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ブラックアウト ( 最終章 )
【 10 】 閃光少女
しおりを挟むケンから真実を聞かされた後 … 、
消える事も出来ないまま 、
歪むような苦痛を感じていた 。
愛憎 … 。
醜い 、愚かな感情が 、
ふつふつ… と煮えたぎり始めた時 、
彼女の目を通して見せられている 、
ケンの楽しそうな天使の笑顔を見て 、
本当に好きな人と話すと 、
こんなふうに笑えるんだな… と 、
彼の笑顔に救われていく 。
ケンが幸せなら 、
それでいい… これでいいんだ、と 。
「 機材トラブルがあってさ 、
残りのライブが延期になったから、
早く戻ってこれたんだよ 。」
災難だったはずなのに 、
ケンは、
目の前の夜景と" 私 " を交互に見ながら、
嬉しそうに話していた 。
「 そうだったんだ。大変だったね。
ライブは盛り上がったの?」
彼女はケンに普通に話しかけてる 。
アタシの口調ではなく 、
女性らしい 、普通の口調で 。
そんな彼女の話し方に 、
ケンは一瞬 目を丸くしてから 、
また笑顔になった 。
「 盛り上がったよ~♪ 今回はね、
洋楽のコピーも導入するイベントで、
俺らは、
マイ・ケミカル・ロマンス の 、
【 House of Wolves 】って曲を 、
ラストにやったんだけど、
大盛り上がりだった!
普段は、レッチリやるんだけどね!
初の試み!見せたかったなぁ~♪
ていうか、アンジュちゃんは 、
マイケミ も、レッチリ も、
両方聴かないか!(笑) 知らないよね?」
知らない …… 聴かない ……
「 知ってるよ~!
私 、洋楽バンド大好きだもん♪」
彼女の楽しそうに話す笑顔に 、
ケンは すごく驚いていた 。
アタシは 彼と一緒にいた時 、
こんな会話をした事が無かったから。
彼と、音楽の… バンドの話なんて。
「 嘘っ! 意外っ!! えっ、本当に?
だって今までそんな事 、
一度も言ってこなかったじゃん!」
ケンは、声を出して笑っていた 。
自分の好きな話題を 、
自分が好きな女の子と普通に話せて 、
本当に… いい顔をしていた 。
アタシには 、こんな事… 出来ない 。
ケン 、良かったね… 。
「 マイケミ はねー 、私は… 、
【 I Don't Love You 】って曲が、
好きなの 。歌詞を和訳にすると 、
とても哀しくて… 、
せつない曲なんだけど。」
彼女が話す言葉を 、
ケンは興味深く聞いていた 。
「 そうなんだ?
俺も改めて聴いてみようかな。」
「 曲のタイトルは 、
【 君を愛してない 】なんだけど… 、
相手が嫌いになったから、
別れるんじゃなくて 、
相手を愛しているが故に … 、
相手の事を思って別れる。っていう、
愛する人の為に、
相手を不幸にしない為に、
別れを切り出す 。そういう曲なの 。
【 あなたを愛していない 】は 、
本心ではないの 。聴いてみて 。」
彼女がケンを見ながら 、
真面目に話していく姿を 、
彼は、笑顔の中に戸惑いを隠せず、
彼女を真っ直ぐに見つめていた 。
「 えっ… 、それって、俺の事 ?」
「 えっ? 何が… ?」
ケンの勘違いが可愛くて 、
アタシは笑いそうになる 。
" 私 " は 、シドを想い話していた 。
だけどアタシは 、彼女のその説明に 、
ケン を 重ねながら聞いていた 。
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