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ある第二妃の憂い
しおりを挟む「沙羅、正妃の容態は悪くなる一方だ。そなたも覚悟しておきなさい」
夫である皇太子の無情な言葉。
私の唯一人の同母姉である香雅正妃。
姉上が病で倒れられて一ヶ月がたつ。
「春寿様!姉上は昔からお体があまり丈夫ではありませんでした。今回も少し疲れがたまってお倒れになっただけです!」
「侍医も手を尽くした結果だ。受け入れるしかない」
「……そんな」
「それと、正妃は皇宮に移る事が決まった」
「!!!皇宮に!?何故です?」
「正妃のたっての願いだ。死ぬ時は生まれ育った場所がいいと言ってな」
それほどまでに姉上の病は重いのか……。
「姉上は…知っているのですか?御自分のお体の事を…」
「ああ。本人も薄々気付いていたようだ」
「そうですか。春寿様、子供達はどうなさるのです?姉上の子供です。私が引き取ってお世話しても宜しいですか?」
せめて姉の子供達は私の手で養育していきたい。下手をすると別の妃に元にやられて不遇な扱いを受けかねない。
「無理だ。二人の子も正妃と共に皇宮行きが決定した」
「何故ですか!」
「正妃の願いだ。二人の子供達も共にというな……。沙羅が姉の子供達を案ずる気持ちも分かる。だが、二人の子供達も母親との最後の時を過ごさせてやった方がいい。白姫は兎も角、宝寿は未だ幼い。できうる限り母親との思い出はあった方がいいだろう。皇帝も承諾なさっている」
「父上が…」
「私もその方が良いと思っている。それに、沙羅には正妃に替わって後宮の管理もして欲しいのだ」
「!!」
後宮の管理は正妃の仕事。
それを私にやらせるとは……。
「沙羅、私はそなたを次の『皇太子妃(正妃)』にと望んでいる」
「春寿様!」
「なにも驚く事はあるまい。元々、沙羅皇女には跡取りの皇子を産んでもらうために後宮入りしてもらったのだ。正妃である香雅皇女亡き後は、沙羅皇女が『皇太子妃』になるのは当然のことだ」
「後宮の管理といっても……」
「そんなに身構える必要はない。今までも正妃の補佐としての役目を果たしていたのだ。もっとも、沙羅は政治的能力の方に才能があったため私の補佐の方に重きを置いていたがな」
そうなのだ。
私は昔から後宮という場所が苦手であった。
姉上の手前、そうとは言いだせなかったけれど。
「私も後宮の補佐を任されていましたのに役にたちませんでした。姉上に余計な手間を掛けさせたしまった事も多々ありますし……」
「正妃のやり方は沙羅には合わなかっただけだ。沙羅のやりたいようにすればいい」
「はい……」
春寿様が仰るほど後宮の管理は甘くない。
姉上の代わりが務まればよいのだが……。
「「「「「「皇太子妃様、今後ともよろしくお願いいたします」」」」」」
とりあえず後宮の妃達に正妃の容態やら皇太子の要望を伝えた処、何故か、挨拶をされてしまった。
実に気が早い事だ。
姉上はまだ生きているというのに!
いや、彼女達からするとこれが正しいのかもしれない。
私は姉上が常々いうように、後宮の女たちの感情に疎い処がある。
それにしても、何時の間にかこんなに増えていたのか……。私の異母妹たちも数名いる。あれは公爵家の令嬢では?
姉上の苦労を思い、溜息をぐっと押し殺した。
姉上の御苦労の半分も分からない私だが、舐められないように踏ん張らねば!
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