【完結】平安時代絵巻物語~皇子の挑戦~

つくも茄子

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~初恋の章~

第51話朱雀帝

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僕には三歳上の異母兄がいる。

桐壺帝と右大臣の娘である弘徽殿の女御との間に生まれた第一皇子。
生まれながらに「帝」になる事が約束された人物だ。
物語の中では負け組に分類されるであろう男性、朱雀帝。
異母弟の光源氏のせいで人生を狂わされた人ともいえる。

主に女性関係で。

最初は、葵の上。
彼女は左大臣の娘として生まれ、后がねの姫として育てられてきたと
いうのに、光源氏の正妻になった。
弘徽殿女御が、
「左大臣家の姫君には前々から東宮妃にと申し入れをしていたのに…臣下に降りた源氏の君の添い臥しになるとは」
と、とても悔しがったほどの姫君だ。

次は、朧月夜の君。
右大臣の六番目の女子で、后候補として入内予定だったのに、
入内前に光源氏に寝取られ、世間の噂になったせいで女御ではなく、
女官の尚侍として出仕。その後も光源氏と不倫を続ける始末だ。
右大臣が、「六の君の気持を考えて、源氏の君に結婚の申し出をしたというのに断った挙句に関係が切れていなかったとは」と、父親として娘を弄ばれて憤慨した。

三番目は、秋好の中宮。
先の東宮と六条の御息所の間に生まれた皇女。
光源氏が弄んで捨てた六条の御息所に罪悪感を感じて、その娘を養女にして
冷泉帝(光源氏の不義の子)の元の入内させている。ここまで聞けばいい話だけど、
実は秋好の中宮が伊勢の斎宮に赴く前に朱雀帝に挨拶に来た折に、その愛らしさに惹かれて
斎宮の任務が終わった後に求婚している。秋好の中宮もまんざらじゃなかったみたいだけど
後見人の光源氏と藤壺中宮の推薦で、一回りも幼い冷泉帝の元に入内した。早い話が、惹かれ合う男女を引き裂いた感じだ。

最後は、女三宮。
朱雀帝の最愛の娘。藤壺の中宮の妹が産んだ皇女だ。
早くに母親と死に別れ、父親に溺愛されて育った箱入り娘。
後見人が居ない事を嘆いた朱雀帝が、信頼している異母弟の光源氏に娘を託した。
若く美しく身分も血筋も最高の正妻を得たのに、肝心の光源氏は女三の宮を
大事にしない。表面上は大事に扱っているものの、その愛情は紫の上に遠く及ばない。
その上、女房の手引きで柏木に犯されて子供を身籠った事を知ると、
ネチネチと女三の宮をいびり倒す。結局、子供を産んで直ぐに女三の宮は出家した。

ここまでくると、朱雀帝の愛した女性はことごとく光源氏によって不幸にされてる。
にも拘らず、光源氏を責めたり恨んだりしない朱雀帝は人間が出来てるよ。
聖人じゃね?
器が違うよね?
清廉だわ……。
俗物の光源氏じゃぁね。
まず、同じことは出来ない。
断言できる。
だって、女三の宮を姑の如くいびり倒しているし、間男の柏木を精神的に追い詰め
られて死ぬほど虐めてじゃん。
朱雀帝をみろ!
裏切った朧月夜の君をいびる処か、優しく包み込んで、変わらない愛情を
注いだんだぞ?光源氏の事だってお母さんの弘徽殿の女御が騒がなかったら
特に何もしなかったぞ!
寧ろ、あれは弘徽殿の女御が正しい。
帝の女を寝取って、もし子供が出来てその子が帝位を継いだら乗っ取り完了だ。
十分、謀反だろ!ばかやろう!

僕が思うに、光源氏は無意識に朱雀帝にコンプレックスを抱いてたんだろうな。
美貌も、才能も、愛情も、なにもかも光源氏の方が勝っているように見えるけど
肝心の処では勝ってない。


四十歳の節目に『准太政天皇』に授与され、臣下ではなくなった。
だけど、飽く迄も「天皇に準ずる地位」でしかない。光源氏は結局『帝』になってない。

自分の血を引いた冷泉帝も子供に恵まれず、皇統は朱雀帝の手に戻っている。

父親の桐壺帝の愛情を一身に受けて、叶えられない願いなど無いと言わんばかりに
育てられているけど、桐壺帝は、光源氏の一番欲しいものは与える事は
終ぞなかった。


光源氏には数多の兄弟がいる。
それでも比較対象にされるのは異母兄の朱雀帝だろう。

彼らは表裏一体のようだ。

光と影。
表と裏。
太陽と月。

この場合、多くの者が華やかな光源氏が、光であり、表であり、太陽を想像するだろう。
けど、本当は反対なのだ。

原作の光源氏もその辺を薄々気付いてたのかも。

だから必死に足掻いたように感じる。

光になるために華やかな恋愛をした。
表になるために地位を築いた。
太陽になるために六条院を造った。

それでも朱雀帝には届かない。

俗世塗れの欲深い男が、徳の高い男にはなれないように。
泥水の中を生きる魚が、聖域に住まう魚にはなれないように。

個人的な差が明確にあった事だろう。
光源氏はそのことを感じ取って朱雀帝に苦手意識があってもおかしくない。
朱雀帝は意図せずして、光源氏のコンプレックスを刺激していたんじゃないかと
僕は考える。
だから、朱雀帝の后候補だった葵の上ともわだかまりがあったし、
朧月夜の君との縁組も断ったんじゃないかと推測してる。
まあ、僕の偏見と思い込みに近い理論だけどね。


だから、是非とも異母兄に会いたい!

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