【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子

文字の大きさ
29 / 37
番外編

28.公王陛下4


私の婚姻相手は難航した。というのも、母上の過去が原因だ。
勿論、今も昔も母上に落ち度はない。
瑕疵一つない姫君に対して、ありもしない罪をでっちあげて地下牢に連行しようとした王国出身の女性との婚姻を、帝国側が反対しているのだ。
まあ、無理もない。
帝国側からしたら、皇族の血を引く母上に対して有り得ない行動をしている過去があるのだから。
王国は、母上の冤罪事件から国際的に非常に厳しい立場にいる。
帝国の『保護指定国』となっているからこそ、諸外国との交流は続いているに等しい状態だ。



「王国側からしたら、アレクサンドルに王国出身の貴族令嬢を娶って欲しいのでしょう」

午後のティータイムの時間。
母上からズバリと放たれた言葉。

「欲をいえば、王女殿下を娶って貰いたいのでしょうね」
「母上、流石にそれは無理というものです。王国側とてそれは分かっているはずですし、無茶な事は言いださないでしょう」
「ふふふ。アレクサンドルは王国人を理解していないわね。彼らはその無茶を時として平然とするのよ? 私の一件で反省しているみたいだけど、王国にとって最善であると判断すれば、そんなもの“なかったこと”にしてしまうわ。今は帝国の目があるから行動に移していないに過ぎないのよ。彼らからしたら“ヘッセン公爵家の跡取アレクサンドルりを未来の女王になる王女の夫にしたい”というのが本音でしょうね」
「王国は数年前に法律が変わり、女性でも爵位継承が可能になっていますが、王家は依然として男子優先のはずです。女王を認めるでしょうか?」
「今の王家は残念な事に王子が誕生しなかったわ。生まれるのは、皆、王女ばかり。王家の血を絶やさないためには『女王即位』も視野に入れざるを得ないわ」

母上の仰ることは正しい。
王家の男子はいずれ絶える。
まさか罪人の元王太子を担ぎ出すわけにはいかない。
このままいけば『女王誕生』は間違いないだろう。

「王国の高官たちの中には、アレクサンドルを担ぎ出したい一派がいるそうよ。どうかしら? 玉座を狙ってみる?」
「母上、私には王位など興味がありません。確かにそういった輩がいることは聞き及んでおりますが、その一方で、私を即位させたくない勢力も存在しております」

寧ろ、私を王にしたくない勢力の方が多い。
私が国王になれば、帝国の干渉が今以上になるからだ。貴族からすればこれ以上、帝国の影響力が増えるのはごめんだろう。かといって次期ヘッセン公爵の私を切り捨てる事は絶対に出来ない。

「クスクスッ。帝国の保護下から抜け出したい貴族は数多くいますからね」
「保護下といいますが、実際は属国状態です」
「だからこそ、帝国の血を受け継ぐアレクサンドルを王配に据えたい者が出てくるのです。貴男を『女王の配偶者』にすれば、帝国の皇族の血が手に入る。女王から生まれる子供は帝国の血が入っているのですから、帝国の目も緩やかになると踏んでいるのでしょう」
「長期戦ですね。その前に、子供が誕生しなければ意味がないのでは?」
「子供がいなくとも貴男が王家に居るだけで状況は違ってきます。貴男は帝国とヘッセン公爵家に対する人質。それも極上の人質になりえる存在です。帝国からの不平等条約の一部改正をさせるだけの価値はありますから」

人質ですか。
相変わらず母上は言いにくい事をハッキリと仰る。
しかし、幾ら帝国皇女の血筋とはいえ、かなり血は薄まってしまっている。私では帝国から譲歩を引き出せるとは到底思えないのだが。なにしろ、良くも悪くも帝国は実力主義だ。帝国に対してなんら貢献していない私では切り捨てられて終わりだと思うのだが?

「王家の事よりも、目下もっか警戒しなければならないのは貴族達でしょうね。
特に伯爵家以下の貴族には注意なさい。場合によっては夜会に参加するのを控えても構いません。貴男の安全が第一ですからね」

私はどこの箱入り娘ですか。
だが、母上が警戒するのも無理はない。
ここ数年の間に貴族たちの没落が相次いでいる。

その原因が、帝国の干渉によるものだ。
干渉といっても、政治の腐敗撲滅と治安維持、外交の交渉権を握っている位だ。
そもそも、帝国を介していないと諸外国と貿易も出来ない状態なのだから致し方ない。
他国を仲介して交流しているため、貿易赤字になっている分野もあるらしく、それが領地経営に直結してしまった。「自由に貿易が出来ていた頃はここまでの赤字は出さなかった」と言って憚らない。
なら、帝国は仲介を辞めるといえば、「それは困る。貿易出来なくなる」と泣きつくのだから、どうしようもない。

貴族の者達からすれば、帝国がもう少し王国を気遣ってくれれば没落する貴族がいなくなる、と思っている節がある。
図々しいにも程がある。
王国貴族が言っていることは、「帝国に、自分達に便宜を図ってくれ!」と訴えている事だ。
よくもまあ、そんなことが言えるものだ。
腹立たしい事に、王国貴族の殆どがそう思っている。

その傾向が特に強いのが下位貴族だった。
貴族の没落の中で下位貴族の凋落ぶりは目を覆いたくなるほど酷かった。

別に下位貴族の没落は帝国のせいでもなんでもないのだが、彼らはそうとは思っていないようだ。
そういった輩は、時として酷く行動的だ。
私と既成事実をつくりたい令嬢が一時期大勢いた。媚薬を盛られかけたこともある。令嬢達の狙いはヘッセン公爵家と縁をつくること。
下位貴族では仮令関係を持ったとしても『妻』には出来ない。『妾』止まりだ。
なのに「それでも構わない」という者が後を絶たなかった。
辺境伯爵家に赴くことを口実にしていたのも、それらを避けるためだった。
感想 72

あなたにおすすめの小説

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

【完結】高嶺の花がいなくなった日。

恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。 清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。 婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。 ※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。

「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜

まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。 愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。 夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。 でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。 「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」 幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。 ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。 夫が全てを失うのはこれからの話。 私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。

【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜

恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」 不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。 結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、 「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。 元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。 独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場! 無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。 記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける! ※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。  苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる  物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」