女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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随分使って無かったヤツ

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 箱を開けずに回収し、階段を降りる。階段部屋には敵は湧かないと言われているが、果たしてどうか。

「今夜は此処で寝るぞ」

「わたし等からするとだいぶ早いけど、気を使ってんの?」

「飯作るし、便所と寝床と風呂を作るから多少早くてもキリの良い場所で準備したいんだ」

「風呂…。何もかもわたし等と違うのね」

階段とドアを挟むように、煉瓦の壁を二枚立てる。階段の傍に入口を開け、部屋の隅に個室を作り、中に魔道トイレを設置する。風呂場となる壁を立て、入口の穴を開けたら隅に浴槽を置いた。沸くのに時間が掛かるから先にお湯を沸かしておこう。対面の部屋の入口は部屋の中央辺りに開ける。調理場兼食堂と、寝床を区切る壁を立てた。

「狭いな」

「壁なんて作るから…」

狭い寝床を何とかしたい。部屋の高さの半分程で床を張り、梯子を付けてロフトにする。腕を上げなきゃ天井には当たらない程度の高さになった。

「折角だけど狭い事には変わりないわ」

居住スペースの壁を取り払えと言われ、片付けるとさっきよりは開放的な空間となる。で、後はテントで良いと言う。

「まさかとは思うけど」

「テントならあるぞ?」

細い煉瓦で骨組みを拵え、随分使って無かったヤツを被せた。

「何の皮よ…」

「レッサードラゴン」

干し肉の香り広がるトカゲ皮のテントに、女は閉口した。端に寄せて、もう一張りは建てられるか。そっちは雑木で良いや。

「板…」

「板だな」

「板があるなら板で仕切れば良いじゃ無い!」

成程な。全部仕舞って薄板で三部屋分の仕切りを作った。

「入口に布か何か掛けたいんだけど」

「布な…」

雑木紙を張ってやる。

「板ね…」

「紙だぞ?さて、飯飯」

調理場を作らねば。これは慣れたモンで直ぐ出来る。四角い台に火の鉄板を三枚並べて乗せただけ。簡単。一つには水を入れた鍋、もう二つには焼き鍋を乗せて魔力を通す。

「あんたまさか、此処で料理すんの!?」

「飯作るって言ったろ?」

「ダンジョンで料理する奴、初めて見た…」

「お前達はどんな夕食してんだ?」

「え?干し肉とソーサー炙って水で流し込むのよ?悪い奴はお酒飲んだりもするけど、それが普通じゃない?」

「ああ、何か以前に聞いた事あるかも」

誰かに言われたなー、ジョンだったか、思い出せん。

お湯になりつつある鍋には乾燥野菜と刻んだ干し肉を入れて味付けする。後は水溶きマタルとゴーラ肉を焼くだけだ。

「薄いわねそれ。美味しいの?」

「材料的にはソーサーだ。練るのが面倒だからこうしてる」

「そっちのも薄いわね」

「どっちも火の通りが早いんだ」

急か急かと薄ソーサーと薄肉炒めを焼く俺に幾つも質問が飛んで来る。

「お前、飯の支度しなくて良いのか?」

「くれないの?」

「持って来てんだろ?」

「あるけど。量見ててっきりわたし等の分迄作ってくれてるのかと」

「明日の朝食と、昼食の分だよ」「酷っ」

俺は酷く無いと思うがなぁ。

「…ねえ、わたしのコレと、交換しない?」

何処からか果物を取り出して、トレードを申し込んで来た。

「そんな事せんでも、食いたいなら分けてやるよ」

「是非頂くわ。けどあんた、両極端って言われない?」

言われた事無いな。気心知れぬ野良パーティーなら、自分の事は自分でしないとダメだろう?食料も寝床も、自分で管理するもんだ。

追加の肉と薄ソーサーを焼きながら女と二人で飯を食う。ボールギャグの男は《洗脳》掛けて自由にしてやった。部屋の端で寝ながら干し肉齧ってる。
その後、風呂に入って寝た。《威圧》の男の《威圧》を解いたら、起きたら居なくなっていた。

「やっぱり、死んでたのね」

「俺の女に色目使うからだ」

「ギルマスと繋がってたのね」

「相思相愛、子供迄居るぞ?」

「それはご馳走様。お腹空いたわ」

「また集るのか」

「わたしの食料出すから!」

昼食足りるかな…。仕方無く食わせてやり、出発準備に勤しんだ。

「何コレ凄っ!」

早く出てくれ。俺もしたいんだ。
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