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循環型社会
しおりを挟む眼下は海だが雪で先が見えない。《感知》で海だと分かったくらいだ。そうして居ると雪に覆われ真っ白の陸に入った。沿岸部は樹木が無いのか、白い砂丘の様だった。が、暫く目を離して眼下を望むと未だ白い大地。針葉樹みたいなのが生えてない。森林限界では無さそうだが、知らぬ間に標高が上がっていたのだろうか。それとも樹木が生えなくなる程ずっと寒い地域なのか。
目を瞑り、体力の消耗を抑え、漸くして動きが止まる。ノーズコーンを仕舞って辺りを見渡すが、何も無い。あるのは白い景色だけ。俺は何を孕ませれば良いんだ?《感知》を張り巡らせながら地上に近付き、それらしい所を見付けた。見え難い感じで穴が空いてる。雪が積もったら完全に隠れてしまっていただろう。目視だけでは全く気付かなかった。《感知》で岩石だけを見えるようにして、空洞と入口を見付けられたのだ。
洞窟?の入口に立ち、そこが湖だと知る。凍った湖の縁に、人が腹這いになって漸く入れるような隙間が空いていた。だが、腹這いで入れるのは普通の人だけだ。俺の場合、アイツが居るので不可能に近い。なので凍った湖面を《収納》して侵入を果たす。
洞窟内は、入って直ぐに競り上がって水を止める様な形になっており、そこからゆっくりと下って行く。大きく弧を描き、螺旋階段のような坂を下って行く。生き物は、虫とネズミみたいな奴程度。循環型社会を形成しているようだ。
螺旋の坂を降り切る頃にはスースーシパシパしていた開口部の感覚が消えていた。地熱?小手を外して確かめる。寒くは無かった。外の大雪に比べれば此処は天国だろうな。
洞窟の奥に仄かな明かりが見えたのは、小手を外して直ぐの事。小手の色が見えて気付いた。定番のヒカリゴケか、それとも光る幼虫か。マグマ程には暑くも無いし…と、好奇心だけで先へと進むと、突然現れる圧倒的な風景に目を奪われた。
先が見えないくらいの広さに、底の深さは遥か遠く。そんな感じの巨大空間に石と瓦の構造物。高い塔が聳え、広い建屋がある。そして植物だろう緑が生え、そこに人の営みがあった。人が居るのだ。
落ち着いて、魔力で見る。大丈夫、普通の人だ。人化した龍の里だったりしたらリュネに何言われるか分かったモンじゃ無いからな。洞穴から体を出すと、下へと降りて行った。
植物はよく見るとデカいアシタバのような、イタドリのような…ウドだ。ウドに良く似た植物が至る所に生えていて、デカい奴は木化してる。上から見た植物はウドっぽいのが木化した物であった。地表にもウドモドキ。小さいヤツは食えそうな見た目。四足の猪みたいのが食ってるし、多分食えるのだろう。
「コーラーーッ帰って来なさーーいっ」
呼ばれているのは俺では無さそうだが、ウドモドキを掻き分けて、誰かがこっちに駆けて来る。
「コーラー、牧場に帰るよー」
呼び止めたのでは無く、名前だったのか。紛らわしい。炭酸飲料みたいな名前の猪モドキは我関せずでウドモドキをモリモリしてて、主人らしき女の声に耳を傾けようとはしない。まあ家畜なんてそんなモンだ。女が近寄ってって家畜を押したり叩いたりするが、だいぶ大人しい生き物のようだな。
「え?誰?」
女と家畜の遣り取りを見ていたら見付かってしまった。薄ら青い皮鎧なんて着てるからだな。
「俺はカケルだ」
「え!?声低っ」
驚く所、そこか?
「その四足は家畜なのか?」
「耳にタグ付けてるでしょ?見えないの?」
「離れてるしな」
「貴方何者?何処から来たのよ」
「んー、迷い人だな。外から来たんだ」
迷っては無いが、そう言う筋で行こう。
「え…」
だが女は俺の言葉を聞いて固まってしまった。
「どうした?もしかして外から来た者と口聞いたりしたらダメだったか?」
「…だって、外人種は私達を殺すって…」
「しないよ。特に敵対されなきゃ普通そんな事しないって」
まあ、殺すにしても色々ある。直接手を下さなくても風土病を持ち込んだりする事もある。一応全身《洗浄》しとこ。
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