女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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悪徳デブ貴族

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 今日は休みだ。稍ゆっくり目に起き出して、片付けている女達の中で朝食を一人食べると、身形を整えバルタリンドへ向かう。売らずに溜め込んでいるだろうミズゲルの核の買い付けだ。

「カケル、串焼き~」

イゼッタや、朝ご飯食べたばっかりでしょ。

「あ、ホイットニーさんお久しぶりです!……え、くれるんですか?ありがとうございます!」

今日何回目だ?露店や店屋から売り物を貰うの。

「うちの妻がすまんな。これ取っといてよ」

金は受け取らないので水の棒をくれてやる。何本あっても良いからな。喜んで受け取ってもらえたよ。

「良かったですね、貴方様」

「お、おう」

俺が出掛けると聞いて着いて来た妻三人は、昨日みたいに何処からか女を引っ掛けて来やしないかと警戒しているようで、買い物だって言ってるのにくっ付いて、用の無かった露店街で冷やかししたり物を貰ったりで楽しそう。因みにリアのお付のフラーラ、ノーノはカロ邸で、イゼッタのお付のシャリーは島で休みを満喫している。

「そろそろ俺の用に向かいたいんだが」

「建具屋は逃げない」

「建具屋は逃げないが時間は過ぎるモンだ」

「え?お花のお茶ですか?嬉しいです!ありがとうございますっ」

「あああ、家の妻が済まない。コレ貰ってくれ。転売はダメだぞ?」

属性魔石の材料を買うのに属性魔石を減らしてどうすると言うのか。互いに悪気は無いようなので文句も言えんし、偶には羽を広げさせてやるのも夫の努め、か。
露店街をぶらぶらし、昼飯は個室のある食事処で食べる事になった。串焼きあんなに食ってたのに。

「カケル様っ」「おや」

「カロ達も此処で食べるのか」

店に入ろうとするカロとタマリー、そして我が子達に見付かった。

「此処は個室がありますので」

「もう乳離れはしてるんだがさ、習慣ってヤツだね」

「ぱーはー」「あー…」

「シンクにガンダーもお腹空いたよな。一緒に食おうぜ」

ちょっと狭いが大人六人個室に通される。子供二人を膝に乗せ、楽しい昼食となった。二人共食べるのに必死だ、偉いぞ。

「カケル様、最近街へ来た冒険者の事なのですが…」

「女か?」

「男性です」

残念だ。カロの話を聞くに、弥一の事だ。登録しても資料室に三日連続で篭ったりしてたからか職員に目を付けられているらしい。

「植生や狩り草の情報を得るのは誰でもやるだろ?俺もそうしたし」

「スキンクテール三倍買取り、覚えております」

「あれ、坊やだったのかい」

「一杯生えてたから、ついな」「生えてた」

「弥一は俺の友達だ。資料室で情報収集するのも俺が教えたんだ。デブな奴だが悪し様には言わんでやってくれ」

「とんでもない。何処かの貴族かと思われてるよ」

タマリーの発言に、野郎何をやらかした?と思ったが、そうでは無さそうだ。

「は?何でよ」

「デブだからさ」「タマリーっ」

言わんとしている事は分かる。平民にデブは多くないし、スキルのせいか識字率もシルケに於いては高いだろう。服も上着以外は地球産でちゃんとしてるし、何より三十代だ。そう言われれば悪徳デブ貴族に見えても仕方無い。
だが奴は、口調以外は丁寧だ。数日前から始め出した依頼も丁寧な採取をして、昨日も大量の毒草を持ち込んで良い稼ぎをしたそうな。
悪徳なのか誠実なのか分からないオッサン…と言うギャップが職員の注目を集めていると言う訳だ。

「カケル様のご友人でしたら、それと無く皆に釘を刺しておきます」

「あまり優遇しなくて良いからな?彼奴はその内強くなるけど、今は弱くて修行の身だからな」

「なんだい、弱いのかい」

「ああ。だから死なない依頼を回してやってくれ。あの毒草にやられてた子、食事中には言えない様な状態になってたんだぞ?」

「カケル、治したの?」

「そりゃあな。昨日の女の息子だよ」

「お礼に…ってかい?」

「金は請求出来無さそうだったしな」

「貴方様、それなら早く仰って下されば…」

言わせてくれなかったじゃないか、と言う言葉はグッと飲み込んだ。







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