元魔王おじさん

うどんり

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一章

第5話 なんか幼女ついてきた

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魔王だったころ、直属の信頼できる部下を十三人ほど置いていた。

そのうちの一人がラミナだった。

優秀なんだがかなり独特で、なかなかつかみどころのない性格をしている。

そして、魔王としての俺に心酔していたきらいがある。

もうただのおじさんとなったからその熱も覚めたと思ったが、

――魔王軍やめた。

やめちゃったらしい。

「マジ?」

――嘘。現魔王から、コーラルさまの護衛を仰せつかった。

「なんだ。護衛とかいらんぞ」

あいつも過保護だな。

――そういうわけにもいかない。コーラルさまの護衛は、私のたっての願いでもあるから。

「むしろあれだろ、お前から提案しただろ」

――そうともいう。

それを許す現魔王も現魔王だな。ふん、まあいいか。

「ちゃんと魔法でこちらに来たんだろうな。どこかの空間に穴とか開けてそのままにしてないよな?」

――それは大丈夫。

少女の声は静かに答える。

世界間に通り道ができてしまったら、魔力の低い魔物どもでも大量に人間界に来れてしまう。
それはとてもまずい。

まあラミナなら分別つけられるし大丈夫だろう。

「来たのならてつだってもらうぞラミナよ」

――なんでも命令して。

「俺はいま自宅を鋭意改装中だ。つまり木をきったり組み立てたりしてボロ小屋をいい感じのマイホームに改造するのだ」

――コーラルさま。

「なんだ?」

――おなかいたいので到着はもう少し先になると思う。

「めんどくさがるんじゃあないぞ。お前の魔法ならすぐ来れるんだから早く来なさい」

「…………」

俺が急かすと、虚空からにゅっと黒い穴のようなものが開いて、そこから小柄な銀髪の少女が現れた。

とてもめんどくさそうな顔をしていたが、俺の顔を見るとぱっと目を輝かせる。

「コーラルさま……会いたかった」

とてとてと近づいてきたラミナは俺を見上げて満足そうに口元をほころばせた。

「来たなラミナよ。さあ俺とともに家をたてるのだ」

「どうするの。魔法使う?」

「使えば楽なのだろうが、あまり人に見られても困る。ここは人間のやりかたに習うとしよう」

「?」

「道具を使って、さっき切った木を加工し、組み立てるのだ」

「……加工」

「だがここにはそんな道具などない。だから明日、町に出て一通り買いそろえることにする」

「一緒にいく」

うむ。

しかし、道具といってもどういったものが必要だろうか。
具体的な話になるとわからんぞ。

ううむ、やはりこれもマヤに聞いてみるか。

「してラミナよ、こっちに来るまでに人間界のこと予習してきた?」

「あまりしてない」

これはまったくしてないな。

「俺はある程度予習してきたつもりだが、それでも驚きが一杯だ。くれぐれも魔の者だとばれるようなことは人前では慎むように」

「たぶんわかった」

本当にわかった?
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