濯機が置いてある。以前作った型を使い、リュネ達が人の子の扱える技術で増産してくれたのだ。更に食堂の一角では野菜等を売ると言う。地元の食料品店の出向だが、珍しい野菜や乾物、黒糖等は俺達が卸した物だ。食堂で珍しい野菜を使った料理を売り出せば素材の紹介にもなって売上も伸びると…。流石は元商業ギルドだな。ちょこちょこ街に行きながらそんな契約取り付けてたのか。報連相して欲しいぜ。
「知り合いのおばあちゃんだから安心です!」
サミイも一枚噛んでたか。しかし何が安心なんだ?
「では明日からでも施設で出す食事と飲み物を考えよう。奇を衒う必要は無い。黒蜜豆乳みたいなので良いからな」
「「「はーーーい」」」
食堂に関しては皆に任せて良いだろう。
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