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~ロクサーヌ王国編~
21.第一騎士団団長side
「……ち、父上……?……な、なぜ……?」
父である私に斬られたことに理解が及ばない様子の息子。目を大きく見開き、口を半開きにしたまま、私を見ていた。
信じられない、といった様子だ。この未熟な息子からすれば、親が息子を斬り殺すなど、考えもしなかったことだろう。
「女の色香に惑わされて、このザマとはな……情けない」
私は心底がっかりした声でそう言った。
「うっ、うあ……」
息子は何か言おうとしているが、言葉にならない。
「罪を捏造するなど、騎士の家系にあってはならないことだ」
「あ、あ……」
「どうして王太子殿下をお止めしなかった。ゲオルグ」
「うぅぅ……」
「主君が誤った道に進むなら、それを正すのが臣下の役目だ。それが騎士というものだ」
「あ……あ、あ……」
ゲオルグは何か言おうとしているが、言葉にならない。
「お前は騎士失格だ」
驚愕の表情を浮かべる息子に私は剣を振り上げた。そして、そのまま振り下ろす。
「ぐぎゃあぁぁぁ!!」
絶叫と鮮血。
私は剣を鞘に納めた。
絶命した息子を見下ろす。
「愚かな息子だ。だが、私にとっては可愛い息子だ」
どちらにしても息子はただでは済まされない。
王太子殿下も罰を受けるだろう。殿下の寵愛を受けていた少女も、それに賛同していた者達も等しく罰せられるはずだ。
代々近衛騎士を率いてきたグレイ伯爵家の嫡男。ゲオルグは跡取り息子だ。その息子が軽い刑罰になるはずがない。最も重い罰になる恐れがあった。最悪の場合は生贄同然に処刑台に立たされる可能性もある。
それは私も望むところではない。
「……本当にバカな子だ」
もう一度、そう呟いた。そして、再び剣を抜き、それを自分の首に当てる。
「私もまた愚かな父親だ」
妻と幼い次男は既に国外行きの馬車に乗っている。
使用人達も暇をやった。
私の遺書と共に辞表は今日の夕方には王宮に届くだろう。
「お前を一人死なせることはしない。私も一緒だ」
私は短剣を自分の首に突き立てた。
「ぐっ!」
激痛が全身を走る。
だが私は短剣を更に押し込み、そのまま横に引き裂くように短剣を動かした。
その場に崩れ落ちる感覚。
意識が薄れていく。
こんな最後を迎えるとは考えたこともなかった。
息子をこの手にかけることも。
王太子殿下を恨めばいいのか。それとも発端となった少女を恨めばいいのか……。
私は自分の愚かさに自嘲する。
騎士は主君に忠義を尽くすもの。決して主君を裏切ってはならない。
そうだ。
私が息子に教えたことだ。
あの子は……ゲオルグは、父親の命を忠実に守ったに過ぎない。
愚かな主君を命を懸けて諌めることを教えなかったのは他ならぬ私自身だった。
父である私に斬られたことに理解が及ばない様子の息子。目を大きく見開き、口を半開きにしたまま、私を見ていた。
信じられない、といった様子だ。この未熟な息子からすれば、親が息子を斬り殺すなど、考えもしなかったことだろう。
「女の色香に惑わされて、このザマとはな……情けない」
私は心底がっかりした声でそう言った。
「うっ、うあ……」
息子は何か言おうとしているが、言葉にならない。
「罪を捏造するなど、騎士の家系にあってはならないことだ」
「あ、あ……」
「どうして王太子殿下をお止めしなかった。ゲオルグ」
「うぅぅ……」
「主君が誤った道に進むなら、それを正すのが臣下の役目だ。それが騎士というものだ」
「あ……あ、あ……」
ゲオルグは何か言おうとしているが、言葉にならない。
「お前は騎士失格だ」
驚愕の表情を浮かべる息子に私は剣を振り上げた。そして、そのまま振り下ろす。
「ぐぎゃあぁぁぁ!!」
絶叫と鮮血。
私は剣を鞘に納めた。
絶命した息子を見下ろす。
「愚かな息子だ。だが、私にとっては可愛い息子だ」
どちらにしても息子はただでは済まされない。
王太子殿下も罰を受けるだろう。殿下の寵愛を受けていた少女も、それに賛同していた者達も等しく罰せられるはずだ。
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それは私も望むところではない。
「……本当にバカな子だ」
もう一度、そう呟いた。そして、再び剣を抜き、それを自分の首に当てる。
「私もまた愚かな父親だ」
妻と幼い次男は既に国外行きの馬車に乗っている。
使用人達も暇をやった。
私の遺書と共に辞表は今日の夕方には王宮に届くだろう。
「お前を一人死なせることはしない。私も一緒だ」
私は短剣を自分の首に突き立てた。
「ぐっ!」
激痛が全身を走る。
だが私は短剣を更に押し込み、そのまま横に引き裂くように短剣を動かした。
その場に崩れ落ちる感覚。
意識が薄れていく。
こんな最後を迎えるとは考えたこともなかった。
息子をこの手にかけることも。
王太子殿下を恨めばいいのか。それとも発端となった少女を恨めばいいのか……。
私は自分の愚かさに自嘲する。
騎士は主君に忠義を尽くすもの。決して主君を裏切ってはならない。
そうだ。
私が息子に教えたことだ。
あの子は……ゲオルグは、父親の命を忠実に守ったに過ぎない。
愚かな主君を命を懸けて諌めることを教えなかったのは他ならぬ私自身だった。
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