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やっぱり貴族はろくでなしばかりだ。

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 勝手知ったる尋問室に連れられた俺は、捕縛された小太りに睨まれる。

「ぐぎぃいいっ…」

「ゲイン君、威圧を解いてね!話終わらないから」

「で?何の話?」

「仕方ないなぁ、それじゃあ始めるよ?」

 朝の襲撃の話と、小太りに家を取られそうになった話をして欲しいと言うので包み隠さず答えてやった。

「嘘は無いようです」

 水晶玉の反応を見て真実であると報告をするのはマーローネだ。

「ゲイン君が退治した3人、此奴の配下だと思うかい?」

「思う。同じ仕様の鎧だし、そう考えるのが自然だよね」

「ジョン・ジョルタン、答えよ。死んだ3人は何者か?」

「…リッケ・ハインマン、ヨクト・トワソン・ニジュー・サントン。いずれもわたくしの配下の騎士でございます…」

「騎士だったのかよ。騎士章着けてないのに」

「安心すると良いよ。名乗り無く攻撃を仕掛けて来たのだし、騎士爵なら問題無いよ。攻撃を仕掛けて来た方が問題だけどね!」

 貴族殺しに冷や汗をかいたが、騎士爵はギリセーフらしい。細かい事はわからんけどね!

「答えよ。シャミノフとは何者だ?」

「…商業ギルドの職員として、紛れ込ませた間者でございます…。情報を得るために使っておりました…」

「答えよ。4人に何を命じた?」

「…衛兵に捕えられたアンテルゼを奴隷にした冒険者の住処を下見させておりました…。アンテルゼ以外は、見掛けたら殺せとも命じましておりました…」

「応えよ。なぜこの街に来た?」

「…アンテルゼを手に入れる為でございます…。性奴隷として飼うつもりでございました…」

「答えよ。ゴモラン家から何と言われた?」

「…連れ戻したら領地だけでも返せと言われました…」

「性奴隷として飼うつもりだったのは何故か。答えよ」

「…領地など、返すつもりはありません…。アンテルゼを犯したかったのでございます」

 何が犯したかったでございますだ。こんな奴を殺しても罪になる国の法は間違ってるな。

「ゲイン君、こう言う馬鹿が居るから、僕の家みたいな貴族殺しが必要なんだよね。正式な手順を踏めば、君は諦めるしか無かったよ。此奴が馬鹿で良かったね」

 そうだな。コイツが真面なら、幾許かの金を払われてアイツを手放す事になっただろう。もっと早く来ていれば、俺も抵抗しなかっただろうな。

「ジョン・ジョルタンに命ずる。アンテルゼ・ゴモランはダンジョンにて消えた。追って持たす書状をゴモラン家に渡すと共に、その事をゴモラン家に伝え、自害せよ」

「…承りまして、ございます…」

 自害まで命令できる契約ってどんだけだよ。奴隷契約だって自殺させる事はできないんだぞ?

 小太り共が連れ出され、ギルマスと2人きりになってしまった。まだ帰っちゃダメなのか?

「ウチから出来る事はここまでだよ」

「それは、今度は親が来るって事か?」

「多分来ないよ。僕が居るってわかると、貴族って奴らはとりあえず隠れようとするからね!」

「ならしばらくは休みが取れるな…」

「引退してウチで働いても、良いんだぜぇ~?」

 良いんだぜぇ~?の部分だけ良い声出してるが、キモいんだぜぇ~?

「探索依頼の報酬を有耶無耶にする気だな?」

「それはちゃんと払うよぉ。メロロアからの報告書は見たよ。ヤバいねアレ」

 進行するのにスキルが無いとダメなダンジョンは確かにヤバい。報酬もヤバいが。

「あそこは完全に許可制になるね。必須スキル教えてよ」

「んー、物理的な盾が必須。タワーシールド、これ絶対」

「そうだね!」

「ダンジョン内で拾う事もできるけど、壁歩き。俺達はそこで引き返したけど先に行くなら絶対必須」

「小銭稼ぎならそこまで行けば充分かな?」

「罠があるので感知系スキルは欲しいね。で、マジックバッグとマジックボックス」

「それはお金かかるね!」

「問題は使い方なんだよ。この間小石を飛ばして見せたよね」

「アリはそれで、楽して稼いだそうだね」

「ダンジョン内の壁を切り取れる技術があるって事が、入場の前提条件になるんだ」

「いたる所に壁破壊必須の場所があるんだってね」

「誰かの後ろからそっと入ると、深夜の更新で壁が直ると出られなくなる。ヤモリで稼ぐなら板状に切り出したり穴も開けられないとね」

「どうやって許可を出そうか、今から頭が痛いよ」

「最後に感知系スキル。俺は探知と察知を持ってるけど、メロロアのスキルもすごく役に立ったよ。2人でチェック出来るのは安心できたね」

「ふんふん。所でドロップの買い取りはまだなんだよね?」

「まだ仕分けしてないんだ。そう言うのをもろもろやろうとしてた所にアレが来たからなー」

「なるべく早く持って来て欲しいな」

「あまり売り物は多くないと思うよ。チップとか薬品は使うしね、箱とかさ」

「そのなんだけどさぁ…」

「売らないよ?パーティーの共有財産だからね」

「えーーー。それならチップのでも…」

「普通は買えないでしょ?うちのパーティーはそうじゃないと信じたいけど、もし俺以外にマジックボックスを使わせて、トンズラこかれたら馬鹿みたいじゃん。それに、貴族のステイタスで持ち腐れするより冒険者が使った方が有益だよ」

 全員金箱持ちとは言わないし、共有財産だと言ったのは嘘ではないが正しくない。まだ仕分けされてないから売る事は出来ないのだ。それに便利だから売りたくない。野営道具を入れて、キャンプの時にそれを出しとけばみんなで取り出しながら作業できる。各自のマジックバッグに分割して持たなくて良いし便利なのだよ。

「ギルド証、凍結しても良いんだよねー」

 ギルマスの目付きが変わった。けど威圧ではなさそうだ。貴族殺しは平民も殺すつもりなのな。

「所詮は貴族か。どこか遠くで開墾でもして暮らすかな」

「メロロア」

「はい?」

 誰も居ない場所からメロロアが湧いて出た。

「ソレに封印の枷を着けろ」

「は?嫌ですよ。ゲインさん、何があったんですか?」

「マジックボックスよこせってさ。嫌ならギルド証凍結だって」

「マジですか!?マスター、目先の欲に囚われると死にますよ?」

「俺が死ぬかよ!」

「猫被ってたのか。所で何で死ぬんだ?俺そんなに強くないぞ?」

「まあ見ててください。グリューネワルターナイトは悪い事しちゃいけないんです。マスター、人の物を盗ろうとしたり脅迫するのは犯罪ですよ?」

「ギルドが買い取るだけだ!」

「マスターの懐に入れるんですよね?横領も犯罪ですね」

「金も払っうぎいいいいいあああっ!!」

 威圧か?もちろん呆気に取られていた俺じゃない。マーローネやメロロアでもなさそうだ。部屋には俺とコイツと職員2人だけのはず。まさか遠距離から威圧を狙い撃ちしてるのか?

「横領未遂に恐喝未遂、そして脅迫。誠に許し難し」

「え?」

 気付くと俺とアイツの真ん中辺りに真っ白な服を着た人物が発生した。声の質からすると女だろうか?メロロア並の、いや、メロロア以上の瞬間移動だな…。

「なぎぇあががぁっ!!」

「反省せよ」

「え?」

 消えた…。白い服の人物と共にアイツが消えた。目の前にいた2人が一瞬でシュッて…。

「め、メロロア…」

「ゲインさんも、悪い事すると白い服の人に連れてかれちゃいますからねー。良い子にして私を娶ってください」

「俺、街を出ようかな…」

「冗談です。お友達からで良いので仲良くしてください!」

「いや、出るよ。ダンジョンは美味いけど、ここの街のギルドにはもう関わりたくない」

「ふぅ…。依頼報酬は出ています。振込みよりお持ちになった方がギルドにダメージを与えられますよ」

 ため息混じりのマーローネの言葉に乗っかる事にする。

「ダメージはともかく、凍結されたら敵わんからな。全額引き落とすか」

「では準備しますのでいつもの部屋でお待ちください」

 いつもの部屋に向かい、部屋に入って椅子に座る。苛立ちより虚無感で思考が止まりそうだ。何リット経ったか、ようやくドアがノックされ、メロロアとマーローネが入って来た。

「お待たせしました」

「待ってた」

「この度はギルドマスターの軽率な行動により、ゲインさんに多大なご迷惑をおかけいたしました。ギルドを代表してお詫び致します。申し訳ありませんでした」

「私も報告であるとは言え、貴族が欲しがる物の存在を明かしてしまい申し訳ありませんでした。まさかあの人が欲しがるなんて、思ってなかったんです」

「メロロアは迂闊だったな。けど仕方ない、か…」

 本の事は黙っててくれたし、ある意味カモフラージュになったのかも知れない。黒板に書かれた報酬額を見て、その場で了承する。

依頼達成料 3000000ヤン
総額 3000000ヤン

 ミスリル貨30枚を受け取り、6枚をメロロアに渡すためテーブルに残した。メロロアは突き出した両手を振って受け取りを拒んだ。

「ゲインさん、これは受け取る訳に行きません。ゲインさんのパーティーへの出向が終わってから処理された物ですので、お納めください」

「報告の内容は出向中の物だ。受け取って欲しい。それより、ギルド証の金は全額降ろせそうか?」

「申し訳ありません。現在ゲインさんの預金の半分程しか出せない状態です。理由は今目の前にあるお金と併せて1000万程しか無いためです。タララさんとお二人で持ち込まれた金を売り渋った事も原因の1つですが、この判断は間違って居ないと思っています」

「貴族に集られる、か」

「はい…」

 マーローネの言葉は間違っては無いだろう。ダンジョンが2つもあって、金まで出る土地だ。バレるまでギルドが保管したくなる気持ちは分かる。

「分割して払う事は可能ですが、ゲインさんにはその都度街に来て頂かねばなりません。それに、お金の保管は大丈夫ですか?」

「マジックバッグに入れるからまあ、大丈夫だろ」

「そうでしたね。では今日端数分をお支払いして、来月から月に200万ずつお支払いするのではどうでしょう?」

「分かった。端数分を用意してくれ。それと、タララの分はどうする?アイツに聞いてからになるが」

「はっきり言いまして、ゲインさんと同じペースですと、1年ほどかけて、やっと払い切れるかと」

「ギルドって預金業をしないとすぐ倒産しちまうな」

「家を買われるとギルドは借金する事になりますね」

「商業ギルドと貸し借り合いだろ?損しないよな」

「立場の上げ下げがありますから、下がり過ぎるのは問題なんですよ」

 いつの間にか居なくなってたメロロアが、金を持って帰って来た。522693ヤン。これが俺の預金の端数だそうだ。7ヤン払って鉄貨分を0にして受け取った。
報酬はミスリル貨24枚。メロロアは断ろうとしたが、60万なんてすぐ稼げると言ったら渋々受け取っていた。


 帰宅して夕方。結局外には出られなかったな。門にブロックが詰めてあるのをよじ登り中に入る。

「お帰りなさいませ、ゲイン様」

 玄関前にはカウモアが待っていた。探知系スキルに反応したのだろうな。

「ただいま。嫌な事があったよ」

「まずは着替えてお風呂にどうぞ。夕飯の支度をしていますので」

「手伝うよ」

「ゲイン様はいつも最後に入るのですから、たまには1番に入ってください。アントルゼも私も、タララ様も、心配していたのですよ」

「…分かったよ」

 厨房で料理に勤しむ2人に声をかけ、一番風呂を堪能する。心を無にして、体を擦った。


「…で、預金を降ろして来た訳ね」

 夕飯を食べながら、みんなにギルドでの出来事を報告した。

「すぐにでは無いが、街を出ようと思う。月に一度は戻って金を降ろすつもりだが、タララはどうする?」

「あたい、持ち切れるかなぁ」

「確かにな」

 タララの預金額は知らないが、少なくとも2000万はある訳で、ミスリル貨200枚。持てない量では無いがプレッシャーに負けそうではあるよな。

「新しい街に預け直すだけだよ。ずっと持ってる訳じゃない」

「んまあ、それなら、なんとか…」

「俺だって持ち続けるのは嫌だしな」

「街を出るまではどうするつもり?」

「ダンジョンで熊でも狩ろうと思う。アントルゼには熊とアリを100枚ずつ使ってもらいたい」

「いつまでも非力じゃいられないわよね。私はそれで構わないわ。みんなは?」

 手を挙げてカウモアが発言の許可を待つので目配せで了承を伝える。

「テントの受け取りを待つのも良いかと。装備の受け取りもありますので」

「そうだな。家を直すのもあるし、遠征の準備をするのも必要だよな」

 門の囲い、遠征準備、解約手続き、ダンジョン遠征、街移動。ここまでは決まった。

「タララよ、どこか行きたい都市はあるか?」

「国内?国外?」

「どっちでも良いぞ?」

「鉱山都市グェッテルラントとか、どう?」

「どこだそこ?タララの故郷か?」

「違うよぉ」

「2つ隣の国の街ね」

「この国、ベルクハウツ王国の北西、タンドラス帝国を越えた先にあるミート連合国の都市の1つです。連合国であるので、都市1つ1つが小さな国と言って良いでしょう」

「遠そうだな」

「ダメかな?」

「月一で帰るには遠いと思うが…」

「少なくとも、馬車が居るわね。大雑把だけど、国を跨ぐのに一月はかかるわ」

「預金には、その街のギルドに縛り付ける意味合いもあるのか…」

「街を出るにしても、明日から稼ぐ分のドロップはギルドには卸せませんね」

 中々骨が折れるなこりゃ。

「ん~。グェッテルラントは諦めるよう」

「いや、目的地をそこにして、途中で行ったり来たりして行けば良いんじゃないか?俺の引出し額は月に200万で5ヶ月。ギルドに1000万あるならタララは400万引き出せば良い。2000万なら同じ5ヶ月だ。隣の国に籍を置いて、こっちで稼いであっちで買い取り。俺達のカバンになら入るだろ」

「なるほどね」

「良いお考えです。所でタララ様はなぜグェッテルラントを知っているのですか?」

「え?あたい鉱山育ちなんだけどさ、鍛治のおじさん達がよくゆーの。グェッテルラントの鍛冶屋はスゲーって。そんだけ」

「何がスゲーなんだ?」

「金属加工だよ。あと彫金も」

「それなら私も知ってるわ。ドワーフの鍛冶と彫金はそれはそれは見事なのですって」

 目をキラキラさせておる。けどドワーフってだけで0が1つ2つ増えるって聞いた事があるぞ?

「さぞやお高いのでしょうなぁ」

「高いわね。けどヘナチョコ貴族には売らないのよ」

「武器は使う者を見て、装飾品は着ける者を見て作るのだそうです」

「そなの。あたいにはどんな盾かなーっとか、子供の頃よく想像してたんだ」

「みんな詳しいなー」

「育った環境が違うだけよ。ゲインだって色々詳しいじゃない」

 大目標が決まった。鉱山都市グェッテルラントへの長期遠征だ。
 夕飯を食べ終えて、女達を風呂へ送って俺は食器等を片付ける。魔法を使えば一瞬だ。


 部屋に戻って忘れかけてたドロップの確認しながら紙に書いて行き、部屋がドロップアイテムで埋まってく…。

箱 33 33000ヤン 箱中 1

棒 78 390ヤン
石 51 255ヤン
ナイフ 28 140ヤン
ダガー 30 150ヤン
剣S 14 14000ヤン
ウルフ 4 20ヤン
カラードウルフ 8
グラスベア 8 12000ヤン
ラージアントワーカー 1120 1680000ヤン
ラージアントクイーンRa 1
ドクハキヤモリ 231
頭 28 140ヤン
体 21 105ヤン
腕 20 100ヤン
脚 24 120ヤン

ポーション 23
ミドルポーション 10
アンチスタン 5
アンチポイズン 12
アンチカース 3 1500000ヤン

ゴブリンナイフ 24 1200ヤン
コボルドナイフ 32 1600ヤン
コボルドソード 1 5000ヤン
コボルドマント 8 20000ヤン

未鑑定リング 20
未鑑定ネックレス 9

マジックボックス 1
スキル目録 1

金 153533ヤン

 箱。取るに取ったり33個+中箱1個。部屋が狭いぜ。これはパーティーで分けるので、メロロアには6600ヤン出す。
 鑑定して気付いたが、ウルフとカラードウルフのチップは別物だった。よく見ると尻尾の形が違うが、落ち着いて見ないと分からないよな。
 クマのチップもグラスベアのチップだそうだ。今まで使ってたチップも名前が違ってたりするのだろうか?
 エリートコボルドが落としたであろう剣のチップは銀だった。雑魚のクセに良いモン落としやがる。
 虹色に輝くアリのチップがふつくしい…。コレクションしたくなる気持ちが分かるよなぁ。
 
 ポーション類は全てパーティー資産とする。もちろんマジックボックスもだ。スキル目録は門外不出である。

 分かる範囲で値段も書いてみたが、ラージアントクイーンとカラードウルフの値段は分からない。それと、鑑定を使う前により分けたアクセ達。アクセサリーはアントルゼ達と一緒に見る事にして、女王アリとカラードウルフの鑑定を…目録で見れば良いのか。

カラードウルフ 噛み付き N/R/SR ☆☆☆
効率よく噛み付く為のスキル。
攻撃速度と命中が増し、無駄な動きを抑える。歯の強度が増す。

N 極僅か
N☆ 僅か
N☆☆ 少し
N☆☆☆ 中程度
R 僅か
R☆ 少し
R☆☆ 中程度
R☆☆☆ 大幅
SR 少し
SR☆ 中程度
SR☆☆ 大幅
SR☆☆☆ 極大
出現場所 ダンジョン宝箱。ダンジョン内。

ラージアントクイーン 肉体超強化 SSR ☆☆☆
肉体に関わる能力を強化するスキル。
体力、腕力、知力、早さ、脚力が増す。

SSR 大幅
SSR☆ 極大
SSR☆☆ 超極大
SSR☆☆☆ 絶大
出現場所 ダンジョンフィールドボス。地上及び地下80階以降エリアボス。

 カラードウルフはやっぱり噛み付きだった。まあ、ウルフだし、そんなもんだろ。使うのは金額を纏めてからにするので普通のウルフと合算されるのか、それとも別になるのかは分からない。
 ラージアントクイーンは値段が付けられないが、500万以下は絶対にありえない。1つのステータスが上がる物でも100万なのだから、5つのステータスが上がるなら当然500万以上だろう。それにSSRのみの存在なんて初めてだ。使いたくても使えない、ブラウンさんの気持ちが痛い程分かる。これも封印かな。ブラウンさんが使ってるゲル版が欲しい。

 ブラウンさんと言えば、まだ検品してない1000枚セットがあったんだった…。うん、今日は寝よう。


 目覚めて雨音に気付く。みんなの雨具、用意しなきゃなー、なんて思いながら目を閉じて深呼吸しているとカウモアが起こしに来た。言付けがあると言うので聞くと、俺が寝てる間に業者の人が来て、今日は雨なので仕事は晴れた後でする、と言う事だった。ゆっくり出来るのでこちらも助かる。起きて身形を整えて、飯を作りに行こうかね。
 薄ソーサーと、乾燥野菜と塩漬け肉のスープを作る。漬け込んでた肉を干し忘れたので軒下の板に並べて干さなきゃヤバい。

「そんな狭い所じゃなくてお風呂でやったら良いじゃない」

 アントルゼの言ももっともだ。木材を収納して風呂場に向かい、並べた木材をウォッシュ!……また溺死しそうになったよ…。今度は木材が俺を殺しに来てたのでかなりヤバかった。息を止めて体を丸めて50ピル。攻撃を喰らわなかったのは運が良かったのに他ならない。
 木材を並べ直して肉を並べ、デリートウォーター。ひっくり返してもう一発。ちょっと硬めの干し肉になった。やっぱり二発目はタララのデリートウォーターが良いな。

「ゲインん~?顔洗った?」

「顔所か風呂場ごと全身洗っちゃったよ」

 目ヤニでも付いてたのかな?

「それなら一声かけなさいよ。洗濯したかったのに」

「ウォッシュが暴走したんだよ、諦めれ」

「1度は経験してみたいわね」

 やめとけ冒険者じゃあるまいし。

「皆様、配膳が終わりましたよ。お席にどうぞ」

「「「はーーい」」」

 スープに入れた茹で肉が、塩味があって美味い。朝食を食べながら、今日の予定等を話す。

「アクセサリー、そんなに拾ってたのね」

「ゲイーン、1人で鑑定しちゃえば良いのに」

「鑑定出来ても値段までは分からないからなぁ。アクセサリーの類ならアントルゼの方が詳しいしな」

「売値の分からない物は後回しにしても良いのかと。お金には余裕がありますし、私はゲイン様から離れませんから」

「あたいも!」「まあ、私も?」

 朝食を片付けて居間に集合。横倒しにした箱を4つ並べてテーブルにして、みんなで囲む。タララ寝るな。
 テーブルにザラザラっとアクセを乗せて、並べてく。

「だいぶ使用感がありますね」

「お風呂と一緒にウォッシュしたら良かったわね」

「小さい箱があるから2人で洗ってみてくれよ。2回もかけりゃピカピカになるだろ」

 箱中を出してカウモアに渡す。左右に熊牛、正面にアリなのだ。

「中身に集中するのね?」「頑張りましょう」

「「ウォッシュ」」

 洗い終えるのを待って、みんなの前に青く光る硬貨を置いた。1人6枚。

「それも洗いたかったわ…」

「ドロップではありませんよね?」

「調査依頼の報酬だよ。タララ、起きれ」

 テーブルに乗ってる6枚をチャリチャリ鳴らすと熊耳がピクピクしてる。なんか可愛い。

「ミスリルの音がするぅ」

「そーだぞー。見つけると大人に取られちゃうヤツだぞー。早く仕舞えー」

「あ~い…………って!ミスリル貨じゃん!?」

「早く仕舞え~」

 みんなが財布に仕舞ったら、アントルゼがアクセサリーを並べだす。

「どれもミスリル貨1枚分にもならないわね。効果は分からないけど3000から…まあ、8000って所かしら」

リングA 8000
リングB 7000
リングC~G 4000
リングH~M 3500
リングN~T 3000
ネックレスA 7000
ネックレスB~G 5000
ネックレスHI 4000

 アントルゼはこんな安物わかんないわよ、なんて言いつつも、このように見当をつけた。石の具合と使用感に名前の有無、前回の買取価格を参考にしたそうだ。

「金持ちの持ち主が居れば良いけど、ドロップだし、未開のダンジョンだから期待薄だな」

「効果次第ね。良いの付いてたらもらうわよ?」

「体力と脚力だな、分かった」

「あたいはゲインが作ってくれるのがい~」

「俺は彫金師じゃないぞ。ドワーフにでも作ってもらわなきゃなー」

「「そう言う意味じゃないの」よ」

「その時は長剣をお願いします」

 カウモアのが一番高そうだ。とにかく鑑定してみよう…。


光のリング 8000ヤン
光系魔法の魔力消費を抑える。
水のリング 7000ヤン
水系魔法の魔力消費を抑える。

知力のリング×3 12000ヤン
命中のリング×2 8000ヤン

傷あり体力のリング×3 10500ヤン
傷あり知力のリング×2 7000ヤン
傷あり命中のリング 3500ヤン

石無し体力のリング×2 6000ヤン
石無し知力のリング×3 9000ヤン
石無し速さのリング 3000ヤン
石無し命中のリング 3000ヤン

水のネックレス 7000ヤン
水系魔法の魔力消費を抑える。

魔力のネックレス×6 30000ヤン

知力のネックレス 4000ヤン
命中のネックレス 4000ヤン

「こんな感じになったよ」

 紙に書き出すと、アリと牛が覗き込む。熊は俺の腿を枕にしようと少しずつ近付いて来てる。

「石付いてなくても効果はあるのね」

「水魔法の付与は当たりですね」

「光系魔法ってどんなか分かるか?」

「ライトやヒール等です。聖職者や治療師が持っていますね」

「あの時はお世話になったわ」「俺もー」

「ねー、水のアクセさー、ゲイン着けたら?」

 俺の膝にあごを乗せたタララが言う。

「着けるならタララも着けて効果を比較してみよーぜ」

 髪をワシャワシャしてやると嫌とは言わなかった。ワシャワシャ。

「命中はタララね。指の数足りてる?」

「両手とも5本あるよ」

「装備できる場所の事よ?全部の指に着けると指を痛めるわ。リングは親指含めて3つね」

「以前、ネックレスを100本くらい着けてる貴族を見ました。効果は重複するらしいのですが、陰では首だけ鎧様と呼ばれておりました」

 俺は水のリングと水のネックレス。タララは命中のリング2つと命中のネックレス。アントルゼは傷物の体力のリング3つを着ける事にした。

「カウモアはどうする?」

「私は特に。またチップも買うでしょうし、お金にしたいと思います」

「ああ、チップで思い出した。カラードウルフのチップ使わなきゃ…」

スキル : 噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き

噛み付き : 効率よく噛み付く為のスキル。攻撃速度と命中率が少し増し、更に少し増し、更に極僅かに増し、無駄な動きを少し抑え、更に少し抑え、更に極僅かに抑える。歯の強度が少し増し、更に少し増し、更に極僅かに増す。

 やはり重複だった。5ヤンな。紙に書き直す。

カラードウルフ 7 35ヤン

「5ヤンって事は噛み付くチップなのかしら」

「ああ。噛み付きが極僅かに増したよ。アントルゼ、アリ100枚使おうか」

「雨の日が恨めしいわ。後99枚?15万ヤンなのよね?」

「パーティー資産扱いにするからタダで良いぞ。さっきのアクセサリーもな」

「丼勘定はしないんじゃなかったかしら?」

「アントルゼが強くなれば、自然と儲けも増えるってねー」

「仕方ないわね…」

「アントルゼ、はしたないですよ」

 99枚数えたら、寝転がって千切りだした。俺は999枚使うから、さすがに金を払おう…。1498500ヤン…、高いな。




現在のステータス

名前 ゲイン 15歳
ランク C/E
HP 100% MP 76%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス

鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き

水魔法☆ 水魔法
ウォーター
ウォッシュ
デリートウォーター
ウォーターバレット
ウォーターウォール
ボーグ

土魔法☆
ソイル
サンド
ストーン

火魔法
エンバー
ディマー
デリートファイヤー

所持品

鉄兜
肩当
胸当
腰当
上腕当
ゲル手甲
ゲル股当
脛当
鉄靴

革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボンE
皮の脚絆
耐水ブーツ
耐水ポンチョ

草編みカバン
草編みカバン2号
布カバン
革製リュック

木のナイフ
ナイフ
剣鉈
剣鉈[硬化(大)]
解体ナイフ
ダガー
革製ベルト

小石中391
小石大344
石大☆20

冒険者ギルド証 10,522,693→10,000,000ヤン

財布 ミスリル貨11 金貨2 銀貨14 銅貨18
首掛け皮袋 鉄貨24
メロロア分 6600ヤン


マジックボックス
各種お宝
 
冊子
筆記用具と獣皮紙
奴隷取り扱い用冊子
寸胴鍋
大鍋
ヤカン
お玉
コップ

カトラリー

五徳
木ベラ
籠入り石炭0
石炭90ナリ
洗濯籠
蓋付きバケツ大
多目的板
蓋の無い箱
敷物
ランタン
油瓶0.6/0.8ナリ
着火セット
翡翠特大

中古タオル
中古タオル(使用済み)
中古パンツ(使用済み)
パンツE
ヨレヨレ村の子服セット(使用済み)
サンダル
革靴E
街の子服AセットE
街の子服Bセット

スキルチップ
ウサギ 3022/4391
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 2056/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 1742/2859
ハチS 0/1
カメ 2000/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 4/1861
石S 0/1
スライム 1023/2024
鳥? 213/1360
トンビS 0/4
サル 715/857
ウルフ 19/1070
カラードウルフ 0/1
ワニS 0/1
グラスベア 0/1
ラージアントワーカー 0/1
蝶 0/204
花 0/161
腕 440/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 549/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 475/576
体 422/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 526/627
ナイフ 128/520
ナイフS 0/1
短剣 12/232
短剣S 100/100
鎧S 0/1
袋S 0/1
箱G 0/1

水滴 157/394
水滴S 0/1
立方体 175/275
火 3/4

魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
ドクハキヤモリ 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
眼鏡S 0/100
眼鏡G 0/1

未鑑定チップ 1000
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