女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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十倍

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 それから二日経ち、島へと戻って来た。実時間で二日、時短空間では何日経ったのか忘れてしまった。
ママ様の住処に居る間、色んな事をしていた。左目の義眼の違和感に慣れる為、キョロキョロと動かしたり慣れるよう努めたが、結局滑りを《纏う》事で解決せざるを得なかった。同時に使えるスキルが減ってしまったが、龍達から色々付与されたお陰でその問題も解決する事となる。回数制限有りではあるが、義眼に五龍のスキルを封入された。三姉妹とネーヴェからは《結界》。そしてママ様からは《十倍化》なるトンデモスキルが納められた。
この《十倍化》と言うスキル、《強化》の最上位スキルだそうで、人の子で覚えられる者は居ないとされていると言う。そして人程度の力では大した上昇率にならないが、龍が使うと話は別で、《十倍化》したママ様に敵う者は相性的な不利を除いてもそう居ないらしい。居る事にも驚きだが。
そんなトンデモスキルなモンで、勿論リスクもある。それは所謂クールタイムだ。スキル使用後一定の期間、使用者の能力が著しく下がると言うモノで、五龍のクールタイム明けを待つ意味で実時間二日掛けたのだ。
そう、四龍の封入した《結界》も《十倍化》された物である。

そんなトンデモ義眼だが、現在島の皆に見られてて少し恥ずかしい。

「眼帯よりは素敵です」

テイカは眼帯に恨みでもあるのだろうか?見た目で不利を晒す事になるから…と言う事らしいが、メット被ってれば分からんだろ。

「カケル、ごめんなさいなの…」「旦那さま…」

「気にすんな。だが忘れるな?慢心は危険を招くんだ。今回はだいぶ無理したんだからな?」

カラクレナイとサミイはすっかり凹んでしまったが、これからもダンジョン行ったり冒険するには必須の貴重な経験を得られたのだ。次に活かして欲しい。

「カケル、また、行くの?」

「貴方様、ご無理はなさらないで下さい」

「無理しなきゃならん時もあるさ。それに今度は無理な事せずに済むよ。ま、行くとしても食料掻き集めてからだけど」

この二日で俺の食料はおろか全てのおやつを食い尽くされ、リュネの在庫迄底を尽き掛けた。色々集めておかないとならん。空腹と言う敵には敵わないからな。なので明日からの仕事も暫く休ませてもらい、準備を整える事となる。


 そして更に三日経ち、出発の日。島の者全員が見送る中、俺は《転移》した。

そこは数十日振りに見た隠し扉の前。ドーンドゥール地下百一階に直接乗り込んでやった。出発前から義眼に封じられた《結界》を纏っているので精神攻撃なんて屁の河童だ。
隠し扉を慎重に開け、中へと入る。以前《感知》で見たままの通路があり、奥へ奥へと進み行く。そして隠し部屋へ通じるドアの前。しっかり調べて罠が無いのを確認すると、大きく深呼吸してドアを開けた。
部屋の中は遺跡型の部屋になっていて、中央には台座に納められた球体が安置してあった。
俺はその玉を浮かせ、思い切り壁に逃がす。リュネにこの玉には武器越しでも触るなと言われているのでこれくらいしか有効な手立てが無い。
ガツッと衝撃音。しかし丈夫な玉らしく、罅を入れるにも至らない。ゴトリと落ちて、少し床を転がった球体に今度は《散開》を掛けて対面側の壁に打ち当てる。僅かに膨らんだ球体が、壁にぶつかり形を変える。《散開》を解き、三回目にして細かい破片となって崩れ落ちた。どんなに硬くても歪みが出ればこんなモンだ。

精神攻撃の強度が上がったのを感じて警戒を厳にする。砕けた破片の山からは、モンスターが消える時の反応に似た白い煙が出ている。煙が消えて、破片の山が消えて無くなる迄しっかり確認した。

部屋の雰囲気が変わる。空気が変わったと言うか何と言うか。多分ダンジョンコアが死んで、精神攻撃が解けたのだろう。リュネ曰く、ダンジョンコアを破壊すると、ダンジョンに取り込まれていたダンジョンマスターが死に、罠や無限ループ等のギミックは消滅し、魔物やドロップが生成され無くなる。要するに唯の洞窟になるらしい。此処での狩りを生業にしてる奴等には気の毒だが、俺を怒らせたのが運の尽きである。




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