【完結】魔法薬師の恋の行方

つくも茄子

文字の大きさ
2 / 52
本編

2.家族の怒り

「「はぁぁぁぁっ!?子供ができた、だと!!?」」

「浮気?相手を孕ませたの?」

「ふざけているのか!!」

「ライアン本人じゃなくて父親と浮気相手が別れを告げるってなに?」

「詫びの一つもないとは……いうに事欠いてノアを愛人にだと?誰が愛人になどするものか!馬鹿にするにも程がある!!」

「ノアに身を引けですって~~~!?ふざけるのもいい加減にしてよ!ライアンの方からアタックしてきたくせに!!しつこく言い寄ってきたのはあっちでしょう!」

 家族に今日起こった事を話すと凄まじい剣幕でライアンを罵った。特に父と姉が。
 
「ノアには苦労をかけさせない、必ず幸せにすると私達に挨拶にきたから一緒に住むことを許したと言うのに!!あれは嘘か!!!」

 あ、そんな約束をしてたんだ。今知ったよ。でも、なんだか納得。どうりで僕とライアンの同棲に反対しなかった訳だ。

「二度とあの馬鹿をうちのノアには近づけさせん!!」

 まぁ、その反動が今きてるんだろうな。父さんと姉さんは商人だから約束事や契約には人一倍厳しい。

「だいたい何故、本人が来ないんだ!!自分の父親と浮気相手を代理人として差し向けるとは男の風上にも置けん!!!」
 
 ライアンとは長い付き合いだ。
 学生時代からだから、かれこれ十年になる。僕とライアンは同じ歳の二十七歳。魔術学院を卒業して就職が決まって共に暮らし始めた。ライアンが選んで決めた家で。五年の同棲生活。まさか別れる時が来るなんて夢にも思わなかった。なにより、「愛しているのはノアだけだ」とか「僕達の愛は永遠だ」とか「ずっと繋がっていたい」とか、聞いているだけでも赤面するようなセリフを何年にもわたって囁かれたら疑う方がおかしいだろう?なのに、どうして……。
 僕の中で答えのない自問を繰り返していると、今まで静かに聞き役に徹していた母さんが突然話し始めた。
 
「これは契約違反だわ」

 ん?契約違反?どういうことだろう。
 
「母さん?」

「だって、そうでしょう?ノアとライアン君は恋人同士。お付き合いをしている段階で浮気をするなんて契約不履行も甚だしいわ。ノアの純潔を奪っただけでなく、一生をかけて守るという約束さえ守れないなんて。人として終わっているもの。いいえ、もはや人じゃない。畜生ね」

 あ、ヤバい。久しぶりに見たかも。母さんの黒い微笑み。こうなった時の母は誰にも止められないことを僕は知っている。
 
「それにライアン君の親御さんが代理とはいえ別れを告げにきたんでしょう?随分とをノアにしてくれたようだもの。をしないといけないと思うのよ。そうじゃなければ相手側に失礼というものだわ。ねぇあなた?」
 
「そうだな。ノアを傷つけておきながら、知らぬ存ぜぬで通せるわけがない。よし、とりあえずノアは家に戻ってきなさい。ライアンと暮らしていた家から明日の朝一番に荷物を運びだすよう手配しておく」

 こうして僕は強制的に我が家に連れ戻された。

 この時、僕はまだ気付いていなかった。
 家族の中で一番怒り狂っていたのが母だという事を――――


 ライアンと付き合う事になった時、反対する父を説得したのは母だった。

『ノアとライアン君は“菊花の契り”を交わした仲なのね~~。そんな二人の仲を裂こうなんて無粋な真似はしないわよね、あなた』

 と、それはもう素晴らしく良い笑顔で父を牽制した母さん。

 いつもニコニコ笑顔で、おっとりとした母さんが実は父と姉さえも上回るやり手である事を僕は知らなかった。
 地方の子爵令嬢であった母は、一身上の都合で大商人の父と結婚した。
 結婚する前に、『婚前契約書』を百枚以上作った事は未だに親世代に語り継がれる伝説である。ただし、世間一般ではコレを作成したのは父という事になっているが、実は母が全て用意した事を知る者は殆どいなかった。
 母が作成した自前の『婚前契約書』は、結婚後の夫婦の生活を始め、子供が生まれた後、生まれなかった場合の跡取りなど、想像できるありとあらゆる問題とその対処方法を取り決めたものだった。しかも、死別や離婚に関するさまざまな取り決めまで考慮されて作成された資料は両家の顧問弁護士が揃って太鼓判を押す出来であったという。

 ある意味で細かい母を怒らせたらどうなるのか。
 それを僕が知ったのは随分後になってからだった。
 





感想 40

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります