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あとがき(文庫版)

あとがき

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 この本をお手に取っていただきありがとうございます。30歳で2冊目の長編文庫本でした。1冊目の「I.R.I.S.-イリス-」は28歳の時同じく同人誌で出しています。両方ともSF小説でAIがテーマなのですが本書では一部のオカルト趣向を取り入れてイリスよりはくだけた内容になっています、たぶん・・・。私がオカルトも好きなので。

 本書は作家の長谷敏司さんが運営するアナログハック・オープンリソースを使用しています。アナログハック・オープンリソースは該当wikiではこのように説明されています。

―引用はじめ https://w.atwiki.jp/analoghack/

アナログハック・オープンリソースは、作家、長谷敏司が小説『BEATLESS』『Hollow Vision』、漫画『天動のシンギュラリティ』などで展開している設定および世界観を、誰でも自由に使えるリソースとして開放しようという試みです。

オープンになっている(世界観・設定)データを使って、一次創作を自由に作ってよいとします。
これはファンのかたが作っていただくものも、商用で作っていただいても構わないと考えています。角川書店、早川書房以外の版元で作っていただいても、小説だけでなくゲームや音楽、漫画、等々いかなるジャンルで作っても問題ありません。

引用ここまで―

 私はもともと絵描きであり、redjuiceさんのファンなのですが、確かそれつながりで「BEATLESS」(単行本)を読み始めて長谷敏司さんのファンにもなってしまいました。そしてアナログハック・オープンリソースの存在を知ってしまったら同人活動をしている以上これはもう取り入れない手はないだろうと思い本書では世界観や設定・用語などを共有させていただきました。例えば人類の知能を超えたAIを表現する時「超高度AI」という用語はシンプルかつ的確でAI小説を書く上では一番完成された表現であると思います。人間知能があるなら便利な道具は使うべきで、それを続けてきたからこそ現代では洗練された道具を使えるようになったのだと思います。

 本書の試案ではとりあえず「人類の隠された機能」×「超超高度AI」のようなテーマを考えていたのですが完成してみたら「オカルト」×「SF」というような大分類に化けてしまいました。結局その方が縛りがゆるくて書きやすかったのです。ただ視野が広くなった分、要素も多くなり、色々と下調べが大変でした。恐らく科学的に間違っている表現等あると思うのですがどうかご容赦ください。

 前作イリス(2017年)から本書(2019年)までの3年間でもAIに関する技術的・社会的話題は常にホットであり続けました。本書執筆中にグーグルが量子超越性を実証した量子コンピューターを発表したり、Adobe cc のPhotoshopにあった「コンテンツに応じて塗りつぶし」がAftereffectに実装されて動画で余計なものを後から消せるようになったり、近所のスーパーのレジが自動化したり・・・今まさにAI戦国時代なのですがこの競争に日本はどこまでついていけるんだと不安になったりもします。ただグーグルやIBMが研究している量子コンピューターは「ゲート方式」で小型化が難しく性能が頭打ちなのが見えています。でも日本の東大では光量子コンピューターを研究していて「一方向量子計算方式」を採用しており、それは10円玉サイズで大規模な量子もつれ状態を構築できます。なので「意外と日本もやるじゃん」と本書の下調べでわかったり色々と本書執筆にまつわる収穫のようなものがありました。

 しかしながらこれだけ世界ではSFチックな事象が進行中なのに、日本の創作界隈ではSFジャンルは規模がどんどん縮小していてこのままだとうちのサークルは孤独死してしまいます(笑)。なので本書をお手に取られた方、是非SF創作始めてみてください。よろしくお願いいたします。

 本書の本文でもちらっと書いてあるのですがヒロインのエイダはプログラミング言語のAdaから名前を持ってきています。Adaは主に航空機や軍事兵器などに使われており、信頼性・保守性に優れております。劇中でもエイダが信頼されるように描写しました。そして武器のイシュビアーンはAdaの設計者イシュビア氏からとりました(勝手に申し訳ないです)。また、史上初のプログラマであるエイダ・ラブレス氏にも敬意を表しております。

 本文自体は今回セリフ多め説明少なめで、作風はシナリオに近いものがありますが、手癖で書いた結果でもあります。今回のストーリーはセリフでテンポよくつなげないと結構平凡な内容なのです。意外と主人公に迫るイベントは少ないと思います。イリスの時は世界情勢の説明等が多く本文が理屈っぽく書かれていて、読むのに脳に負荷がかかるものでした。今回は前半はフランクに後半は少しシリアスにしており、読者の導入の手助けとなっていれば幸いです。

 小説の表紙はもちろん私が描いたのですが、文庫本サイズであることを忘れており、全身を小さく配置せざるを得ない結果となってしまい申し訳ないです。ツイッターやピクシブで大きな画像を見れるのでよろしかったら訪れてみてください。

 小説はやっぱり自分のストーリーを作れるので楽しいですね。またいつになるか分かりませんが小説は書きます。私が「小説も書ける絵描き」なのか「絵も描ける作家」なのか定かではないのですが応援よろしくお願いいたします。

「この作品はアナログハック・オープンリソースを使用しています」
 https://w.atwiki.jp/analoghack/
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