【完結】悪役令息Ωに転生した僕、「ヒートで襲って婚約破棄」のはずなのに、王子がノリノリで応じてくる

mei@ネトコン13受賞

文字の大きさ
11 / 12

第十一話 Ωの幸せに包まれていた※

しおりを挟む
思わず息を呑んだ。
服の上から分かるだけでも、大きいし、硬い。

ーーーほしい
ヒートのせいか媚薬のせいか、はたまた両方のせいかはわからないけど。
触れた瞬間に全身の毛穴からフェロモンが溢れ出るみたいに、このαが欲しくなった。

「アレン、いいか」

フレッドが切羽詰まったような声で尋ねる。
いまにも本能に溺れそうな響きだった。
……こんなに狂ってしまう状況でも僕に許可を取るなんて。フレッドは真面目だ。

僕は小さく、こくん、と頷いた。
フレッドはほっとしたように息を吐いて、僕をぎゅうっと抱きしめる。
フレッドの匂い。
落ちついて、どきどきして、きゅんっとする匂い。

「こわいか?」
「……ちょっとこわい」
「じゃあ、また抱きついてろ」

フレッドは下を脱ぎ終わると、両手を広げ「おいで」と囁いた。
僕はフレッドのそばまで近寄って、前からそっと抱きつく。
ぴと、と肌をくっつけると、雄がお腹のあたりでびくりと動いた。

「……フレッドも興奮してるんだね」
「誰のせいだよ」

フレッドは半ば呆れたようにふふっと笑った。
そうだった。この禁断魔術だってヒートだって、僕のせいだった。
ごめん、と謝ると、額にちゅっ、と軽いキスを落とされた。

「お前が可愛いからだ」

フレッドは愛おしそうに、僕の髪を撫でる。
僕は呆然とフレッドの顔を見つめてしまった。
かわいいなんて、言われるとは思わなかった。



「いれるぞ」
「え、うん……」

僕はフレッドがあぐらをかいているところにまたがった。
フレッドは僕の身体を支えながら、孔にぴたりと肉棒をくっつけた。

ぐぐぐ、と、ゆっくり、肉棒が入ってくる。
途端にゾクゾクとした快感が襲ってきて、フレッドにしがみついた。
粘液が硬いのでこすられる。ぬちゃ、と、静かな音が響いた。

「……っぁ、あっ………」
「大丈夫だ。つかまってろ」
「んっ、んぅっ……、ぅんっ」

体中の血管が一気に広がったみたいに、フェロモンが全身を駆け巡る。刺激でビクビクと跳ねる。フレッドの首に抱きついて、込み上げてくる快感に耐えた。
きゅうっと唇を噛んでいると、フレッドは瞳を柔らかく細めた。
ぜんぶはいった、と掠れた声で囁かれる。
僕はそれだけで、胸の奥が切なくなった。

「うごくぞ」
「えっ、……あ、あああっ、あっ、ぁんっ」

がつん、と下から突き上げられた。
今までとは段違いの衝撃が込み上げた。咄嗟にしがみつく力を強める。
フレッドも僕を抱きしめ返す。そして肉棒を孔に力強く穿った。自分を刻みつけるように。
あああ、ああっ、甘い叫び声がこぼれる。
口の端から唾液が零れて、でもそんなのにかまってられないくらい、ぐちゃぐちゃになった。

「アレン、アレンッ……!」
「ああっ、あっ、あんっ、だ、だめっ、あっ、やぁっ!」
「俺の、俺のだ、俺の番だ……!」

フレッドの腕の力が強くなる。全身が軋むくらい、強い。
頭が真っ白になるなか、フレッドの声がずっと響いていた。
”俺の番”ーーー、
本当にフレッドの相手が僕でいいのか、わかんないけど、でも、
僕はーーーー
体の奥底から、Ωとしての喜びが込み上げてきた。
"大好きなαに求められている"。

すき、すき、フレッド、すき。
うわごとのように零すと、フレッドは僕にキスをする。舌を絡めて、噛みつくようなキス。

「好きだ、アレン。絶対、離さないから」

すぐ近くで見つめる瞳は、ぎらぎらと、本能に燃えていた。
僕はうっとりする瞳で見つめ返す。うん、と頷いて、フレッドに全身を委ねる。
激しい律動が繰り返され、フレッドは一段と強く腰を打ち付けた。
最奥に熱いものがほとばしる。満たされていく。
僕も背を反らせ、精液を飛ばした。




ぐったりした身体で、フレッドにもたれかかる。は、は、と、呼吸が荒かった。
頭がぼーっとする。だめだ、動けない。
フレッドは僕の身体を抱き留め、そして、僕をベッドにうつ伏せで横たわらせた。

僕のうなじに顔を寄せてーー
がぶり、と噛んだ。

「んっ」

途端に体中のフェロモンが反応する。
目の奥がチカチカ光って、体中が熱くなって、燃えるみたいで。
そっと口を離され、フレッドが後ろから僕を抱きしめた。

「……これで、俺たちは番だ、アレン」
「うん…………」
「もう離さない。どこにも行くな」

フレッドの腕が強い。
そして、噛んだばかりのうなじを丁寧に舐める。慈しむみたいに。
僕は全然現実感がなくて、でも、
不思議と、幸せで満たされる感覚だけが、残っていた。






「……やっちゃった」

僕はそのまま寝落ちしたらしい。
目が覚めると、べたべたの身体は清められていたし、寝間着に着替えさせられていた。
誰がやったかって、そんなのフレッドしかいない。

時間的にはまだ夜だ。気を失ってたのは一時間とかそれくらい、なんだけど。
部屋を見渡すと、フレッドはいなかった。

(ーーーーどうしよう、後悔してるのかな)

僕は寝間着をきゅうと掴んだ。
本当は、ここで僕たちは結ばれちゃいけない。
……フレッドが幸せになるルートを、僕が潰してしまった。
さっきまで幸福感に包まれていたのに、急に冷水をぶっかけられたみたいに怖くなった。

一度番ったら番の解消はできない。フレッドは僕の番として生きていくことになる。
フレッドは……、これでよかったんだろうか。

フレッドが今この部屋にいないのが答えなんじゃないかって気がしてくる。
もしかして、媚薬魔法が切れて、冷静になって、後悔してーーーー
とてつもない不安感に苛まれる。
うつむいて、目の奥から涙が込み上げてきた。




「ーーーアレン?」

ガチャ、と扉が開いて、フレッドが入ってきた。
僕はフレッドの顔を見て、安堵と不安と、嬉しさと苦しさで、情緒がとうとうぐちゃぐちゃになった。

「な、なんで泣いて……、痛いのか? どこか、苦しいのか?」

フレッドは急いでベッドまで駆けてきた。不安そうな顔で覗き込む。
僕は涙をぼろぼろと零しながら首を左右に振る。
痛くないけど、でも、止まらない。

「じゃあ、どうして泣いてるんだ」
「……おきたら、フレッドがいなかったからっ!」

わあっ、と子どもみたいに叫んでしまった。
フレッドは口をぽかんと開ける。
僕はその勢いでまくしたてた。

「やっぱ、フレッドが、後悔してたら……! だって、だって、僕が、僕がむりやりっ……! 僕がフレッドの幸せを、壊したからっ!」
「……は?」
「ごめんなさいっ! ぼくのせいでっ! うわぁあっ!」

考えがまとまらない。思いついたことばっかり叫んでしまった。
フレッドは慌てる僕の背中をぽんぽんと優しく叩く。子どもをあやすみたいに。
そういえば、小さい時もこうやってあやされたことがある。

「いなくなって悪かった。ほら、ちゃんと帰ってきただろ」
「うっ……ぐすっ、ぅぅっ……」
「泣くな。目が腫れるぞ」

その手つきが優しくて、僕は、また涙が零れてくる。
フレッドに抱きついて、子どもみたいに、わんわん泣いていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

巻き戻った悪役令息のかぶってた猫

いいはな
BL
婚約者のアーノルドからある日突然断罪され、処刑されたルイ。目覚めるとなぜか処刑される一年前に時間が巻き戻っていた。 なんとか処刑を回避しようと奔走するルイだが、すでにその頃にはアーノルドが思いを寄せていたミカエルへと嫌がらせをしており、もはやアーノルドとの関係修復は不可能。断頭台は目の前。処刑へと秒読み。 全てがどうでも良くなったルイはそれまで被っていた猫を脱ぎ捨てて、せめてありのままの自分で生きていこうとする。 果たして、悪役令息であったルイは処刑までにありのままの自分を受け入れてくれる友人を作ることができるのか――!? 冷たく見えるが素は天然ポワポワな受けとそんな受けに振り回されがちな溺愛攻めのお話。   ※キスくらいしかしませんが、一応性描写がある話は※をつけます。※話の都合上、主人公が一度死にます。※前半はほとんど溺愛要素は無いと思います。※ちょっとした悪役が出てきますが、ざまぁの予定はありません。※この世界は男同士での婚約が当たり前な世界になっております。 初投稿です。至らない点も多々あるとは思いますが、空よりも広く、海よりも深い心で読んでいただけると幸いです。 また、この作品は亀更新になると思われます。あらかじめご了承ください。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました

ちとせ
BL
美形王子×容姿端麗悪役令息  ——これ、転生したやつだ。 5歳の誕生日、ノエル・ルーズヴェルトは前世の記憶を取り戻した。 姉が夢中になっていたBLゲームの悪役令息に転生したノエルは、最終的に死罪かそれ同等の悲惨な結末を迎える運命だった。 そんなの、絶対に回避したい。 主人公や攻略対象に近づかず、目立たずに生きていこう。 そう思っていたのに… なぜか勝手に広まる悪評に、むしろ断罪ルートに近づいている気がする。 しかも、関わるまいと決めていた第2王子・レオンには最初は嫌われていたはずなのに、途中からなぜかグイグイ迫られてる。 「お前を口説いている」 「俺が嫉妬しないとでも思った?」 なんで、すべてにおいて完璧な王子が僕にそんなことを言ってるの…?  断罪回避のはずが、いつの間にか王子に捕まり、最後には溺愛されるお話です。 ※しばらく性描写はないですが、する時にはガッツリです

悪役の運命から逃げたいのに、独占欲騎士様が離してくれません

ちとせ
BL
執着バリバリなクールイケメン騎士×一生懸命な元悪役美貌転生者 地味に生きたい転生悪役と、全力で囲い込む氷の騎士。 乙女ゲームの断罪予定悪役に転生してしまった春野奏。 新しい人生では断罪を回避して穏やかに暮らしたい——そう決意した奏ことカイ・フォン・リヒテンベルクは、善行を積み、目立たず生きることを目標にする。 だが、唯一の誤算は護衛騎士・ゼクスの存在だった。 冷静で用心深く、厳格な彼が護衛としてそばにいるということはやり直し人生前途多難だ… そう思っていたのに─── 「ご自身を大事にしない分、私が守ります」 「あなたは、すべて私のものです。 上書きが……必要ですね」 断罪回避のはずが、護衛騎士に執着されて逃げ道ゼロ!? 護られてるはずなのに、なんだか囚われている気がするのは気のせい? 警戒から始まる、甘く切なく、そしてどこまでも執着深い恋。 一生懸命な転生悪役と、独占欲モンスターな護衛騎士の、主従ラブストーリー!

処理中です...