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手のひら返し
【 4 】 色恋沙汰
しおりを挟む無意識 、だった 。
アタシは無意識に 、
小さく震わせている彼女の手を、
ギュッ… と、強く握りしめていた。
隣同士に座り 、
アタシは右側にいる彼女の左手を、
強く握りながら、ビールを飲む 。
美咲は、私の意外な行動に驚き、
そして、満面の笑みを浮かべた 。
「 嬉しいっ! アンジュ、好き♪」
「 ……… 」
アタシは彼女の顔を見ずに、
棚にズラリと並べられた、
真っ正面の酒ボトルを眺める 。
「 私、さっきアンジュの事、
友達!って言ったけど…… 、
恋人!って思ってもいいかな?」
「 それはダメだな (笑) 」
アタシが笑うと、
彼女は唇を尖らせながら、
すねて見せる 。
「 なぁ~んでぇ~?
" 勝手に思う分にはいい " って、
さっきは言ってたじゃん!」
美咲は、握り合っている手を、
ギュッ!ギュッ! と、
何度も強く握り返しながら、
すねたまま、言ってくる。
「 チバちゃんがいんだろ 。
っていうか、
アタシにも選ぶ権利あんだろ。」
あっ… !
また、きつく言っちゃった… 。
まぁ、いっか … 。
彼女はきっと今、一瞬 、
哀しそうな顔をしたかもしれない。
だからアタシは、
敢えて彼女の顔は見なかった 。
「 …… それでね、私のママが 、」
何も無かったように、
美咲はまた喋り始めた 。
「 私が、父親にヤラれてる時に、
部屋に……、 入ってきちゃって。」
「 うーーんっ…… 」
なんも言えねぇーー…… 。
「 ママは激怒して、
父親と離婚したの 。」
「 へぇ~! 良かったじゃん!」
一件落着 、では ないけど… 。
「 でも、ママはね 、
男の人がいないと… ダメな人で。
すぐに再婚 、したんだけど…… 」
美咲が 、
アタシの手を強く握った 。
「 …… いいよ、無理に話さなくて。
ていうか、何でアタシに話すの?」
美咲の顔を チラリ と見てみる。
彼女は、ポロポロ…
丸く輝く涙をこぼしていた 。
気付かなかった… 泣いてる事に。
「 おいおいっ…… 」
アタシは溜め息まじりに、
カウンター椅子をくるりと回し、
彼女の頭を抱きしめ、引き寄せる。
「 何で…… 、かな ?
話せば 、楽になれるかな?って…」
美咲は、アタシに頭を抱かれて、
思いきり泣き出してしまった 。
「 …… 楽になった ? 話して。」
アタシは、もう片方の手で、
瓶ビールを軽くラッパ飲みする。
アタシが、楽じゃねーわ… 。
「 うん…… 、楽に……、うん 。
消えないよね、話したって… 。」
彼女の涙声が 、
アタシの耳の奥に、こびりつく 。
「 消えねーよな 、話したって 。」
シド の、 顔と声を 思い出した 。
「 消えねーから、つらいよな」
あなたが 、頭から、離れない
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