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コーラルピンク
4. アイデンティティ
しおりを挟むー … in the case of エリー …
デスクで仕事をしながら、
エリーは
座っている椅子を少しだけ引いた。
デスクの下にある、自分のつま先を見る。
「 ふふっ 」 自然と、笑みが零れた。
控えめなスモーキーピンク色の、
シンプルな DIANA の パンプス。
ヒールは 9cm もあり、
ちょっと視界が高過ぎるけれど、
それでも 良かった。
デスクの引き出しを開けると、
小さなメッセージカードが
すぐに目に留まる。
【 エリーが ステキな靴を履いて
前を歩いていけますように 】
決して、綺麗な字ではないけれど、
それでも 良かった。
「 大人なのに、小学生みたいな字。
ふふっ 、可愛いなぁ。」
引き出しを閉めて、
エリーはまた
パソコン画面に目を向ける。
「 誰が、小学生なの?」
エリーのすぐ後ろから、声が聞こえた。
顔だけ軽く振り返ると、
レントが にっこり微笑んで立っていた。
「 何でもないよ♪」
エリーも、レントに負けないぐらい
綺麗な笑顔を浮かべる。
「 エリー、今日 お誕生日でしょ 」
レントは そう言うと、
可愛くラッピングされた
手のひらサイズの袋を手渡した。
「 えっ! ありがとう♪ 嬉しいな 」
顔の前で両手を合わせてから、
エリーは 小さく拍手をする。
「 気に入ってくれると、俺も嬉しい 」
「 うん。ありがとう!
レントは、いつも優しいね。
みんなの誕生日を覚えてくれて、
みんなにプレゼントを毎年渡して。」
「 俺が勝手に、
好きでやってる事だから。」
エリーは、彼の目の前で
プレゼントをゆっくりと開けた。
「 わぁ~♪ 可愛い!
こういうの好きなの! ありがとう♪」
エリーは袋から、
コーラルピンク色のガラス鉢に入った、
小さなドライフラワーを取り出した。
「 良かった! 喜んでくれて 」
レントは、ホッと安心した顔をする。
「 お花は綺麗だけど、
すぐに枯れちゃうから 寂しいの。
でも、ドライフラワーなら、
ずっと 綺麗なままだもんね♪
私、ドライフラワーが大好きなんだ 」
鼻歌まじりに、エリーは
デスクの上に ドライフラワーを飾った。
「 エリーのデスクの上は、
女の子らしい物ばかり溢れてるね 」
レントは 笑った。
「 だって、
いくつになっても 女の子だもん♪」
「 … いくつに、なったんだっけ?
あっ、女性に年齢を聞くのは失礼かな 」
「 失礼じゃないよー、平気 平気♪」
エリーは、レントが選んでくれた
小さくて可愛いドライフラワーを見つめ、
それから
座っている椅子の向きを くるりと変えた。
レントの顔を見つめて、
「 24だよ 」 と 、微笑んで 。
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