愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ

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本編

11-3

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「メルヴィーナ!…メルヴィーナ…!」

 赤黒いものが滴る冷たい手で、私の頬に触れた彼女は、一言呟くとその眼を静かに閉じた。する…と力なくか細い腕が落ちる。
 呼びかけても反応がない妻に絶望する私をよそに、視界の端で組み伏せられる男の陰が映った。

 ラルフレート卿が、呆然とする長髪の男の腹を地に叩きつけ、背に回した腕をぎりぎりと可動不可能な方向に捻り上げていた。

「シルヴェスター様、傷を確認しなければ…!あちらに、宿屋があります…!」

 男の背に乗っているラルフレート卿が顎で方向を示す。

 震える手を鼓舞するように一度握りしめ、腕の中のメルヴィーナを抱え直し立ち上がった。
 生温かく湿った彼女の衣服が手に張り付く。

「マリア、君は医者を探してきてくれ。あの宿屋に連れてこい。」

 蒼白になっている妻付きの侍女に告げると、妻を抱えて人ごみをかき分けて宿屋に急いだ。

 店の主人に支払いは3倍で返すと告げ、案内された一室のベッドにメルヴィーナを寝かせる。


 外では気が動転して気づけなかったが、横たえた胸が上下している。安堵したとき、人は目が熱くなることを生まれて初めて知った。
 改めて全身を見ると、右肩の衣服が破れ、そのあたりから出血している。

 宿屋の主人から鋏を借り、傷口付近の衣服を切り取ると、丁度ドタドタと慌ただしい足音が部屋の外から聞こえてきた。

「旦那様、お医者様を連れてまいりました…!」
「入ってくれ。」

 マリアと共に、医者だという男性が入室してくる。医師が診やすいよう、メルヴィーナの頭を持ち上げて髪をよけると、普段は艶めく髪が、べっとりと血で絡まっていた。

「短刀で切りつけられた。金はいくらでも払う、助けてくれ。」
「…失礼します。」

 医師は傷口を見た後、脈にふれたり全身をくまなく調べていく。
 その間にもメルヴィーナがどうにかなってしまうのではないかと気がせってしまう。

 調べ終えた医師はこちらに視線を向けた。
 
「大丈夫です。大きな血管までは達していません。痛みのショックで気を失っているだけかと。止血のために、上体を起こしてさし上げてください。」

 言われたとおりにメルヴィーナを抱き起こし、医師が処置していく。
 荒い呼吸を繰り返す彼女を支えながら、安堵と後悔でどうにかなってしまいそうだ。

(…どうして、君はいつも感情の赴くままに…)

 すり寄せた髪からはいつものようにラベンダーの香りがしていたのかもしれない。だが、ツンと痛む鼻では、つまらない嫉妬の香りは感じなかった。

 こんな状況にならなければ、目の前で抱き寄せられる距離にずっと居れたことに気が付けないなんて本当に馬鹿だと思う。
 だからどうか、早く目を開けて責めてやってくれ。今なら意地を張らずに素直にごめんと謝れるから。





 夜には帰宅したものの、その晩、メルヴィーナは高熱を出した。
 医師からも傷による熱が出ることは聞いていたが、ここまでとは。
 
「だ、旦那様…こちらで休まれるのですか…?」

 妻の侍女が戸惑うような視線を向けてくる。無理もない。この寝室を使うのはいつぶりだろう。

「…夜、急に容体が変わるかもしれないだろう。」
「あの…私たちが交代でお付きしますけれども…。」
「いい。私が心配なんだ。」

 そう言うと、侍女は私の顔をじっと見つめ、僅かに眉を下げながら微笑んだ。
 
「…かしこまりました。奥様がお目覚めになったら、そのお気持ちを、ぜひ伝えて差し上げてください。きっと、お喜びになるはずです。」
「…そうか。」

 とはいうものの、いざ眠るメルヴィーナと二人きりで取り残されると、彼女が眠る寝台に入ることがなぜかできなくて、仕方がなく端に腰かける。
 高熱にうなされる妻の額には大粒の汗がにじんでおり、拭きたいのだが、なかなか触れられない。

 ベッドサイドの照明に照らされた汗ばむ妻の肌は濡れた真珠のようで。
 妻は苦しんでいるというのに、躊躇う自分が情けなくなり、意を決して絞ったハンカチで額を抑えていく。

 直接触れていないはずなのに、妻の身体の熱が感じられて。

 額やこめかみをゆっくり押さえていくと、冷たくて気持ちがいいのか、メルヴィーナの眉の緊張が解けていく。


(よかった…)


 ぬるくなったハンカチを絞り直し、首も拭いていく。
 妻の首筋やうなじをこのようにまじまじと見るのは初めてかもしれない。
 反対側の首を拭いていくと、ガーゼを当てられた肩が目に入る。

 きっと、あの男は背後から私の首を狙っていた。

(メルヴィーナが居なければ、きっと私は今頃…)

 胸の内がどうしようもない感情で苦しくなり、堪らず眠るメルヴィーナの頬を両手で包みたくなるが…できない。
 行き場のない手は、桃のような頬の傍で震え、ふっと力が抜けた。

 抜けた力は顔の強張りもほどいていって、唇が戦慄く。震えを治めたくて下唇を噛むが、こみ上げてくるものは間欠泉のように止めどなく溢れてくる。

 自分の顔の下にある彼女の湿った頬に、パタ、パタと雫が落ちた。

 それが自分の目から落ちたものだと理解したのは、落ちた雫がつーっと頬を流れてからだった。

 慌てて親指の腹で拭う。

「…ん…」

 慌てて強く拭ってしまったせいか、メルヴィーナが眉を寄せて身じろぎした。

「…シル、ヴェスターさま…」

 口が乾いているのか、上手く話せないようだった。
 しかし、自分を呼ぶ声にひどく安心し、同時に動揺してしまった。あんなに目を開けてほしい声を聞かせてほしいと思っていたのに、いざその時がくれば喉が苦しくなって何も言えない自分がもどかしい。
 
「済、ま…ない、起こしてしまった。」
「…お怪我は、ありませんでしたか…?」
「…っ、そんなこと…!君が…!」

 薄く瞳をあけて、荒い息で、火照る頬で、自分が一番苦しいはずなのに。
 そう思うと、零れ落ちるものはもう止められなかった。
 
 体を起こしてメルヴィーナの上からどき、顔を隠そうとしたとき。
 下からゆっくりと、小さくて熱い手が伸びてきた。

 そっと頬に近づく熱。

 私の頬に触れたか、触れなかったか、分からなかったほど微かに。

 私の目から流れたものが彼女の熱い手に、伝ったらしい。

  
「…きれい…。」

 薄く、力なく笑った、その顔が―――…。
 
 薄暗闇の中、メルヴィーナの僅かに開いた瞳に自分が映っている場違いな喜びと、こんな思いをさせるために結婚したわけではなかったという拭いきれない後悔と。

 何もかもが雑然と混ざり合ってボタボタと零れ落ちていく。

「…氷が、解けているみたい…。」
「…っ…」

 ひどい顔をしていると思う。
 願うなら今夜の記憶が妻には残っていないでほしい。彼女を苦しめる熱さが、自分のこの情けない涙もふがいない姿も全て消し去ってくれればいい。

 もう彼女を見ていられなかった。動けないまま固く閉じた瞼から溶け出たものは、がんじがらめになっていたプライドのようなものを砕いていく。
 
「メル、ヴィーナ…、私は、君を、そんな風にしたくて、結婚したわけでは…っ…。」

 絞り出した言葉に、メルヴィーナはゆっくりと一度だけ瞬いただけだった。「分かっています」なのか「気にしないでほしい」なのか、どういった意味なのかは分からない。
 でも、責められていないことは確かだった。

 いっそ責めて、罵って、見限りの言葉さえほしかった。そうすれば謝って縋れるのに。


「メルヴィーナ…っ…」

 自分の涙で濡らしてしまった彼女の頬を両手で包むと、冷えた手を温める高い体温。両の手で覆えてしまいそうなほどの小さな顔と頭。柔らかな肌。
 今まで手を伸ばせばすぐに触れられる距離にいたのに。触れていい関係を掴んだのに。この手を伸ばしてこなかったのは自分だ。

 後悔で思わず力が入ってしまう手に、僅かに柔らかいものが擦り寄せられた。

「…手…、冷たくて、気持ちがいいです…。」

 目を閉じて、熱い息を吐くメルヴィーナ。

 気がつけば右手で彼女の左手を握りしめ、もう片方の手で頬を包み、自分の頬を彼女の頬に擦り寄せていた。

 自分が零した涙が、肌と肌で延ばされる。

「君が…居なくなってしまうかと…」

 離縁したいと言い出した君が。
 自らの体を投げ打って私を庇った君が。

 そう思うと、もうそれしか言えなかった。

 彼女を苦しめる熱が全部自分に移ってくればいい。頬も、瞼も、額も耳も、その熱を分けてほしくて唇を落としていく。

 あの日の自分に戻れることなら戻りたい。そうすればどんなに惨めだろうと、妻の想い人の代わりでもなんでもなれるのに。
 痛みに、熱に、苦しむ彼女に遠慮することなく力の限りかき抱くことができるのに。


 いつの間にか眠ってしまったメルヴィーナの顔を見ながら、熱い手を握る。

 
 伝えたいことはたくさんあったはずなのに。謝罪の言葉も愛を伝える言葉も結局見つからなかった。
 次に君が目を覚ましたらなんて言おうか考えていたはずなのに、気がつけば君の手に縋るように握りしめたまま、君の隣で目を閉じていた。

--------

明日も7時12時21時の3回更新で完結になります。
 
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