女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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試作

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「カケル様、イゼッタ様、イチャイチャですか?」

「雨具を作ってたんだ」

「そうですか」

 イチャイチャしてると思って飛んで来たテイカだが、そうでない事を知るとそう言って仕事に戻ってく。集合住宅から風呂桶迄、家の補修頑張ってくれている。有難い性奴隷だ。

イゼッタの裾を捲り上げ、中に入って居住性を確認する。

「カケルゥ」

「意外と暗いな。歩くのに支障は無さそうか?」

「ん、手元はみづらい。それに、前で開けたほうがいいかも」

「成程な。バリエーションの一つとして考えとこう」

手間賃が掛かるがリクエストには応えるか。イゼッタの中から出ると、再び笠を作り雑木紙を加工する。浮かせて広げた丸い雑木紙を《伸縮》させ、笠と重り替わりの木っ端を真ん中に置いて伸ばした物を固定するのだが、これだとフリルが大き過ぎるのでもう少し手直しすべきだろうな。
笠をくっ付け覗き穴を切り取りって、その真ん中から一直線に切り離す。

「ボタン作らねば」

「高くなるね」

「お貴族様のボタンは高いだろうけど、庶民のは牙とか棒とかで良いべ」

あまり見ないが偶に居る。それがシルケでのボタンの価値だ。素材より手間賃だと思う。
テーブルに切り口を乗せて、線引きを当てて幅を合わせ、ボールペンで四つの点を打つ。これを両方の切り口に施し紐と棒を用意する。勿論これ等も雑木製だ。

「縫い針持ってないんだよな」

「取り敢えず、くっつける」

「だな」

試作だしそれで充分か。二ドン程に切った棒に穴を開け紐を通す。これを八つ。ソイツを雨具の左側、点の位置に裏表で貼り付ける。右側は紐のみ八ヶ所貼り付けた。

「おもてうら?何で?」

「着てみなされ」

「ん……、ああ~」

表側だけだと布が捲れる事に気付き咆哮するイゼッタ。

「ちょっと、隙間できるね」

「もっとボタンを使っても良いが、着るのに手間だしな」

「いくらで売るの?」

「値段かー。雨降らないと使わんモンに幾ら払えるか、だよな」

困った時は識者に聞くのが一番だ。元商業ギルド職員ならそれなりの値段を出してくれるかも知れない。そんな訳でイゼッタを連れ、直通転移門を使いカロ邸宅へ訪れる。

「ご無沙汰してます奥様」

「カケル様、イゼッタ様いらっしゃいませ。どうぞ客間にてゆっくりなさってくださいませ」

シャリーとアルネスが迎えてくれて、客間に向かう。フラノノはお昼寝休憩だと言うのでそのまま休ませておく。

「それで、今日は奥様連れでどうなさいました?」

「ん。カケル」

「新たに作った雨具を見てくれ。コイツをどう思う?」

新造雨具を取り出して、ソファーの対面に座るシャリーに感想を頂く。

「…一人用テント、ですか?門兵とかには良さそうですけど、武器が持てませんね」

シャリーはテントと評したか。確かに簡易テントに見えなくも無い。

「今日雨だろ?こんな日に外に出歩くとなると、こう言うのが使えるかと思ったんだ」

「んー、でしたら、上の帽子になっている所だけで足りるのでは?体はマントもありますでしょうし」

「街の主婦達はマント着けてないもん」

「主婦?もしかして、今朝も施設に並んでたのですか?」

「ああ、洗濯物を頭に乗せて、雨を凌いでたよ」

「成程。それですと、ポンチョみたいに持ち物を覆えるこの雨具は中々使えそうですね」

「ポンチョだと顔が濡れるから、改良してみたんだ」

「カケル様、私からもよろしいでしょうか?」

お茶を注いでいたアルネスが挙手をして、買い物した時に物が持ち難い事を指摘する。裾から入れなきゃならんしな。

「カケル、アッチも見せて」

イゼッタに言われて前開きのバージョンも取り出して見せる。コッチはフード付きマントの様だと言われたが、アルネスの問いへの回答にはなれたようだ。

「カケル様はコレを増産して売り出したい、と?」

シャリーの言葉に苦味を感じる。俺も近い事は感じているのだ。




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