【BL大賞、奨励賞受賞】嫌いなバディとキスをする!? ~ふたりきりの任務で再会したのは初恋の幼馴染でした~

mei@ネトコン13受賞

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第十八話 ネクロマンサー

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「ゆ~れい?」

拠点に戻り、ギルバートからアインホルン司祭の話を聞いた。俺はホットミルクを片手に、マヌケに言葉を繰り返す。
ギルバートは「ああ」とだけ返す。

「数百人がうようよ浮いて? ……いや、”混ざって”か。意味わからん」
「あのひとの言葉は分かりづらい。わざと煙に巻いて遊んでいるのか、それとも何か意図があるのか……」
「ギルバートも、喋るのあんま得意じゃねーしな」

おやつのクッキーをかじりながら喋る。クヴァールの差し入れを買ったときについでに買ったものだ。結構うまい。
ギルバートにクッキーを差し出すと、おずおずと手が伸びてきた。

「! 美味いな。どこで買ったんだ」
「商店街のお店。けっこう繁盛してたぜ。先輩方のオススメでさ」
「……エルマはどこでもうまくやっていけるんだな」

はぁ、とため息をつくギルバートがちょっと可哀想になってきた。
俺が接する相手はほとんどが一般人だから、そんな大変な人はいない。
ギルバートが接する相手は上級司祭やらの偉いひとが大半だ。めんどうでクセが強いだろう。
もし俺がギルバートの立場だったらストレスで胃に穴が開いてるに違いない。


「幽霊……っていうと違うかもしれないけど。もしかしたら”召喚獣”かもしれないな」

俺の呟きに、ギルバートは興味深そうな視線を向けた。

「昔、魔術師のなかには”召喚士”ってのがいたらしい。”魔物”や”精霊”を召喚して、自分の味方にする、みたいな」
「”召喚士”……。”ヒト”ではないものを呼び出す職業か」
「そ。伝説によればユニコーンとかセイレーンとかも呼び出せるらしいぜ。ま、今この国に”魔物”がいるとは聞かないから、本当に呼び出せるのかは分かんねーけど」

さく、とクッキーをかじって続ける。
そして、脳裏にふとよぎった可能性について話してみた。

「”白の間”の前で、魔力の強い魔物を”召喚”する。で、そいつらの魔力を使って扉を開けるーーーとか」

たとえば、犯人が100ルナしか魔力を持ってなくても、召喚魔法を使えば2000ルナの魔力を持つ精霊を呼び出せる……みたいな。

 言ってはみたものの、現実味がなさすぎて、すぐに打ち消した。そもそも”召喚士”や”召喚獣”が本当にいるとも思えないし。
やっぱナシ、と言おうとするも、ギルバートは「なるほど」と相槌を打ってきた。

「召喚獣が実際いるかはともかく、その方向性はあり得ると思う」
「お、おう。そうか?」
「ああ。魔力の高いものをどう扉の前に持っていくのかが問題だからな。他にはどんなのがありそうだ」

ギルバートが瞳を輝かせて聞いてくるので、俺は心がむず痒くなった。頼られるのは、ちょっと嬉しい。いや、かなり嬉しい。
調子を取り戻すようにホットミルクを一口飲んでから、続けた。

「召喚じゃなく、”使役”の場合。例えば、死体を操る”ネクロマンサー”。ひとを洗脳する”黒魔術師”。これなら犯人がひとりでも、複数人分の魔力を自分のものにできる」

こっちの方が可能性ありそうだ。
脳裏にふと、数日前に聞いた気味悪い噂がよぎった。

『アインホルン司祭は夜な夜な墓を掘り起こしている』

噂の発生は二ヶ月前。聖体盗難事件が起きた頃。
……もし、アインホルン司祭が”ネクロマンサー”だったら。
魔力のある遺体を利用して”白の間”を開けることも、できるかもしれない。


飛躍してるように思える推理だったが、それでも口に出してみた。
ギルバートは息を詰めて、「なるほど」と呟いた。低い声には緊張が滲んでいた。

「墓を掘り起こすのは確かに奇妙だ。何かしらの意図がなければそんなことはしない」
「ああ、そうだよな」
「アインホルン司祭がネクロマンサーだという証拠が見つかれば、遺体を調査することもできるだろう」

墓を掘り起こすのは普通に犯罪だ。根拠が薄いままでは動きづらい。現代もネクロマンサーがいるかってこと自体、かなり突飛な考えだし。

アインホルン司祭がネクロマンサーであるかどうか。
彼が会っている団体や過去の繋がりに、近いものがないか調べることにした。



「エルマ。今日、医務室にいただろう。出てくるところを見た」

ある程度話が落ち着くと、ギルバートが険しい表情で切り出した。
俺は内心、どきりとする。
やましいことではないけれど、魔素不足で倒れたことはあんまり言いたくなかった。

「……ああ。健康診断に魔力量の項目があるかを聞いてきたんだ。一昨年から必須項目になったらしいぜ」
「そうか、よかった。体調に問題はないのか」
「大丈夫だって」

ギルバートの視線が鋭い。なんとなく視線を避けた。

「魔素、足りてるか? 調子が悪いならーーー」
「大丈夫だって!」

つい、声が強くなって、テーブルに置いたカップがカタンと鳴った。
ギルバートが心配してくれてるのがひしひしと伝わってくる。
だからこそ。キスしてもらわなきゃいけない状況が、いたたまれない。

「……ギルバートが我慢してくれてるの、わかってる。俺もなんとかしてるところだから」
「エルマ、」

この心配だって、バディが倒れないかどうかを考えてるだけだ。
心の伴わないキスなら、しないほうがマシだ。

(……”心の伴うキス”って、なんだよ)

俺は思考に蓋をする。
これ以上考えた先に、俺たちの未来があるとは、思えなかった。
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