異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ

文字の大きさ
801 / 997

金髪令嬢剣士

しおりを挟む
「イキール……?」

 そうか。どうりで見覚えがあるわけだ。
 この美少女イキールは、ティエスの『ドリーム・リキッド』によって性別を変えられた時と同じ姿なんだ。
 エレノアが世界を創り直した時、イキールは女になっていた。そのせいで、エレノアの世界では最初から女として生を受けたのだろう。
 このイキールは、スキルで性別を変えられた元男ではなく、生物学的にも精神的にも正真正銘の女ってことだ。

「ガウマン侯爵のご令嬢だったか」

 俺は冷静を装い、落ち着いた声で応対する。

「冴えわたる剣技も納得だな。父君のイヴァール・ガウマン侯爵は、稀代の才をお持ちと聞く。ご令嬢はその才を大いに受け継いでいるようだ」

「父は関係ないわ。私の剣は私自身の鍛錬によるものよ」

 イキールはあくまで不愛想だ。

「おいおい。キミは謙遜という言葉を知らないのかい? 呆れたものだね」

 やれやれと言わんばかりにヒーモが首を振った。

「ヒーモ・ダーメンズ。あなたの家系は男が立たず、嫁いできた女頼みだと聞いたわ。武力も政治も、すべて外戚の力によるものだと。歴代のダーメンズ子爵達には、貴族の男としてのプライドがないようね。恥ずかしくないのかしら」

「おい! キミは吾輩の先祖達を愚弄するつもりか!」

「気を悪くしたのなら謝るわ。なにせ、思ったことを率直に口にしてしまう性分でね」

 一切悪びれることなく、イキールはふんと鼻を鳴らした。

「私はもう帰還するから。ケムークは狩り尽くしたし、どういうわけかこの階層にはあんなのがうようよしてるからね。命がいくつあっても足りないわ。管理者は一体なにをしているのかしら」

 メテオ・オーガの死体を一瞥し、それから俺を睨みつける。
 公爵家の管轄だから、俺に責任があると言いたいのだろう。まったくその通りなので、何も言い返せない。

「ご令嬢を危険に晒してしまって申し訳ない。後日、正式にお詫びの品をお送りしよう」

「結構よ。あと、そのご令嬢っていうのやめてくれない? 鳥肌が立つわ」

 にべもない。
 イキールは腰のポーチから巻物を取り出すと、それを開いて魔力を込める。魔法のスクロールだ。あらかじめ設定しておいた魔法を、魔力を注ぐだけで発動できる簡易魔法陣の一種。
 スクロールから発した緑の光が、イキールの体を包んでいく。どうやらダンジョンから脱出するための転送魔法のようだ。

「じゃあね」

 最後に一瞥をくれて、イキールはその場から完全に消え去った。
 後には、メテオ・オーガの死体と静寂が残された。

「なんていけ好かない女だ!」

 ヒーモが鬱憤を吐き出す。

「大体なんだよあいつ! ロートスは公爵家の跡取り、小公爵だぞ! あんな態度、許されるはずがない!」

「まぁ落ち着け」

 あいつの言い分もわからなくはない。俺は世間ではボンクラと呼ばれているし、実際そうだ。生きる目的を失い、気力に乏しいからな。貴族らしい努力やはたらきはまさしく皆無なのだ。

「だが、一国の貴族としてあの態度は頂けないな。外面だけでも礼儀正しくしていればいいのに。あの性格じゃ生きづらいだろう」

「なんだよロートス。あんなことを言われて、むこうの心配をしているのか? キミという奴は、相変わらず女に甘いんだね」

「かもな。なにせあの娘、相当おっぱいが大きかったぞ」

 特注で作られたであろう胸当てが、非常に大きなRを描いていたからな。

「あのやり取りの中で、そんなところまで確認していたのかい。まったく……やれやれだよ」

 あの娘がイキールだと思えば複雑な気持ちであるが、実際この世界では紛れもなく女なのだ。十分に俺の守備範囲に入っている。

「なんにせよ。イキール嬢とは、縁ができた。魔法学園に入れば顔を合わせることもあるだろう。性格はともかく、剣士としてはすこぶる有能だ」

 あの剣の腕が役に立つこともあるかもしれない。

「縁というか、因縁だけどね」

「どっちでも構わないさ」

 さて。そんな話はともかく。

「ヒーモ。お前も戻れ」

「戻れって……キミはどうするんだい」

「イキール嬢が言ってたろ。この階層にメテオ・オーガが大量発生してるって。ちょっと調査してく」

「一人でか? バカを言うな。そんなのは騎士達に任せればいいじゃないか」

「もし本当にメテオ・オーガが大量発生しているなら、連れてきた騎士達じゃ足りない」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が全く読めない」

「読めなくてもいい。お前は戻って、騎士達にこのことを伝えてくれ。これ以上冒険者達が入ってくる前に『ジェネシス』のゲートを閉じるんだ」

 言いながら、俺は転送魔法を発動する。スクロールではなく、自分で魔法を構築した。

「お、おいロートス! まさか――」

「頼んだぞ」

「ちょ待――」

 緑色の光に包まれたヒーモは、言葉の途中で光と共に消え去った。今ごろダンジョンのゲートまで戻っている頃だろう。

 ふう。
 さてと。

「早速おでましか」

 俺が振り返ると、そこには数十を超えるメテオ・オーガの群れが、凄まじい殺気を放っていた。

「なるほどな。イキールが文句を言うのもわかる。一体どうなったらセーフダンジョンにこんな奴らが湧きまくるのか」

 『ジェネシス』になにやら異変が起きていることは明らかだ。

「さくっと調べて帰るとするか」

 俺は腰の剣に手をかける。
 その四半秒後には、メテオ・オーガの群れはすべて細かな肉片と化した。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...