【完結】婚約破棄された令嬢リディア、断罪されて転生したら、魔王になりました

なみゆき

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魔王リディアの後日譚

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◇◇◇甘味と労働革命 ◇◇◇

魔界が甘味と知恵で満たされた頃、リディアはふと呟いた。
「スイーツは心を癒す。けれど、働く者の心も守らなければ、甘さは苦みに変わるわ。」

こうして、魔王リディアは魔界に“労働改革”を導入した。
ー労働時間:1日8時間
ー休日:週休2日
ー有給休暇:年20日以上
ー病気休暇:申請不要、休んでいい


魔族たちは驚いた。
「えっ…働きすぎると、マカロンの味が落ちるって…?」
「魔王様は、我らの胃袋だけでなく、心まで守ってくださるのか…!」


魔菓子工房・リディア印では、職人たちが笑顔で働き、休憩時間には「試食会」が開かれた。 新人魔族が「このプリン、涙の味がする…」と呟けば、先輩が「それは魔獣の涙入りだからね」と優しく教える。


やがて、魔王軍は人間界へ進軍──いや、“進菓”した。


王国の町に「魔王印のスイーツ店」が次々と開店。 フィナンシェの香りが広場を包み、マカロンの色彩が民の心を染める。


そして、魔王リディアはこう宣言した。
「この店で働く者には、魔界と同じ待遇を保証する。週休二日、八時間労働、有給休暇、病気休暇──すべて、甘味のために。」


王国の民はざわついた。
「えっ…そんな職場、聞いたことない…」
「王宮の兵士より、魔王印の店員の方が幸せそうだ…」


王国の兵士たちは次々と辞職届を提出。
「剣よりスプーンを持ちたいです!」
「魔王様のマドレーヌを焼く方が、国を守る気がします!」

王国の軍は崩壊し、代わりに「魔王印のスイーツ店・王都支店」が拡張された。



◇◇◇ 魔界のスイーツ職人たちの裏話 ◇◇◇

魔菓子工房の奥には、選ばれし職人たちの秘密の部屋がある。

①職人グリム:元魔界の処刑人。今は「焦がしキャラメル担当」。焦がし加減に命を懸ける。
②職人ルーナ:元幻術師。マカロンの色彩を魔法で調整。「色は感情の言語」と語る。
③職人ボルド:元魔獣使い。プリンの揺れ具合にこだわりすぎて、毎日3時間揺らしている。
 

彼らはかつて恐れられた存在だったが、今では「甘味の守護者」と呼ばれている。


◇◇◇ 転生図書館・禁書コーナー ◇◇◇

魔界の知識の殿堂「転生図書館」には、一般魔族には閲覧できない“禁書”コーナーが存在する。
そこに並ぶのは、人間界でも議論を呼んだ危険な転生漫画たち。

『転生したら王妃の毒だった件』  
毒そのものが意識を持ち、王妃の体内から復讐を始める物語。魔族の毒使いが感動して泣いた。

『ざまぁ令嬢の断罪ループ』  
何度断罪されても転生して復讐する令嬢の話。ゼル参謀は「これはもはや哲学だ…」と呟いた。

『転生したらスイーツ職人だった件』  
魔王リディアがこっそり読んでいる一冊。人間界のスイーツ描写に「これは…参考になる」とメモを取っている。

禁書コーナーは、魔族の感情を揺さぶりすぎるため、閲覧は一日30分までと制限されている。
こうして、魔王リディアの革命は、甘味と労働、そして物語によって世界を変えた。

魔族も人間も、スプーンを手に取りながら、こう語る。
「魔王様の店で働きたい…」
「週休二日って…夢じゃなかったんだ…」



そして、魔王リディアは静かに微笑む。
「甘いだけじゃない。優しさには、制度が必要なのよ。」


森の奥で聞こえるその声は、今日も誰かの心を溶かしている
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