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暴動2
しおりを挟む「ヘスティア、どうやら近衛騎士団は暴徒共の鎮圧に失敗したようじゃ。ふぉふぉふぉ」
笑って言うセリフではありません。
「なかには暴徒共に加担した騎士までいるそうじゃぞ。騎士団長は最後まで戦って暴徒達によって殴り殺されたようじゃ」
「他の騎士達はどうしたのですか?」
「殆どが敵前逃亡じゃ。騎士団長を助けに行く者はいなかったようじゃな」
嘗て、「王国の盾」とまで謳われた近衛騎士団長。
その最後は無惨を極めたものになったようです。
「おじい様は動かれないのですか?」
「ふぉふぉふぉ。それは“まだ”じゃ」
「動くのが遅くなれば取り返しがつかない状況になりますよ?」
「それでもじゃ。今は動く時ではない」
なら、何時になったら動くのですか。
王都は無秩序と化しているというのに。
「そのような顔をするでない。腹の子に障るぞ?」
誰が、こんな顔をさせているのですか!
「今、動くのは得策ではない。儂らが爆弾を抱えるようなものじゃ」
「爆弾……?」
「そうじゃ、民衆の憎しみという爆弾をな。軍事力で打ち倒す事はできる。じゃが、その後はどうする? 王家が儂らの行動に感謝して有難いと思うか?現政権が喜ぶと思うか? そんな殊勝な奴等ではない。民衆も自分達ではなく王家や貴族の味方をした事を恨む。結果、民衆の怒りと憎しみの矛先が我らに向けられる。王家や貴族にしても同じ事じゃ。権力を取り戻しに来たと思って儂らを排除するじゃろう。一番厄介なのは、そんな王家や貴族が民衆と組んで儂らを滅ぼそうとする事じゃ」
違うと言えないのが辛いです。
祖父の言う通り、十分あり得ることです。
「急いては事を仕損じる、とも言う。焦らずじっくりと時を待つのも重要じゃ」
上機嫌で笑う祖父を見ていると何だか本当に大丈夫なように感じるのですから不思議なものです。
「それにのぉ。こんな暗い話ばかりでは腹の子にも悪い。ヘスティアは子供を無事に産む事だけを考えておれば良い。ここは安全じゃからの。ふぉふぉふぉ」
その後、検問所の人数を増やしたのは言うまでもありません。
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