±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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5 故郷へ…

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 売れ残りと聞いて2人は大した物ではないと予想した。だがアウディーが持ち帰った売れ残りがテーブルの上に山となると2人は目を輝かせた。

「うん、お土産だね。旦那様愛してる」

「コレは、飾りたくなります」

 背嚢いっぱいの宝石と装飾は普段宝石等に頓着しないサリューテですら喜びの声を上げた。頓着して入牢したジョムは再び執務室を飾りたくなってしまった。

「換金するまで飾ってても良いぞ。結局マジックバッグは取れなかったからな、また行くだろうし他のダンジョンにも行かねばならなくなった」

「売ってないの?」

「街にもダンジョンにも目に出来なかったよ。普通の冒険者では入れぬような場所にまで潜って、な。俺の運が悪いのか、隣街では拾えないのか」

「商人に繋ぎを付けましょう」

 出来れば自分でと思っていたが、取れない物は仕方ない。外見は実用性を重視して、容量は問わないと言う条件でジョムに依頼した。

「旦那様、お宝はどこに置くの?」

「棚の上にでも並べて置けば良いさ。ここに商人を呼ぶのなら買ってもらえるだろうしな」

「そうだね。この街現金がないのよ」

「でしたら陳列棚を用意させましょう」

 飾りたい欲の再燃したジョムに任せる事にした。サリューテも同意したが、彼女は売り物と考えているので棚がスカスカになる前に補充する事になりそうである。

 1日ゆっくり寝て過ごし、アウディーは街の整備に手を付ける。以前二本の谷を暗渠にして畑を作ったが、はっきり言って全然足りていない。谷を暗渠で塞いだのは向かいの山を切るつもりであり、アウディーは畑仕事をする貧民を眺めながら西の山へ向かう。

─山を切るのはともかく、木を捨てるのは勿体ないな─

 山頂に登ったアウディーは《基礎魔法》の《風生成エアロ》で周囲の落ち葉や柔らかい土を吹き飛ばすと強者の剣で木を斬った。

「はは、片手剣では奥まで届かん、か」

 強者の剣の斬撃は、太い幹を滑るようにすり抜けた。周りの草が斬れて舞う。だが木は動かない。斬れてはいるが、奥まで斬れてはいなかった。刃渡りが足りなかったのだ。反対側に回って再び斬り付け押し倒すと、枝を落とし、斜面を滑らせ暗渠まで下ろした。

「旦那、木こり仕事ですかい?」

「ああ。山を切ってやろうと思ったが、木を捨てるのも勿体なくてな」

「そんな事気にしなくても勝手ににょきにょき生えて来ますぜ?」「頑張っても明日にはモサモサですよ」

 アウディーは新たな気付きを得る。魔力に満ちた森の木は、たったの1日で芽が伸びて、10日もすれば樹冠に届くと言う。敢えて植林をしているのは真っ直ぐ伸ばすためであると続けられた。下ろして来た丸太を見て、その歪みを確認する。味があると言えば聞こえは良いが、直線と円を好む貴族の屋敷には使えまい。

─斬るなら一気にしなければ、か─

 アウディーは試してみる事にした。山頂に戻ると柔らかい土を吹き飛ばした地面を減らす。残ったのは石と木と草。突然支えを無くした樹木が未だに根を張る木に支えられてゆっくりと倒れた。

─土と指示したからか、砂や石が残ったか─

 枝と根を斬り外し、丸太は斜面に落とす。大きな石は暗渠まで転がってしまうと思い、肩に担いで山を降りた。

「今度は石ですかい?」

「流石に石は生えてこないだろう?」

「坑道から毎日出てますよ。それだけ大きい物はありませんけどねぇ、うふふ」

 笑われてしまったアウディーは、石を暗渠の端に置くと再び山へと向かって行った。

─鉱山の隣であればソレっぽい物が出るやと期待したのだがな…。そう上手くは運ばんか─

 山の麓、暗渠からは然程も離れぬ場所に立ち、目の前の斜面から土を減らした。山が消え、空から樹木と落ち葉に草、砂や石も落ちて来る。流石にこの規模の音と衝撃に気付かぬ者は少ない。

「おい…山が、消えちまったぞ」「たまげたねぇ」

 畑仕事をしていた貧民達もアウディーの仕事していた事に驚き、声を上げ集まった。









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