【完結】政略結婚だからこそ、婚約者を大切にするのは当然でしょう?

つくも茄子

文字の大きさ
18 / 27

18.望まぬ結婚 その三(ソフィアside)

しおりを挟む
 目覚めると、ラヴィル様は傍にいませんでした。
 代わりに年配の侍女がいました。

「お目覚めですか、ソフィア様?」
「……ええ」

 喉がヒリヒリします。
 体も怠くて……起き上がるのに苦労しました。

「お疲れ様でした。湯浴みの準備が整っております。こちらに控えておりますメイド達がソフィア様の世話をさせていただきます。私は旦那様にご報告がありますので、これで失礼致します」

 年配の侍女はそれだけ言うと部屋から出て行きました。
 どういうことでしょう?
 訳が分からないまま、数人のメイド達に湯浴みをさせられました。
 怠くて思うように体が動かないので、とても助かりました。
 それからメイドに食事をさせられ……着替えも手伝ってもらい……気が付けば夕方になっていました。
 私が起きたのが昼過ぎだったので、随分眠っていたようです。
 メイド達は一言も話しませんでした。
 黙々と私のお世話をするだけ。
 まるで人形のよう……

「お部屋に案内いたします」
「お願いしますわ」

 案内された部屋は、別の場所でした。
 あの部屋に案内されるとばかり思っていましたのに。

「ご用がありましたらお呼びください」

 メイド達はそれだけ言うと部屋から出て行きました。
 一人きりになった途端。

「うっ……ううっ……」

 涙が溢れてきました。
 もう訳が分かりません。

 何故こんなことに。
 私がなにをしたと言うのです!
 なにもしていないではありませんか!

「酷い……酷すぎます……」

 初夜だというのに、愛の言葉一つなく。
 義務のように抱かれました。

「こんな結婚……あんまりです」

 涙が止まりません。
 泣きすぎて頭痛がします。
 もう訳が分からないまま、私は泣き続けました。
 翌日もメイド達は無言で私のお世話をしました。
 お食事の用意と着替えに湯浴み。
 それだけをして黙って部屋を出て行きます。

 会話すらないなんて……。

 この時の私は気付いていなかったのです。

 案内された部屋がだったことも。
 子供を最低三人は産まなければならないことも。
 
 私は何一つ知らないまま……ただ泣き続けました。








 結婚後もラヴィル様と個人的な交流はありません。
 子供を作るだけの行為以外は一切ないのです。
 私は子供を産むための存在としてのみ存在を許されているようでした。

 公爵領に来てからも同じこと。
 夫婦らしい、妻らしい扱いを受けることはありませんでした。

 ただ、義務的に抱かれる日々。
 子供だけが増えていく。
 いつしか私は男性を恐れるようになっていきました。
 近付くだけで震えが止まらなくなるのです。
 そんな私にラヴィル様は苛立ちを覚えるようになったのでしょう。
 当たりがどんどん酷くなっていきました。

 私が男性を怖がるようになった最初の原因はラヴィル様ですが、彼だけが全ての原因ではありません。
 父と兄もその対象でした。
 最初の子、長男が生まれた時に実家に帰省したのですが、その時に……

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】

青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。 婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。 そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。 それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。 ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。 *別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。 *約2万字の短編です。 *完結しています。 *11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

6年前の私へ~その6年は無駄になる~

夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。 テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

mios
恋愛
「さあ、侯爵家に関係のない方は出て行ってくださる?」 父の死後、すぐに私は後妻とその娘を追い出した。

処理中です...