357 / 997
和名のままのやついる?
しおりを挟む
翌朝。目が覚めると、目の前にオルタンシアの寝顔があった。
見れば見るほど整った顔だ。中性的なあどけない顔立ちは、育ち切らない美の片鱗を垣間見せている。
俺の指が彼女の頬をなぞる。柔らかくきめ細かい褐色の肌は、とても心地よい感触だ。
褐色の肌といえばルーチェもそうだ。あいつの髪の毛は紫じゃなくて黒だけど。
帝国貴族のルーチェが、ジェルド族と関係あったりするのかな? いや、肌の色だけじゃなんともいえないか。
「暑い」
俺はもぞもぞと寝袋から出る。テントから外を覗くと、ギラついた太陽が大地を焼き付けていた。
だがここはオアシス。比較的涼しいし、なにより目の前には泉がある。
俺は早足で泉へと駆け寄ると、水際に腰を下ろす。
ポケットから念話灯を取り出し、エレノアに発信。
『もしもし? ロートス?』
即座にエレノアの声が聞こえた。まるで俺からの念話を待っていたかのような反応速度だ。
「おう。おはよう」
『おはよう。どうしたの? こんな朝早くから』
「いや……お前の声が聞きたくなってな」
何気なくそんなことを言ってしまう。
しばしの無言の後、エレノアはやっと返事をした。
『不意打ちね。なに? もしかして機嫌を取ろうとしてる?』
「いいや。嘘偽りのない本心だ」
『どうだか』
言葉とは裏腹に、声色は嬉しそうに弾んでいる。それを隠そうと我慢しているようだけど、バレバレだ。
「なぁエレノア。昨日のことなんだけどさ」
『あら? 帰ってきてからって話じゃなかった?』
「そうなんだけど、気になることがあってよ」
『何かしら?』
俺は深呼吸を一つ。
「前世の名前って、覚えてるか?」
『へ? ええ。覚えてるけど』
「教えてくれ」
『……どうしたの? 急にそんなこと聞くなんて』
「言ったろ。気になるって」
『教えてもいいけど。お返しにあなたの名前も教えてくれるわよね?』
「もちろんだ。俺は蓮。御厨蓮って名前だった」
『レン、ね。ふふ。いい名前じゃない』
エレノアの嬉しそうな声。なにやらご満悦のようだ。
泉に映った俺の顔は、深刻そうな感じだが。
『私の名前はね。佐野ひかりっていうの。もう十年以上も呼ばれてないけど』
なんてこった。
やっぱり予想は当たってたか。
「ひかり……」
『な、なに? その名前で呼ばれるとなんだか変な気分ね』
「なぁ。こんなことを聞くのはあれなんだけど、お前、どんな死に方をした?」
『ええ? なにそれ』
あからさまに怪訝な声。
「大切なことなんだ。教えてくれ」
『教えてくれって言われても……実はあんまり覚えてないのよね。交差点を歩いていたら、いつの間にかって感じで。あれ? もしかして私も転生トラックだったのかしら?』
決まりだな。
あの夢はただの夢じゃない。
なんらかの超パワーによって見た、特殊な夢だ。
神族会議とか『ツクヨミ』とかの精神世界に近いやつだろう。
「わかった。知りたいことは知れた。サンキュな」
『それならいいんだけど。それだけ? なんか腑に落ちないわね』
「できるだけ早く戻る。帰ったら説明するさ。ベッドの中でな」
『……あらそう。じゃ、じゃあ鼻を長くして待ってるわ』
「首な」
『んんっ。わざとだから』
と言いつつ、動揺しているのは丸わかりだった。
「エレノア。みんなを頼む。じゃあな」
『うん。バイバイ』
通話終了。
さて、十分な睡眠を取れたし、疑問も解けたし。
これで憂いなくグランオーリスに突入できるな。
早いとこセレンと会って、鍵かどうかを確かめないと。
どうやって確かめたらいいのかは、全然考えてないけどな。
なんとかなるだろう。為せば成るってやつだ。
見れば見るほど整った顔だ。中性的なあどけない顔立ちは、育ち切らない美の片鱗を垣間見せている。
俺の指が彼女の頬をなぞる。柔らかくきめ細かい褐色の肌は、とても心地よい感触だ。
褐色の肌といえばルーチェもそうだ。あいつの髪の毛は紫じゃなくて黒だけど。
帝国貴族のルーチェが、ジェルド族と関係あったりするのかな? いや、肌の色だけじゃなんともいえないか。
「暑い」
俺はもぞもぞと寝袋から出る。テントから外を覗くと、ギラついた太陽が大地を焼き付けていた。
だがここはオアシス。比較的涼しいし、なにより目の前には泉がある。
俺は早足で泉へと駆け寄ると、水際に腰を下ろす。
ポケットから念話灯を取り出し、エレノアに発信。
『もしもし? ロートス?』
即座にエレノアの声が聞こえた。まるで俺からの念話を待っていたかのような反応速度だ。
「おう。おはよう」
『おはよう。どうしたの? こんな朝早くから』
「いや……お前の声が聞きたくなってな」
何気なくそんなことを言ってしまう。
しばしの無言の後、エレノアはやっと返事をした。
『不意打ちね。なに? もしかして機嫌を取ろうとしてる?』
「いいや。嘘偽りのない本心だ」
『どうだか』
言葉とは裏腹に、声色は嬉しそうに弾んでいる。それを隠そうと我慢しているようだけど、バレバレだ。
「なぁエレノア。昨日のことなんだけどさ」
『あら? 帰ってきてからって話じゃなかった?』
「そうなんだけど、気になることがあってよ」
『何かしら?』
俺は深呼吸を一つ。
「前世の名前って、覚えてるか?」
『へ? ええ。覚えてるけど』
「教えてくれ」
『……どうしたの? 急にそんなこと聞くなんて』
「言ったろ。気になるって」
『教えてもいいけど。お返しにあなたの名前も教えてくれるわよね?』
「もちろんだ。俺は蓮。御厨蓮って名前だった」
『レン、ね。ふふ。いい名前じゃない』
エレノアの嬉しそうな声。なにやらご満悦のようだ。
泉に映った俺の顔は、深刻そうな感じだが。
『私の名前はね。佐野ひかりっていうの。もう十年以上も呼ばれてないけど』
なんてこった。
やっぱり予想は当たってたか。
「ひかり……」
『な、なに? その名前で呼ばれるとなんだか変な気分ね』
「なぁ。こんなことを聞くのはあれなんだけど、お前、どんな死に方をした?」
『ええ? なにそれ』
あからさまに怪訝な声。
「大切なことなんだ。教えてくれ」
『教えてくれって言われても……実はあんまり覚えてないのよね。交差点を歩いていたら、いつの間にかって感じで。あれ? もしかして私も転生トラックだったのかしら?』
決まりだな。
あの夢はただの夢じゃない。
なんらかの超パワーによって見た、特殊な夢だ。
神族会議とか『ツクヨミ』とかの精神世界に近いやつだろう。
「わかった。知りたいことは知れた。サンキュな」
『それならいいんだけど。それだけ? なんか腑に落ちないわね』
「できるだけ早く戻る。帰ったら説明するさ。ベッドの中でな」
『……あらそう。じゃ、じゃあ鼻を長くして待ってるわ』
「首な」
『んんっ。わざとだから』
と言いつつ、動揺しているのは丸わかりだった。
「エレノア。みんなを頼む。じゃあな」
『うん。バイバイ』
通話終了。
さて、十分な睡眠を取れたし、疑問も解けたし。
これで憂いなくグランオーリスに突入できるな。
早いとこセレンと会って、鍵かどうかを確かめないと。
どうやって確かめたらいいのかは、全然考えてないけどな。
なんとかなるだろう。為せば成るってやつだ。
5
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる