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4.王女side
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微笑む女性の顔を見て、思わず笑みを浮かべてしまいました。というのも彼女は、リベルタ王国の王妃付きの筆頭女官だったからです。
「お久しぶりですね、カトリーヌ・ラグランジュ伯爵夫人」
「殿下……いいえ、テレサ様……申し訳ございません。私だけが……」
「謝る必要などありません。貴女が無事で良かったわ。伯爵もこちらに?」
「……夫は亡くなりました」
「…………そう……」
彼女の夫は近衛騎士団の団長。
今、この場にいないと言う事が何を指すのか……分からない程、無知ではありません。
「夫は己の仕事に誇りを持っておりました。最後の瞬間まで己の役目を立派に果たし終えられました。きっと、夫も本望だったことでしょう。そんな夫を私は誇りに思っております」
毅然とした態度を取る彼女ですが、よく見れば膝の上で強く握り締められた手が小刻みに震えています。おそらく……いえ、間違いなく無理をしているのでしょう。
「辛いことを思い出させてごめんなさいね、伯爵夫人。……それにしても、こんな形でまた再会する事になるとは思いませんでした」
「私もです。テレサ様の安否はかの国では依然不明のままでしたので、多くの者達は既に革命軍の手に落ちたものとばかり思っておりました……まさか、王太后陛下と共に逃げ延びていらっしゃったとは……」
「ふふっ。おばあ様を驚かせよう内緒で見舞いに行ったのが運命の分かれ道だったのでしょうね……」
サプライズのつもりで行ったもの。
私が王宮を抜け出した事を知るのは両親と極一部の者達だけ。
「神がテレサ様をお守りになったのです」
「……そうかもしれませんね」
この四年、神を恨まなかった日はなかった。そう言えば、彼女は悲しむかもしれない……それを思うと何も言えなかった。あの全てを失った日から四年。
「それにしても……驚きました。まさかテレサ様がコムーネ王国の王太子殿下と結婚なさるとは……思いもよりませんでした」
「……両国にとって、私はまだ利用価値があるようですから」
「……テレサ様、ひとつ確認しておきたい事があるのですが……」
「何でしょう?」
「テレサ様は、コムーネ王国の王太子殿下のその……ご内情を御存知なのかと思いまして……」
「勿論、知っております」
「知った上で嫁がれると仰いますか」
「……他に私に道はありませんもの」
「……失礼を致しました」
その後、私達は母国の窮状を話合いました。
国境を封鎖する動きがあり、伯爵夫人がこちらに亡命したのは本当につい最近の話だったと知った時は驚きを隠せませんでした。修道院で隔離生活を送っているとはいえ、おばあ様の意向で国の現状はある程度把握していたからです。
「革命政府は貴族が逃げ出すのを恐れているようです。近衛騎士団は解体され、新たな軍が発足致しました。現在、国境を警備しているのは正規軍ではなく革命に参加した一般市民です」
「一市民に国境を守らせるなど……」
「テレサ様、それは違います」
「え?」
「彼らは守っているのではありません。監視しているのです」
「監視……ですか?」
「はい。亡命する貴族をターゲットにしているのです。国境を超えるために貴族達は平民に扮して逃げ出してはいるようですが……それでも無事に逃げ延びた者は多くはおりません」
見つかった貴族がその後どうなったか……聞かずともその末路は一つしかありません。それでも逃げ出す者が多いのはそれだけ革命家たちが過激なせいでしょう。国王夫妻を殺し、彼らの忠臣を殺したのです。明日は我が身だと感じている貴族は多いでしょうね。
「お久しぶりですね、カトリーヌ・ラグランジュ伯爵夫人」
「殿下……いいえ、テレサ様……申し訳ございません。私だけが……」
「謝る必要などありません。貴女が無事で良かったわ。伯爵もこちらに?」
「……夫は亡くなりました」
「…………そう……」
彼女の夫は近衛騎士団の団長。
今、この場にいないと言う事が何を指すのか……分からない程、無知ではありません。
「夫は己の仕事に誇りを持っておりました。最後の瞬間まで己の役目を立派に果たし終えられました。きっと、夫も本望だったことでしょう。そんな夫を私は誇りに思っております」
毅然とした態度を取る彼女ですが、よく見れば膝の上で強く握り締められた手が小刻みに震えています。おそらく……いえ、間違いなく無理をしているのでしょう。
「辛いことを思い出させてごめんなさいね、伯爵夫人。……それにしても、こんな形でまた再会する事になるとは思いませんでした」
「私もです。テレサ様の安否はかの国では依然不明のままでしたので、多くの者達は既に革命軍の手に落ちたものとばかり思っておりました……まさか、王太后陛下と共に逃げ延びていらっしゃったとは……」
「ふふっ。おばあ様を驚かせよう内緒で見舞いに行ったのが運命の分かれ道だったのでしょうね……」
サプライズのつもりで行ったもの。
私が王宮を抜け出した事を知るのは両親と極一部の者達だけ。
「神がテレサ様をお守りになったのです」
「……そうかもしれませんね」
この四年、神を恨まなかった日はなかった。そう言えば、彼女は悲しむかもしれない……それを思うと何も言えなかった。あの全てを失った日から四年。
「それにしても……驚きました。まさかテレサ様がコムーネ王国の王太子殿下と結婚なさるとは……思いもよりませんでした」
「……両国にとって、私はまだ利用価値があるようですから」
「……テレサ様、ひとつ確認しておきたい事があるのですが……」
「何でしょう?」
「テレサ様は、コムーネ王国の王太子殿下のその……ご内情を御存知なのかと思いまして……」
「勿論、知っております」
「知った上で嫁がれると仰いますか」
「……他に私に道はありませんもの」
「……失礼を致しました」
その後、私達は母国の窮状を話合いました。
国境を封鎖する動きがあり、伯爵夫人がこちらに亡命したのは本当につい最近の話だったと知った時は驚きを隠せませんでした。修道院で隔離生活を送っているとはいえ、おばあ様の意向で国の現状はある程度把握していたからです。
「革命政府は貴族が逃げ出すのを恐れているようです。近衛騎士団は解体され、新たな軍が発足致しました。現在、国境を警備しているのは正規軍ではなく革命に参加した一般市民です」
「一市民に国境を守らせるなど……」
「テレサ様、それは違います」
「え?」
「彼らは守っているのではありません。監視しているのです」
「監視……ですか?」
「はい。亡命する貴族をターゲットにしているのです。国境を超えるために貴族達は平民に扮して逃げ出してはいるようですが……それでも無事に逃げ延びた者は多くはおりません」
見つかった貴族がその後どうなったか……聞かずともその末路は一つしかありません。それでも逃げ出す者が多いのはそれだけ革命家たちが過激なせいでしょう。国王夫妻を殺し、彼らの忠臣を殺したのです。明日は我が身だと感じている貴族は多いでしょうね。
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