女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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貸し借り

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 後続の付き添い達は紋章付きの客車を見て一目散に駆け出して挨拶を交わす。宰相夫人だし、お近付きになりたいのだろう。ディワダですら存在感を出している。

「ムームード、カケル様は何処いずこに?」

「は、今お連れします」

挨拶もそこそこに俺を呼ぶ。近くに居るから聞いてるし呼べば向かうが、ムームードがやって来た。

「お前、宰相夫人と面識あったのか」

「そりゃあ、Bランクだしな」

ランクは関係無いのだが、そう言う事にしておけば丸く収まる。

「お待たせしました。弔いは終えております。遺品の積み込みも終えました」

「ご苦労様。此方の三方はお仲間でよろしいので?」

「どうか、咎無きよう」

「…分かりました。メルタールへの護衛を頼みます」

それで貸し借り無しとするようだ。ヘンプシャーの言っていた面倒事だが、相手が夫人なら俺は良し。

「承りました」

ホルストを繋ぎ直し、準備を整えると三号車と四号車の間に夫人達の客車と荷車を挟んで移動を開始した。車列の横には騎乗した騎士が左右から客車を挟むように並び、常歩より少し遅い速度で進んでく。
鎧で重いから速度が出せないのか。それでまだこんな所に居たんだな。

「初めて貴族を見た気がするぜ」

疲れ果てた弥一が目を閉じて口を開く。

「休んどけ。疲れたろ?」

「んあ」

そのまま大口開けて眠りに着いたのを見て、そっと外に出る。

「カケル様に感謝を」

「「「感謝を」」」

小さな声で、騎士が言う。間に合わず死んだ者やホルストが居るのだ。感謝は貰えない。だが俺に感謝する事で自らを鼓舞出来るなら、応えてやるのも仕方無い。

「鎧と荷車、客車を軽くする。速度に気を付けろ」

「「「はっ」」」

静かに応える騎士達の鎧と、荷車に客車を浮かせてやる。ホルスト達もホッとしたようで足並みに勢いが増した。護衛があるからと期日を伸ばしてはヘンプシャーに文句を言われ兼ねないからな。少しだけ力を使う。

 昼食休憩のようで、各車両が道の左右に分かれると、夫人達の車両は挟まるように道の真ん中に停る。所謂特権と言うヤツだ。外に出て、作り置きのマットやテーブル、調理台を取り出すと、弥一達はテキパキと飯の支度に取り掛かる。俺はトイレ作りだ。他の面々は周囲の警戒に当たる。騎士達は自分達と主人の世話に分かれて作業してるみたい。

「カケル様、よろしいか?」

騎士の一人が走って来る。何だろう?聞いてみると、水樽が割れて主人やホルストに飲ませる分が無いと言う。

「樽を直して水を入れておけば良いか?」

「感謝に堪えん」

夫人の荷車に向かうと、確かに割れて水が全部出ちゃってる。直すのも面倒なので、雑木でそれっぽい形にして付け替えて、栓の口へ水の棒を突っ込んだ。溢れたら栓をして終了。

「翔、飯飯~」

「おーう」

皆しっかり寝たようで、飯を食う気力に満ちているな。

「カケル様っ、良かったら此方で一緒に」

ニーネンタールが女騎士を連れてやって来る。が、俺の分の飯は用意されているので遠慮した。その代わり、後で少しだけ夫人達の客車に同乗する事となった。

「貴方、夫人達と同室するのは不敬に当たるわよ?」

「大丈夫だ、問題無い」

ヘンプシャーの言葉を素っ気無く返す。呼ばれたので行くだけだ。断ればその方が不敬に当たる。何か言いた気なヘンプシャーであったが、俺がもりもり肉巻きソーサーに被り付くと、舌打ちして下がって行った。

「女には優しくするんだろ?」

「んぐ…。相手によるさ」

 飯を食い、出す物出したら片付けて、隊列を整え野営地へ向かう。俺は途中で六号車を抜けて、夫人の客車へ飛んで行く。ノックをすると反応があり、中へと招かれた。

「お久しゅう」「カケル様、お会いしとうございました」

「まさかこんな所で会えるとは思っても無かったよ。危ない所だったね」

上座の真ん中に座らされた俺は、左右から母子の歓待を受ける。




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