女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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逃亡者

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 バットを担いで待つ俺の前に並ぶ五人。口だけ達者で構えもしない。危機感が足りないな。

「とっとと掛かって来いよ」

誰も来ない。来れる訳が無い。足に纏った《威圧》を解ける者は居ないのだ。

「クソっ」「卑怯だぞテメェ」

「温いわっ」

ドバッ!

かなりの速度で男共の背後に回り込み、下から振り上げるようなスイングでバットを振り抜いた。名物ケツバットである。尻を打たれた男は声も無く意識を飛ばし、前に倒れ込もうとするが纏った《威圧》が足止めしていて前のめりとなり、膝を曲げて更に尻を突き出す形となった。

「なっ…」「一撃で…」

ドバンッ!

「びっ!」

ドバッ!ドパンッ!ドバッ!

二人目の男は声を上げる余裕はあったか。三人、四人とケツバットをキメ、全員の意識を一撃で刈り取ってやった。

ドバッ!

「ひぎっ!」

「何寝てやがる。腹ごなしになんねーぞ?」

尻を向ける一人目の男に更なる一撃が見舞われると、悲鳴を上げて目を覚ます。が、痛みでそれ以上の言葉は考えられない状態だ。
バチバチと全員を起こしたら一人目に戻り、回復掛けて最初から。ギャラリーからの声も無く、バチバチと尻を叩く音と少しの悲鳴だけが黒い森に響いた。

 食事の仕込みもあるので最後の一撃を叩き込んで回復を掛けてやるが、痛みによる疲労で《威圧》を解いても倒れ込み、動けなくなっていた。

「俺は強いぞ?人の中では一番くらいにはな。さて飯の支度だ。手伝ってくれー」

寝てる五人以外の皆が手伝って、肉を焼いたり皿を並べたりしているが、皆静かに手だけ動かしてる。

「翔、やり過ぎだぜ」

「自分が殺されないとか思ってるから、あんな棒立ちで居られるんだ。危機感無いと普通に死ぬぞ?」

「…まあな」

皆、分厚い肉を食い、ソーサーとスープを流し込んで夜を過ごした。そして翌日、一人が姿を晦ました。

「一人でどうやって帰るってんだ」

「逃げ出した者は放っときなさい」

「それでは依頼に支障が出ますよ?」

「自業自得だ。俺はカケルを支持する」

出発準備の整ったホルスト車が並ぶ前で付き添い達が持論を述べる。グリオーソだけは黙して語らず、渋い顔。

「逃げるなら皆で逃げりゃあ良かったのにな。まあ連れ戻すけど」

《感知》で辺りを見回すと、森の中の木の虚に、体育座りの逃亡者を見付けた。遠くに行ってなくて楽だったぜ。《転移》でこの場に連れ戻す。

「えっ?あっ!」

「お前はもう冒険者じゃ無い。借金奴隷になってしっかり働くんだな」

「誰が買うのよ」

「暗殺者ギルドとかな。精々見張りの下っ端にしかならんだろうが。後は好色家か男娼か」

「売れたらこっちに支払われるのかしら」

「俺に一番入るだろうな。これから食事の度に借金する訳だし」

蹲り、自分勝手な言い訳を呟く男を《結界》で囲い、四号車の中に押し込むと、負の感情が湧き上がる。俺は無視して自分の車両に乗り込んだ。


 馭者の声でホルストが歩き出す。街道に出る迄は車内に居る五人はすっかりお通夜モードである。

「あの、奴隷って本当すか?」

「本当だ。逃亡者は放置か処刑か奴隷落ち。コレは街を出る前から決まってる。逃げ出して、野盗にさせない為だ」

「こう言うのって、ランクの降格とか除名とかが先じゃねーの?」

「冒険者を続けるってんなら降格もあるだろう。けどよ、コレが普通のパーティー遠征だったらどうなる?」

「最悪、全滅も…」

「だな。一人で死ぬのはともかく、パーティーが全滅するのはギルドとしても見過ごせんのさ」

「なら、カケルさん。パーティーメンバーが結託して一人を逃亡者扱いにしたら、どうなるんです?」

「んー、弥一ならどう考える?」

「俺に振るなよ…。逃亡者扱いが戻って来たとして…、疑いを晴らす事になるが…。余程の事が無いと通らんよな?」

「んだ。成り上がるか没落させるか、名前を変えて逃げるか…」

「割と知ってるネタだな」

パーティーから脱退させるにしても円満な方が良いよな。



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