真夏に咲いた恋の花

朝食ダンゴ

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空にいちばん近い場所

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 教室に鳴り響く終業のチャイムで、俺は夢の世界から引き戻された。
 机に突っ伏す姿勢からのっそりと起き上がり、大きな欠伸を一つ。授業ってのは、どうしてこうつまらないのだろう。睡眠以外にすることが見つからない。
 目をこすり、帰り支度を始める。荷物を作り、外していた眼鏡をかけたところで、胸ポケットの携帯が振動した。メールだ。内容を確認すると、俺は隣席の友人に別れの挨拶をして教室を出た。
 生徒で賑わう廊下を歩き、階段を上る。ペントハウスの扉を開いて、俺は屋上に出た。視界に青い空が広がる。この季節は日が長い。放課後の時間帯でもまだまだ空は明るく、そして暑かった。
 屋上に来たのはいいものの、俺をここに呼び出した当の本人が見当たらない。

「おーい。スイちゃん、こっちこっち」

 頭上から声。ペントハウスの上からだ。見上げてみると、そこに座る女子生徒の姿。黒いストッキングに包まれた長い脚をぶらぶらさせている。立ち入り禁止の場所だが、手招きして呼ばれたのならしょうがない。取り付けられているハシゴを上る。

「七緒。こんなところに呼び出して、何の用ですか」

 持って上がるのに苦労したであろう椅子に座る女子生徒――七緒に視線を投げつける。

「別に用はないよ。スイちゃんと一緒に空が見たかっただけ」

「ここじゃなくても空は見られるでしょう」

「ここが、学校で一番空に近い場所だよ」

 えへへ、と七緒は子供のような無邪気な笑みを浮かべる。文句の一つでも言おうかと思っていたが、毒気を抜かれてしまった。
 七緒の隣で、椅子の背もたれに手を置く。どうせなら俺の分の椅子も用意して欲しかった。
 七緒の長い髪が風に揺れる。仄かに香るシャンプーの匂いが、俺の鼻孔をくすぐった。
 無言だった。七緒は微笑みながら青い空を見上げており、俺はそんな七緒の横顔を見ていた。左目の下にある二つの泣きぼくろ。昔から変わらない彼女のチャームポイントだ。

 七緒は空が好きである。空を見上げるのは、出会った頃からずっと変わらぬ彼女の日課だった。俺の日課は、専ら七緒の横顔を眺めること。
最近、七緒は急に大人っぽくなった。高校二年にもなれば色気も出てくるだろうが、それにしても七緒は十七歳女子の平均を大きく上回っているように思える。それは身長であったり、美貌であったり、胸囲であったりする。
どれくらいそうしていただろうか。十分だったかもしれないし、一時間だったかもしれない。七緒はおもむろに立ち上がると、

「帰ろっか」

明るく言って、足下の鞄を拾い上げた。
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