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(中身アラフィフ、外見7歳もうすぐ8歳になる予定)
カイルとはまったく違うタイプの少年に、私は出会った。
栗色の髪に快活な笑顔。騎士団長の息子として、剣術に情熱を燃やす少年――グレイ・バルフォード。真面目で誠実、少し照れ屋。でもその胸の奥には、「誰かを守りたい」という強い意志が、炎のように燃えていた。
「俺、強くなってみんなを守るんだ。セレナも、絶対守るよ!」
(そんなこと言われたら…母性が爆発するわ)
彼は弱い者いじめを見つけると、相手が年上でも臆することなく立ち向かう。
その勇敢さは称賛に値するけれど、同時に“無鉄砲さ”でもある。
(グレイ…そのまっすぐさ、ずるい人に付け込まれそうで心配になるのよ。おばちゃん、胃がキリキリする)
そんな彼の姿に、私は前世で出会った“熱血漢の先輩”を思い出した。
職場で業務を押し付けられていた私に代わって、唯一上司に声を上げてくれた人。
「こんな負担、彼女一人に背負わせるのはおかしい」と堂々と訴えてくれた。
その言葉に救われたけれど
――その人は結局、その発言が原因で希望していたプロジェクトから外されてしまった。
(正しさを貫く人ほど、損をすることがある。だからこそ、私はグレイの“ブレーキ役”になろうと思った)
祖父と一緒に見ていた時代劇のチャンバラを思い出し、剣の構えを少しだけアドバイスしてみた。
「グレイ、腕の振り方はこう。力じゃなくて、流れを意識して…」
「セレナ、もう少し具体的に、指導お願い。」
「具体的…そうね。風を受けて流れに任せて…」
(時代劇で見た様子を表してるだけとは言えず…)
彼は目を輝かせて頷き、それ以来、なぜか私を“剣の師匠”としてあがめるようになった。
「セレナ師匠!今日も稽古、お願いします!」
(いやいや、全てテレビの知識なんですけど!しかも祖父の解説付き!)
でも、彼にとって“教えてくれる人”がいることは、何より嬉しかったのだろう。
父は騎士団長。グレイはその背中を追いかけながら、認めてもらいたくて、弱さを見せられずにいた。
(だからこそ、私を師匠として慕ってくれる。…うん、いいよ。おばちゃん、できることは受け止めるから)
ある日、王子が来ているときにグレイも我が家に来た。
王宮で流行っているというそろばんを見せると、最初は「なんだこれ?」と不思議そうにしていたグレイも、使い方を教えると目の色が変わった。
「セレナ師匠、これ…面白い!俺、もっと速く計算できるようになりたい!」
(きたきた、負けず嫌いスイッチオン)
一桁の足し算で苦戦していたのに、数日後には「三桁の掛け算、もう一回!」と挑戦するようになった。計算できる桁数もどんどん増えて、私のそろばん教室はにぎやかになっていった。
「セレナ師匠、俺、カイルより速く計算できるようになる!」
「レオン殿下、そろばんの玉はこう動かすんですよ。…そうそう、さすが覚えるのが早いです!」
(おばちゃん、そろばんの先生として王族まで教える日が来るなんて…人生ってわからないものね)
グレイは勉強が苦手だった。一方、カイルは“頭でっかち”の秀才。当然、最初はぶつかった。
「なんだよ、カイルって。いつも偉そうにしてさ!」
「君こそ、感情だけで動くから非効率なんだ」
(ああ…これは完全に“文武対立”の構図ね。おばちゃん、仲裁に入ります。)
でも、私は知っている。こういう子たちは、間に“おばちゃん”が入ると、意外とすぐ仲良くなる。
「グレイ、カイルの言ってること、ちょっと聞いてみよう? カイル、グレイの剣の構え、すごく綺麗だったよ。見てみる?」
最初は渋々だった二人も、少しずつ歩み寄っていった。
グレイはカイルに読み書きを教わり、カイルはグレイから体の使い方を学ぶようになった。
「セレナ、…グレイって、意外と面白いし、計算が早いよね。やはり剣を使うから指が早いのかな?」
「師匠、カイルって、頭だけじゃなくて、運動神経もあるし、意外と根性あるよな」
(うんうん、いいぞ…友情育ってるぞ…!おばちゃん、感無量)
今では、二人は“文武両道コンビ”として、私の両隣に座るのが定番になった。
グレイは剣を振るい、カイルは戦略を練る。そして私は、時代劇仕込みのセリフを吐きながら、そろばん片手に彼らの成長を見守っている。
「師匠、今日の稽古は“風の構え”でお願いします!」
(剣の構え方…一番初めのアドバイスの時に、"風"をと言ってしまい、とっさに型の名前を聞かれて困ったから、適当にそれっぽく言っただけだけど…)
(今更あれは適当とも言えないし。でも、グレイって真っすぐに努力する子ね…)
「セレナ、あの経済理論、もう一回教えてくれる?」とカイルから聞かれる。
(経済理論も、昔会計部門に異動になった時に読んだ古い資料だけど…まあいっか。)
「師匠、そろばんの新しい問題、出して!」
(はいはい、今日も元気で何よりです。)
カイルとはまったく違うタイプの少年に、私は出会った。
栗色の髪に快活な笑顔。騎士団長の息子として、剣術に情熱を燃やす少年――グレイ・バルフォード。真面目で誠実、少し照れ屋。でもその胸の奥には、「誰かを守りたい」という強い意志が、炎のように燃えていた。
「俺、強くなってみんなを守るんだ。セレナも、絶対守るよ!」
(そんなこと言われたら…母性が爆発するわ)
彼は弱い者いじめを見つけると、相手が年上でも臆することなく立ち向かう。
その勇敢さは称賛に値するけれど、同時に“無鉄砲さ”でもある。
(グレイ…そのまっすぐさ、ずるい人に付け込まれそうで心配になるのよ。おばちゃん、胃がキリキリする)
そんな彼の姿に、私は前世で出会った“熱血漢の先輩”を思い出した。
職場で業務を押し付けられていた私に代わって、唯一上司に声を上げてくれた人。
「こんな負担、彼女一人に背負わせるのはおかしい」と堂々と訴えてくれた。
その言葉に救われたけれど
――その人は結局、その発言が原因で希望していたプロジェクトから外されてしまった。
(正しさを貫く人ほど、損をすることがある。だからこそ、私はグレイの“ブレーキ役”になろうと思った)
祖父と一緒に見ていた時代劇のチャンバラを思い出し、剣の構えを少しだけアドバイスしてみた。
「グレイ、腕の振り方はこう。力じゃなくて、流れを意識して…」
「セレナ、もう少し具体的に、指導お願い。」
「具体的…そうね。風を受けて流れに任せて…」
(時代劇で見た様子を表してるだけとは言えず…)
彼は目を輝かせて頷き、それ以来、なぜか私を“剣の師匠”としてあがめるようになった。
「セレナ師匠!今日も稽古、お願いします!」
(いやいや、全てテレビの知識なんですけど!しかも祖父の解説付き!)
でも、彼にとって“教えてくれる人”がいることは、何より嬉しかったのだろう。
父は騎士団長。グレイはその背中を追いかけながら、認めてもらいたくて、弱さを見せられずにいた。
(だからこそ、私を師匠として慕ってくれる。…うん、いいよ。おばちゃん、できることは受け止めるから)
ある日、王子が来ているときにグレイも我が家に来た。
王宮で流行っているというそろばんを見せると、最初は「なんだこれ?」と不思議そうにしていたグレイも、使い方を教えると目の色が変わった。
「セレナ師匠、これ…面白い!俺、もっと速く計算できるようになりたい!」
(きたきた、負けず嫌いスイッチオン)
一桁の足し算で苦戦していたのに、数日後には「三桁の掛け算、もう一回!」と挑戦するようになった。計算できる桁数もどんどん増えて、私のそろばん教室はにぎやかになっていった。
「セレナ師匠、俺、カイルより速く計算できるようになる!」
「レオン殿下、そろばんの玉はこう動かすんですよ。…そうそう、さすが覚えるのが早いです!」
(おばちゃん、そろばんの先生として王族まで教える日が来るなんて…人生ってわからないものね)
グレイは勉強が苦手だった。一方、カイルは“頭でっかち”の秀才。当然、最初はぶつかった。
「なんだよ、カイルって。いつも偉そうにしてさ!」
「君こそ、感情だけで動くから非効率なんだ」
(ああ…これは完全に“文武対立”の構図ね。おばちゃん、仲裁に入ります。)
でも、私は知っている。こういう子たちは、間に“おばちゃん”が入ると、意外とすぐ仲良くなる。
「グレイ、カイルの言ってること、ちょっと聞いてみよう? カイル、グレイの剣の構え、すごく綺麗だったよ。見てみる?」
最初は渋々だった二人も、少しずつ歩み寄っていった。
グレイはカイルに読み書きを教わり、カイルはグレイから体の使い方を学ぶようになった。
「セレナ、…グレイって、意外と面白いし、計算が早いよね。やはり剣を使うから指が早いのかな?」
「師匠、カイルって、頭だけじゃなくて、運動神経もあるし、意外と根性あるよな」
(うんうん、いいぞ…友情育ってるぞ…!おばちゃん、感無量)
今では、二人は“文武両道コンビ”として、私の両隣に座るのが定番になった。
グレイは剣を振るい、カイルは戦略を練る。そして私は、時代劇仕込みのセリフを吐きながら、そろばん片手に彼らの成長を見守っている。
「師匠、今日の稽古は“風の構え”でお願いします!」
(剣の構え方…一番初めのアドバイスの時に、"風"をと言ってしまい、とっさに型の名前を聞かれて困ったから、適当にそれっぽく言っただけだけど…)
(今更あれは適当とも言えないし。でも、グレイって真っすぐに努力する子ね…)
「セレナ、あの経済理論、もう一回教えてくれる?」とカイルから聞かれる。
(経済理論も、昔会計部門に異動になった時に読んだ古い資料だけど…まあいっか。)
「師匠、そろばんの新しい問題、出して!」
(はいはい、今日も元気で何よりです。)
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