女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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寝た振り

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 すっかり黙りこくってしまったタタールちゃんを捨て置いて、カロは部屋を出て下へ向かう。ハイネルマール商船会社への繋ぎを付ける為だ。本来それをするのは立ち尽くして俯いてるこの子の仕事なのだがな。重苦しい時間を過ごすくらいなら出て行って欲しい。
話をしてて喉が渇いたのでお茶でも淹れるかな。コレもこの子の仕事だったのかも知れん。《収納》の肥やしになってるお茶を使ってしまおう。茶葉を取り出し《散開》で粉にすると、浮かせた魔法水に添加して魔力を当てながら色が出る迄練り練り混ぜ混ぜ。粉を《集結》して排除すると、キレイな黄色のお茶となる。雑木ストローを突き刺して、キンキンに冷えたのを飲む。美味し。
美味いんだが、島でも施設でも飲めないコレは、随分前にクリューエルシュタルトで買った獣人をダメにするお茶だ。
お茶はあっても茶菓子は無い。ルドエで全部食べられちゃったからな。塊の黒糖を口に放り込む。甘し。

「……の癖に…」

ちゅーーーー

「冒険者の癖に!」

シャリシャリシャリ、ちゅーーー

「何で貴方みたいなのが黒糖なんて食べてるのよ!?」

「稼いでるからな」

お茶を飲み干しソファーに体を預けると、目を閉じて体力の温存を図る。反論が来ないと分かると雑音が聞くに耐えない内容になって行く。この子の中での俺は童貞で彼女も居らず、娼館通いする度胸も無い貧乏禿げだそうだ。ソファーに横になろうとした所で暴言が止まる。部屋から出ていたカロの《威圧》で止められたのだ。

「タタール、貴女の居場所は此処にはありません。今日はもう帰りなさい。本部とメルタール、それと貴女の家にも報告しておきます。呼び出しがあるまで出て来ないでください。誰か!何人か来て!」

目を開けたくない。そんな声色。寝た振りしてじっと待つ。ギルマスの怒声に職員が飛んで来て、俺を囲む…おい。

「カケル様じゃありません!この女を外へ!」

「「は、はいっ」」

俺を囲んでた職員が、タタールを引き摺って外へ出た。あの子、漏れてたぜ?

「カケル様…、カケルさまぁっ申し訳ございませえ~んっ」

部屋から職員が居なくなると、カロがソファーに飛び込んで来る。

「女神に吐かれた暴言よりはマシだよ。殺され掛けなかったしな」

「うう、何とお詫びしたら良いか…」

「ギルドやら親やら。自分が偉いとか強いとか。思い込むのは自由だけど勘違いさせちゃいけないな」

「はいっ、徹底させますっ」

「で、ハイネルマールへの繋ぎは?」

「急ぎで行かせました。此方の手紙を商船会社へお持ちください」

推薦状だったり受領証の意味を持つお手紙だが、成り済まし防止の意味が強いらしい。今直ぐ行っても伝令を追い越してしまうので、カロを抱いて時間を潰した。


「カケル様、お待ちしておりました。代表もお待ちですので、此方へどうぞ」

 カロとイチャイチャして時間を潰し、ハイネルマール商船会社へ向かうと、話が通ってる受付嬢に誘われ、執務室へと連れてかれた。

「カケル殿、久しいな。イゼッタ殿も息災ですかな?」

「暫くです。病も無く、皆元気にしておりますよ」

手を差し伸べてソファーへ促すハイネルマールは俺の事をしっかり調べている様子。今回の仕事、単なる護衛では無いのだな。上座へ座らされると鈴を鳴らし、お茶と茶菓子が供された。

「カケル殿のおかげで儲けさせてもらって居る」

「野菜を食べないと体が持たないですからね」

「嵩は張るが、腐り難さが段違いなのが良い。それにあの安い甘味にも助けられて居る。一日一かけで職員の働きが変わったよ」

ビタミンにミネラル、甘さによるリラックス効果って所か。娯楽無く、働き通しの船員は、心に癒しが必要なのだな。
大陸を股に掛ける海運業者なだけはある。水や光の棒、火の鉄板も逸早く導入してコストを抑えて居たそうだ。

「カケル殿に口利きをお願いしたい」

相手を褒めてから本題に入る。商法の基本だな。










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