【BL大賞、奨励賞受賞】嫌いなバディとキスをする!? ~ふたりきりの任務で再会したのは初恋の幼馴染でした~

mei@ネトコン13受賞

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第一話 嫌いなあいつとふたりで任務!?

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俺、エルマ・クラインは悩んでいた。
成功させたい仕事がある。絶対に成し遂げなければならない。
けれども、どうしても受け入れ難いものがある。

「早く口を出せ」

……大っ嫌いな幼馴染、ギルバート・ルフトシュタットと、キスをしなければならないということだ。





時は一ヶ月近く前にさかのぼる。
グラナード騎士団で下っ端魔術師として働いている俺に、出世のチャンスが舞い降りた。

「エルマ、今月からトラオム聖教会で極秘任務に当たれ」

声をかけてきたひとは、俺の所属する魔術部の部長。超絶偉い人だった。
俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。

「え、お、俺が、ですか」
「第一騎士団の直接指名だそうだ。断ったら……」
「い、行きます行きます! 行かせてください!」

前のめりになって即OKした。
今年、俺は二十歳になる。
新卒採用から二年、パシリとゴマすりで先輩たちに取り入ってきた。

騎士団の花形と言えばやはり騎士。
だけど、俺は騎士になれなかった。

しかも俺は魔術師のなかでも下層の"補佐魔術師"。”正魔術師”になれば騎士と対等の権限がもらえる。けど、平民の大半は”補佐魔術師”で終わるのが現実だ。

身分制が強いこの国で、平民の俺が仕事の功績を得るチャンスなんて滅多にない。
絶対に任務を成功させて出世したかった。
今まで苦労をかけた母親を楽にさせてあげたかった。

あの大っ嫌いな幼馴染を、早く見返してやりたかった。

……なのに



「なんっでお前がここにいるんだよ!!!!」

びし!と音がするくらい勢いよく指を指す。
ギルバート・ルフトシュタットは白々しく首を傾げたままだった。

任務へ出立する日。
バディとなる騎士とこれから向かうという段階で、待っていたのは大っ嫌いな幼馴染だった。

「今回は騎士と魔術師のバディによる任務だ。聞いてなかったのか」
「聞いてたよ! 聞いた上で! なんっでお前が俺の相棒なんだよ!」
「人事部に問い合わせようか?」
「あーーーー!! もう!! そういうことじゃないんだって!!!」

キィィィ!!と叫んでも、ギルバートはしらっとした顔をしている。うるせぇやつが騒いでんなってくらいの温度感で。

ギルバート・ルフトシュタット。
グラナード騎士団・第一騎士団の騎士。
第一騎士団は魔法や剣術に秀でたエリート中のエリート。みんなの憧れの存在だ。
ギルバートはトップの成績で入団し、数々の任務で成功を収め、騎士団の超有望新人として注目されている。
黒髪できりっとした顔立ちから『漆黒の貴公子』なんてクソだせぇ通り名がついているが、それに見合う実力と見た目をしていた。金・顔・力・名声と、まあ人間が羨む全てを持ち合わせている、チート級の男だ。


「エルマ。トラオム聖教会までは馬車移動だ。酔い止めは持ってきたか」
「持ってるよ! マジ余計なお世話」
「ならいい。十年前は思いっきり吐かれたからな」
「いつの話をしてんだよ!」

……そう。
俺とコイツは、子供のころから知っている仲だ。
ギルバートは貴族で、俺は平民だけど。俺たちは同級生だった。
子どもが少ない地域だったから公爵の子も平民の子も同じ学校に通っていた。
騎士に憧れていた俺と剣術を習っていたギルバートは、毎日のように一緒に遊んでいた。

「あのときは最悪だった。まさか頭からゲロを被ることになるとは」
「何十回も謝ってるだろ。まだ足りねーのかよ」
「謝ってほしいんじゃない。気をつけてほしいだけだ」
「やるわけねーだろ! もう大人だよ!」

……それこそ十年前くらいの、何も知らない子供だったら、仲良くやれてたんだろうけど。

成長するにつれ、だんだんまわりの扱いに平民と貴族の差が出てきて。
剣術でも学力でも勝てなくなって。
いつの間にかギルバートは俺の世話を焼くようになって。
それが見下されているように感じてきて。
そうして、ムカついて、嫌いになった。

十五歳の時に進路が分かれてから、俺たちはずっと会ってなかった。

ギルバートは騎士になるために王都の学校に行って、俺は地元の平民の学校に残った。
十八歳の時、俺はグラナード騎士団の魔術師試験に受かって王都へ上京した。

入団式の日。新団員代表として壇上に上がったギルバートを見た瞬間、今までの劣等感が体中のツボを全部押されたみたいにぶわっと蘇った。さっさと家に帰りたくなった。


(所属が違うからギルバートとは会わないと思ったのに! なんでよりにもよって同じ任務なんだよ!)

今日からしばらくギルバートとふたりで極秘任務に携わる。
同期とはいえ任務の主導権はギルバートにあり、俺は補佐的なポジション。
身体の奥底からマグマのように抵抗感が込み上げてくる。



馬車が到着し、今回の任務地であるトラオムへ向かうことになった。

その道中、俺はずっと口をつぐんでいた。
ギルバートは隣でずっと「酔ってないか? 袋ならあるが」と声をかけてくる。
うっせーな、って口を開こうとしたら本当に気持ち悪くなった。ギルバートに背中をさすられる。
……最悪だ。悔しい。プライドが許さない。

「エルマは変わらないな」

涙目で見上げると、ギルバートは優しい瞳で見下ろしていた。

(変わらない、って。いつまでもガキってことかよ)

エリート騎士団・大注目の新人有望騎士と、落ちこぼれ魔術師の俺。
唾を飲み込むと、喉の奥に引っかかるような苦さがある。
酸っぱくて苦しくて。
隣にいなかったら、こんな差なんて感じなかったのに。


せっかくの出世のチャンスは、絶対ものにしたい。
自分を指名してくれたからには頑張りたい。

けど、こいつといると胸の奥がぎゅっと痛む。
ギルバートとバディを組むことだけは、どうにも受け入れられなかった。
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