【完結】政略結婚だからこそ、婚約者を大切にするのは当然でしょう?

つくも茄子

文字の大きさ
10 / 27

10.姉からの説明(ベアトリクスside)

しおりを挟む
「ベアトリクス。遠慮はいらないわ。貴女がこの婚約をどうしたいかだけ答えてちょうだい。白紙にしたい?それとも家同士の継続を望む?」

 ランドルト侯爵家邸のサロン。
 そこで私は姉から今後のことを聞かれていました。
 侯爵家の当主は父ですが、姉は王家に嫁ぎ、今は王妃陛下です。
 姉は、決定権は私にあるような言い方をしていますが、大丈夫なのでしょうか。

「婚約は解消されるのではないのですか?」
「ええ、あの双子との婚約は白紙となるわね」

 結果は出ているのでは?と、いう意味を込めて首を傾げると姉が続けた。

「いずれ公表されることだから言うけれど、例の男爵家の庶子に誑かされた男性はそれなりに……いいえ、大分いるの」

 姉は溜め息をついて、額を押さえた。

「不貞の事実も確認したわ。証拠もある。ただね、数があまりにも多いのよ。もうこれは我が家だけの問題ではないの。王家としては、貴族同士のパワーバランスを考慮して今回に限り王家主導での政略結婚を発令するわ」
「パワーバランス……そんなにですか?」
「そうよ。よくもまぁ、あれだけの数と関係を持ったものだと感心しているくらいよ。……なかには遊び感覚の者もいたでしょうけどね。でも、遊びとか本気とかの問題ではないのよ。まったく……。信じられないわ」

 姉は「嘆かわしいわ」と頭を振った。
 どうやら王家が動いたのには別の理由があったようだ。
 王家主導での政略結婚に漕ぎつけるために、敢えて情報を公開すると踏み切ったのだろう。

「どんな理由であれ、男爵家の庶子と関係を持った男性は全員例外なく、廃嫡させる。これは決定事項よ」
「なにかあるんですか?」
「それは言えないわ。王家に関わることだから」

 姉はそう言って口を閉ざした。
 これ以上は聞くな、ということなのだろう。

「それで、どうするの?」
「……公爵家との縁組を解消して、ランドルト侯爵家が不利益を被らないのであれば、白紙を望みます。……でも、そうなると私の結婚相手はどうなるのでしょうか?」
「言ったでしょう。大々的に王家が主導すると」
「はい」
「それだけの数の婚約見直しが行われるということよ。上位貴族の半数は婚約の見直しがされると思ってちょうだい。だから貴女の相手は問題ないわ。寧ろ、貴女の場合は嫁ぐことも婿入りも両方可能だもの。引く手あまたよ」
「はぁ……」

 私はあまりのことに言葉を失った。
 王家は何を考えているのでしょうか。
 それに、姉は随分と楽しそうです。

「これでもう二度と会うことは無いわ。最後に一度だけ会っておく?地下牢だけど個別にしてあるし、双子という配慮もしているから、彼らだけ二人一緒なの」

 もはや貴族牢ですらなかった。王家、容赦ないですね。
 これ以上は関わりたくありませんでしたが、最後にくらいは。
 私が頷くと、姉はにっこりと微笑んだ。



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】

青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。 婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。 そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。 それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。 ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。 *別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。 *約2万字の短編です。 *完結しています。 *11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

6年前の私へ~その6年は無駄になる~

夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。 テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

mios
恋愛
「さあ、侯爵家に関係のない方は出て行ってくださる?」 父の死後、すぐに私は後妻とその娘を追い出した。

処理中です...