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森の朝ー私はパンの耳を焼いていた。
リスが火加減を見守り、ウサギが皿を並べ、インコが「焼きすぎ注意クエッ!」と叫ぶ。
いつも通りの、穏やかでにぎやかな朝だった。
そこへ、異様な行列が現れた。
「ミナ様~! 王族が来たピヨ!!」
木々の間から、ド派手なドレスを引きずる王女殿下リゼが登場。
その後ろには、王子殿下フィン、王妃、そして貴族たちがずらり。この場所は、森深くだから、簡単に馬車では入ることができないため、 全員、森の中を歩いてきたらしく、泥だらけ。
靴は葉っぱまみれ。顔は必死だった。
「ミナ……お願い……ミルフィーちゃんが……寂しがってるの……」
「……王宮に戻って……ね」
王女殿下リゼは、涙ながらに訴える。
ミルフィーは木の上から冷ややかに見下ろし、ひとこと。
『説得力ゼロニャ! きちんと謝るべきニャ!』
私はにっこり微笑んで、静かに答えた。
「私は“動物虐待”で追放された身ですから。また王宮に戻りましても、虐待騒ぎが起きるかもしれませんので、お力にはなれません!!」
その瞬間、森の動物たちが一斉に拍手(?)を始めた。
ウサギが耳をパタパタ、インコが「ブラボー!ブラボー!」と叫び、リスがどんぐりを木にぶつけ鳴らし、カメがゆっくり首を上下に振る。
王族や貴族たちは、私の言葉に呆然。
王子殿下フィンは、ベルクに助けを求めるように見つめるが、ベルクは玉座のような切り株に座ったまま、そっぽを向いていた。
『ミナさんがいない王宮なんて、ただの犬小屋ワン』
王妃は震えながらつぶやいた。
「これは……何かの呪いなのでは……?」
私はパンの耳をひとつ王女殿下に差し出した。
「お土産です。動物たちには人気ですよ」
王女殿下は受け取ったが、ミルフィーがすかさず爪で払い落とした。
『ミナのパン耳を、軽々しく受け取るなニャ』
『お前からは、もらわないニャ!』
こうして、王族たちの“土下座外交”は、森の動物たちの圧倒的な団結力の前に敗北した。
*
その夜、私は動物たちと焚き火を囲みながら、ぽつりとつぶやいた。
「……ちょっとだけ、スッキリしたかも♪」
動物たちは一斉に鳴き声を上げた。
『ミナ、最高ニャ!』
『王族に勝ったワン!』
『祝・門前払いクエッ!』
そして森は、今日も平和だった。
リスが火加減を見守り、ウサギが皿を並べ、インコが「焼きすぎ注意クエッ!」と叫ぶ。
いつも通りの、穏やかでにぎやかな朝だった。
そこへ、異様な行列が現れた。
「ミナ様~! 王族が来たピヨ!!」
木々の間から、ド派手なドレスを引きずる王女殿下リゼが登場。
その後ろには、王子殿下フィン、王妃、そして貴族たちがずらり。この場所は、森深くだから、簡単に馬車では入ることができないため、 全員、森の中を歩いてきたらしく、泥だらけ。
靴は葉っぱまみれ。顔は必死だった。
「ミナ……お願い……ミルフィーちゃんが……寂しがってるの……」
「……王宮に戻って……ね」
王女殿下リゼは、涙ながらに訴える。
ミルフィーは木の上から冷ややかに見下ろし、ひとこと。
『説得力ゼロニャ! きちんと謝るべきニャ!』
私はにっこり微笑んで、静かに答えた。
「私は“動物虐待”で追放された身ですから。また王宮に戻りましても、虐待騒ぎが起きるかもしれませんので、お力にはなれません!!」
その瞬間、森の動物たちが一斉に拍手(?)を始めた。
ウサギが耳をパタパタ、インコが「ブラボー!ブラボー!」と叫び、リスがどんぐりを木にぶつけ鳴らし、カメがゆっくり首を上下に振る。
王族や貴族たちは、私の言葉に呆然。
王子殿下フィンは、ベルクに助けを求めるように見つめるが、ベルクは玉座のような切り株に座ったまま、そっぽを向いていた。
『ミナさんがいない王宮なんて、ただの犬小屋ワン』
王妃は震えながらつぶやいた。
「これは……何かの呪いなのでは……?」
私はパンの耳をひとつ王女殿下に差し出した。
「お土産です。動物たちには人気ですよ」
王女殿下は受け取ったが、ミルフィーがすかさず爪で払い落とした。
『ミナのパン耳を、軽々しく受け取るなニャ』
『お前からは、もらわないニャ!』
こうして、王族たちの“土下座外交”は、森の動物たちの圧倒的な団結力の前に敗北した。
*
その夜、私は動物たちと焚き火を囲みながら、ぽつりとつぶやいた。
「……ちょっとだけ、スッキリしたかも♪」
動物たちは一斉に鳴き声を上げた。
『ミナ、最高ニャ!』
『王族に勝ったワン!』
『祝・門前払いクエッ!』
そして森は、今日も平和だった。
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