【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき

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(中身アラフィフ、外見12歳)


 レオンとイザベラの婚約内定を祝うお茶会から帰ると、母が「楽しかった?」と聞いてきた。
私はいつものように「普通だったよ」と答えた。

……けれど、心の中では“普通”なんて言葉じゃ到底片付けられない感情が、胃のあたりでぐるぐる渦巻いていた。

ミレーヌの登場は、まるで舞台の幕開け。
 白いドレスに、計算された微笑み。
間の取り方は完璧、セリフは“聖女風味”。 
あれね、完全に“狙ってる系”。しかも、男たちがまんまと釣られてるのがまた腹立つ。


エドワルドが「聖女みたいだ」って言ってたけど、聖女かどうかはともかく、“何か持ってる”のは確か。 
そしてレオンもカイルもエドワルドも、彼女の前では妙に従順。 
まるで「この人、裏で何か握ってるんじゃ…」って顔してるのよ。 

(あれって、“特別枠”に弱い男たちの典型的な態度よね。前世でも見たわ。肩書きと雰囲気だけで判断するタイプ。)


極めつけは、手相タイム。


「運命が見えるんです」って言った瞬間、私、紅茶吹きそうになったからね。
 運命?手相?それ、前世で何回聞いたと思ってるのよ。

「私、手相見れるんです」 
「もしかしたら、あなたが、私の運命の相手かもしれません…♡」

って言って、男の手を握りしめて上目遣い。
 はい、出ました。恋愛詐欺の初期フォーム。
 悩み相談で「〇〇さんしか相談できなくて…」って言われて、何人の男が“俺だけに心開いてくれてる”って勘違いしたか。

(そもそも、彼氏の話を赤の他人の男に二人きりで相談するって、どうなのよ?それを真顔で受け止める男も男よ。何人に同じセリフ言ってるか、数えてみなさいっての。)

(恋愛を“感動の物語”として楽しんでる男たちへ。こっちは“恋愛テクニック大全”を前世でコンプリートしてるのよ。あの手この手、全部見た。むしろ、あの手法に名前つけて教科書に載せたいくらい。)

……と、心の中のおばちゃんが、今日も元気に毒を吐いていた。


 そして、エドワルド。 
彼は、私を褒めたことなんて一度もない。
 私の発明に対しても、毎回「へー、で、利益は?」のみ。
 興味があるのは、私じゃなくて、利益のみ。まるで前世で旦那をATM扱いしていた妻たちのようだわ。

でも、ミレーヌの話には満面の笑みであいづち連打。
 彼女が手を握って「エドワルド様ってすごいですね」なんて言った瞬間、彼の顔は完全に“落ちた男”のそれ。 目がとろけてたわ。チーズかと思った。


(見るだけで寒気がするのよ。あの二人の世界、こっちは入場拒否したいのに、強制観覧させられてる気分。愛情なんてこれっぽっちもないけど、嫌いな人同士の茶番を目の前で見せられるのは、もはや精神的拷問よ。しかもノーギャラ。)


 母は、私とエドワルドの間に漂う氷点下の空気にうっすら気づいてる。
 でも何も言わない。父も何もしない。私も、何も言わない。 
というか、言えない。証拠がないから。 
今さら言ったところで、何かが変わるわけでもないし。

父はグランディール侯爵家との縁にウキウキ。
 使用人たちは「お嬢様、さすがですわ~」と目をキラキラさせてるけど、 そのキラキラ、私の内心のドロドロを照らしてくれるライトにはならないのよ。

私は冷静に状況を分析していた。 ミレーヌの登場、エドワルドの態度、レオンたちの微妙な反応。 
全部が、何かの“前兆”にしか見えなかった。

ミレーヌが本当に聖女かどうかは知らない。 でも、それ以上に気になるのは
――彼女の“演技力”。


(あの子、絶対なんか企んでるわよ。おばちゃんの勘がビンビンに反応してる。あれは“天然”じゃない、“計算”よ。しかも関数レベルのやつ。)


 私は、エドワルドの言動をさらに細かくメモに残すようになった。 日時、言葉、表情、鼻の伸び具合まで。 まるで刑事。しかも恋愛事件専門のベテラン捜査官。
 自分で言うのもなんだけど、証拠集めのスキル、転生前より上がってる気がする。

でも、それくらいしないと、この婚約は“破談”に持ち込めない。
 感情じゃなくて、証拠で殴るのが貴族社会のルール。 「なんかムカつく」じゃ通用しないのよ。
 だから私は、笑顔を保ちながら、心の奥で静かに“その日”を待っている。


婚約が崩れる日。私が自由になる日。 
そして、ミレーヌの“聖女ごっこ”の正体が明らかになる日。

そのとき私は、“おばちゃん”としてじゃなく、“セレナ”として、 この世界に生きる人間として、堂々と立っていたい。


(そうじゃないと、私が転生してきた意味がない。今回こそ、自分の人生を生きるって決めたんだから。前世では、空気読んで黙ってたけど、今世では空気より証拠を読んで動くのよ。)


(ちなみに、エドワルドの“とろけ顔”は、今日だけで5回もみたわ。ミレーヌが「すごいですね♡」って言うたびに、彼の脳内に花畑が咲いてるのが見える。あれ、もう“脳内春祭り”よ。)


(でもいいの。私は記録してる。冷静に、着々と。 そのメモ帳、最終的には“婚約破棄のための完全攻略本”になる予定だから。)

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