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7.幸運の女神
しおりを挟む結婚を機に幸運が一気に舞い込んできた気がする。
それを妻に言うと「そんなことありませんよ」と否定される。
「辺境伯領が交易の中継地になり始めたのは、偏に領地の湿地帯の問題が解決したからですわ。貴方はこうなることを見越して整備に莫大な予算をつぎ込んだんじゃありませんか。私と結婚していなくても、きっと先を見越して大きな利益を手にしていましたわ」
妻の言う通り、ある程度の発展を見込んで整備した。
湿地の問題さえなくなれば他国との流通もより簡単に行える。
交易がしやすくなれば自然と人も集まる。
それでも“ある程度の発展”で止まっていただろう。
「やはり、幸運の女神と結婚できたからだな」
「あらあら」
「本当だぞ。君は間違いなく、俺と辺境伯家にとって幸運の女神だ」
妻は固まってしまったが、首まで真っ赤だ。本当に可愛いな。褒められることに慣れていないのか、反応が初々しい。
王妃陛下の妹、ということで王都との強固な繋がりを持った。
他国にも支店を持つ我が国一の大商会である侯爵家の人脈。これが一番大きい。
「辺境伯領はこれからいっそう発展致しますわ」
ですからこれは先行き投資です――と妻はニコニコと笑いながらそう言った。
なるほど。頼りになるな、俺の奥様は。
十年後、交易の一大拠点となった辺境伯領は、王都よりも発展する。
経済都市として成長した辺境伯領は、更に数年後、領地経営に破綻した伯爵領を併合する未来があることも知らずに、俺は妻を抱きしめた。
俺達のこれからを暗示するかのように春の優しい風がふわりと吹いていた。
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